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東洋式疑似餌釣研究所

早春の渓

2019.06.02 07:34

今年も静かにその日を迎えた。

例年であれば、久留米に程近い渓流でその時を迎えるのであるが、数年前の九州北部豪雨の影響でホームの渓は壊滅的に破壊されてしまい釣りが成立するような状況には無く、隣県の渓流からスタートする運びとなった。


解禁にふさわしいロッドは、3年前に他界された先輩釣師が1998年に作成したバンブーロッド。


本人はフライマンだったが、我々のよき理解者だった。


弔いの意味も含めて年に一度はガイドにラインを通して渓魚に曲げてもらうのだ。それとスペアにはウエダのスーパーパルサーを準備した。


梅花に霧雨漂う早春の渓はまだまだ魚の動きは鈍くて簡単にはいかないが、少しでも動きのある魚を狙い平瀬にサトウオリジナルのアンサー4㌘を撃ち込んで行く。


アップクロスのキャストからドリフトして横へ抜く釣りは何度も繰り返し反復した春のマストメソッドである。

ここぞというスポットから小さなエノハが答えてくれた。何度釣りをしても早春のそれは美しく心地よい時間を与えてくれる。


煙草に火を付けて渓の空気と共に深く吸い込み、ゆっくりと吐き出す。


魚を一つ釣り、確めた命を一つ放してやるを繰り返してゆくが、飽きる事はない。

人それぞれに道具へのこだわりは合って然るべき、どんなロッドがルアーが素晴らしいのかは、熱のあるアングラーにお任せするとして、現代の高感度、軽量の硬いカーボンロッドではきっと味わえない時間がある。


道具の性能を落としてあげることで、ミスのリカバリーは効かなくなるから、より正確なキャストからのトレースコースやリトリーブ速度のコントロール等、使う側が神経を使わないと釣にはならない。


私はそこに楽しみを感じるようになったのだろう。


この日は夕方になるにつれて、気温が下がると、魚からの反応は薄れだした。


良くも悪くも早春の渓はそういうものだと知ってはいるが、結局日没まで歩いてしまった。

夜、自宅に帰り、また次の釣りを考える。

その日の余韻に浸りながら。


雨足が強くなった夕方、大物を取り逃がした事はまだ多くを語らずにおこうと思う。