Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

風のささやき

2019.06.02 06:16

ネイティブアメリカンの名言@Indianteachings

■「祖先の人々に生命を与えたのは風。指先をかざして私たちは風の来た道を知る。」 【ナバホ族】

http://www.aritearu.com/Influence/Native/NativeBookPhoto/WhisperWind.htm  より

モードック族の血を引き、テレビのプロデューサーとしてナショナル・ゴールデンマイク賞などを受賞した著者がアメリカ・カナダ先住民56人にインタビューした証言集である。

強制移住や同化政策などにより苦難の道を歩かされたインディアンの多くが、自己基盤を失い、それらがもたらした病巣により彼らの社会や家庭を崩壊させている現実。

この厳しい現実に対して、自らがインディアンであるという自己基盤を取り戻した彼らの生き方と言葉は、いにしえの勇者に劣らない逞しさと誇りに満ちている。本書では、いにしえのインディアンの言葉をも紹介しているが、この時を超えた教えと祈りは今でもインディアンの魂に新たな息吹を吹きこんでいることを実感させてくれる好著である。

2000年9月23日 (K.K)

我々は生き、死に、

そして草木のように、墓の柔らかい土から新しく生まれ変わる。

石はぼろぼろに砕け、磨滅し、

信仰はカビが生えて忘れ去られたとしても、

そこにまた新しい信念が生まれる。

今たとえ、村の信仰が埃(ほこり)にまみれていたとしても、

それは再び木々のようによみがえるだろう。

オールド・ワン(ワナパム族)

本書より引用

祖母の柔らかなしわ・・・・ローリー・エルダー(チョクトー族)

本書より引用

祖母から教わったいちばん大切なことにはとても深い意味があって、それは今でも僕の中に、僕が細胞結合と呼ぶところの形で存在している。すなわち、文字どおり僕の体の一部なのだ。それはある日、学校の帰り道で起きた。10代の少年の一団が、インディアンの鬨(とき)の声を真似して、祖母をあざけりだした。「武器の斧と羽根はどこへ置いてきたんだよ?」と彼らはやじった。祖母は僕の手をしっかり握り、少し足を速めはしたけれど、それをのぞけば少年たちを気にしている様子はなかった。しかし信じがたいことが起きて、僕はすくみあがってしまった。少年のひとりが祖母の顔に唾を吐きかけたのだ。

祖母は何もしなかった。唾をぬぐおうとすらしないで、黙ってそのまま歩きつづけた。まるで、何ごともなかったかのように。僕は家についてもまだ、祖母がされたことの衝撃でぼう然としていた。すると祖母は、僕を座らせ、その出来事について話しはじめた。祖母と真正面から向き合うと、頬にさっきの唾の乾いたあとが残っているのがわかった。「この世の中には、あたしたちの生き方を知ろうとも、理解しようともしない人たちがいてね。

でも大切なのは、自分は誰であるかを知って、それを誇りに思うことなんだ。おまえは、どうしてあたしが唾をぬぐわなかったのか不思議に思ってるんだろ?それはね、唾なんてすぐに乾くってことを知ってもらいたかったからさ。そうさ、唾はいずれは乾く。でも、おまえの心は絶対に死なない。それをわかってもらいたかったんだよ」 年のせいで、祖母の顔には使いこんだ革のように、たくさんの深いしわが刻まれていた。けれど、祖母のし

わすべてに物語があり、そのしわの一本一本が、知恵の川なのだ。僕はよく、祖母の顔に手を触れてみたが、感触は見た目とはまったく違っていた。祖母のしわは、彼女の抱擁と同じくらい、柔らかくて温かかった。祖母は九四歳で死んだ。晩年はアルツハイマー病を患い、ほとんどのとき、意識は別の世界に遊んでいた。死の直前、僕は祖母のもとに駆けつけ、九ヶ月になる息子を会わせた。僕がベッドのかたわらにひざまつくと、スピリットたちが特別な贈りものを与えてくれた。五分間、祖母の意識が完全に澄みきって、正気に戻ったのだ。「おばあちゃん」僕は祖母の耳もとでささやいた。「僕だよ」 「ニタトービ、おまえかい」祖母は年老いた美しい顔を、無数の笑いじわでくしゃくしゃにした。「おばあちゃん、息子を見せに連れて来たよ」 祖母は両手を伸ばし、歯磨きのチューブを絞り出すかのように、僕の息子をぎゅっと抱きしめた。意識が澄みきっていたこの間、祖母は、命の環が僕の息子を彼女のところへ運んできたのを知っていた。僕たちはいっしょに座り、三人は、環の中でひとつになった。祖母はとても安らかに死んだ。少なくとも僕は、そう信じている。