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"a thousand winds"「千の風になって」考  ②

2019.06.02 10:46

https://kibashiri.hatenablog.com/entry/20070120/1169277319

より

●素晴らしい原詩"A Thousand Winds"と作家・柳田邦男氏の美しい原詩の訳詩

 で、ネットで少し調べたら以下の歌声サークルサイトで「千の風になって」の歌詞・楽譜、英語原詩で作者不詳の「A Thousand Winds」が掲載されていました。

 midiでメロディを聞くこともできます。

歌声サークル「おけら」

http://bunbun.boo.jp/sub4_index.htm

 失礼して、日本語歌詞の一番を抜粋。

1 

私のお墓の前で 泣かないでください

そこに私はいません 眠ってなんかいません

千の風に 千の風になって

あの大きな空を 吹きわたっています

 たしかにすばらしいメロディにのせられてなかなか癒される歌詞ですね。

 さすが芥川賞作家の新井満さんの訳詩であります。

 で、英語の原詩。

A Thousand Winds

Do not stand at my grave and weep.

I am not there, I do not sleep.

I am a thousand winds that blow.

I am the diamond glints on snow.

I am the sunlight on ripened grain.

I am the gentle autumn’s rain.

When you awake in the morning hush,

I am the swift uplifting rush

Of quiet birds encircling flight.

I am the soft starshine at night.

Do not stand at my grave and cry.

I am not there; I did not die.

 いやこの原詩ですが、素晴らしいですね。

 "weep"と"sleep"、"blow"と"snow"、"grain"と"rain"、"hush"と"rush"、"flight"と"night"、"cry"と最後の"die"、英文詩らしく各センテンスが韻をきれいに踏んでいますから、かろやかに声に出して読みたくなります。

 詩の構成も素晴らしいです、文頭の"Do not stand at my grave and weep"(私の墓石の前に立って涙を流さないでください)から、"I am"、"I am"をすべて現在形で連呼していくことによって、見事に「亡くなった人」の「実在」を力強く、しかし優しく表現していきます。

 そして唯一の過去形が詩の最後に出てくる"I did not die"(私は死んではなかったのです)です。

 今「実在」している魂が"Do not stand"(私の墓石の前に立って涙を流さないでくださいな)と残された人たちに対し現在形で優しく呼びかける、そして最後に"did not die"(私はね、死んではなかったのですよ)と過去形の否定文を置くことで、故人の死を悲しむ残された人々に過去の悲しみを断ち切るように促しているのです。

 ・・・

 私は文学者ではありませんが、この原詩のよさを失わないように、日本語に訳詩された芥川賞作家の新井満さんのご苦労と努力は賞賛に値しますです。

 少し調べてみたら、作家の柳田邦男氏が知人の父親の葬儀に宛てたメッセージで、この原詩に美しい日本語で訳詩しております。

 ネットで公開されていますので失礼してご紹介。

御父上様の御冥福を、はるか東京の地にてお祈り申し上げつつ、外国の一篇の詩をお届けしたく存じます。

  2003年5月26日     作家、 柳田 邦男

1000の風   あとに残された人へ

私の墓石の前に立って

涙を流さないでください。

私はそこにいません。

眠ってなんかいません。

1000の風になって

吹き抜けています。

私はダイヤモンドのように

雪の上で輝いています。

私は陽の光になって

熟した穀物にふりそそいでいます。

秋には

やさしい雨になります。

朝の静けさのなかで

あなたが目ざめるとき

私はすばやい流れとなって

駆けあがり

鳥たちを

空でくるくる舞わせています。

夜には星になり、

私は、そっと光っています。

どうか、その墓石の前で

泣かないでください。

私はそこにいません。

私は死んでいないのです。

http://www.saturn.dti.ne.jp/~chabin/A-Thousand-Winds.html

 美しい訳詩ですね。

 ・・・