バッハ 終了。素敵なコメントありがとうございます。
フェイスブックにレコーディングプロデューサー/ディレクターの国崎裕さんが、素敵なコメントを書いて下さったので此処にも記しておきます。
ヴァイオリスト蓑田真理さんの無伴奏バッハ全曲演奏会を聴きました(5/25@東京オペラシティ近江楽堂)。本当に素晴らしかった。これまで生で聴いた無伴奏バッハ全曲の中で、最も心が動かされた演奏でした。
僕は、たまたま触手が動いた「ゴルトベルク変奏曲(弦楽三重奏編曲版)」の演奏会で、初めて蓑田さんを聴いてファンになって以来、たびたび演奏会に足を運んでいる。そのゴルトベルクの時から、蓑田さんがピリオド奏法への関心をお持ちなのは見て取れた。が、ほんの数年で、こんなに大変身しちゃうとは!
今日の蓑田さん、バロック弓を使い、調弦のピッチも低く(ガット弦に違いない)、肩あて・顎あて無し、もしかしたら楽器も変わった? 外側は、まぎれもない「古楽仕様」なのだが、僕の受ける印象はそれをちょっと超えていた。
緩徐楽章に顕著なのだけれど、長い音価の処理の仕方とか、付点のリズムの扱いとか、確かに古楽仕様でありながら、しかし、その中での歌のライン(起承転結)がとっても良く見通せて、ご本人の豊かな歌心に触れることができた実感があるんです。それは、フーガ楽章や有名なシャコンヌのように複数声部であっても同様で、「ヴァイオリン一挺で難しいことをしてる」ではなく、気持ちのいいアンサンブルとして聴ける。決してゴリゴリと強奏したりしない、無理のない語り口は、こじんまりとしながら良く響く近江楽堂にはぴったり。
僕は、古楽も大好きで、仕事でもたくさん関わらせて頂いてきたのですが、実のところ、古楽原理主義(?ごめんなさい、ネガティヴな意味で使ってます)では、「・・・ねばならぬ」が音楽の喜びより優先して感じられることが時折あって、そんな場合、自分の心にはなかなか共鳴してこなかった。今日の蓑田さん、僕にとっては、「長く待ち望んでいた方法論」で、心の中で喝采しながらの至福の3時間であったのです。
コンサートの大成功を、心からお祝い申し上げます。この秋からの英国留学で本格的にピリオド奏法を究めようとされている由。ますます目が耳が離せません。 国崎裕