「栗原さんって着物警察の署長なのでは?」と心配な貴女へ。
こんにちは。栗原貴子です。
若い人のきものや浴衣の装いに眉をしかめるのみならず。
「あなた!それはちょっと変よ!」
と口を出して取り締まるオバサンのことを若い人たちの間では「着物警察」と呼ぶのだそう。
昔は「お直しおばさん」という名称だったけれど。
直してくれるオバサンに対しては、「親切な人!」という風に今ドキの若い人は好意的に受け止めている模様です。
私に「着物警察の署長」レベルの取り締まり感を覚えている方がいらっしゃるかもしれません。
怖いよね~。
自分で言うのも何ですが、見かけによらず優しいです(笑)
あるとき、きもの愛好家同士の集いで「見て見ぬふりはしているけれど、どうかと思うのよね~」と語りだしたら止まらない「覆面刑事」に遭遇しました。
私の親世代ぐらいの方。
かくいう私もどちらかというと、覆面刑事タイプ。
とはいえ、若いころは取り締まりにもしばしば遭遇しておりましたので
「出先でいろいろ言われても、いまさら着替えられないですし、言われた方もこまっちゃいますからね。私も若いころは、オバサマがたに街でご指導ご鞭撻のお声かけいただきました」
などとお話をしておりました。
話は成人式の振袖ネタとなり。
先輩刑事は「テレビでみたけれど花魁風とかって、もうどうなの?」と怒り心頭。
話をしているうちに、先輩がお怒りなのは「花魁=体を売る職業」という理由であることが分ってきて、私はとたんにこの先輩刑事との会話がつまらなくなってしまったのでした。
花魁は自分の意思で
好き好んで
その仕事してたと思う?
さすがの私も先輩刑事にそんな口を利くのははばかられたので、心の声で終わりましたけれど。
遊郭で働いていた人のほとんどは、親に「売られた」とか「身寄りがない」といったワケがあったというではないですか!
そんな身の上で立身出世するために、読み書きや芸事に精進して、出世して花魁になったわけです。
遊郭はある意味、社会のセーフティーネットだった、といえるでしょう。
(花魁まで上り詰めると、そうそう春をひさぐこともなかったそうで。しかも、お座敷に呼ぶのに一晩で現代の貨幣価値ならば200万円ほどかかったそうですよ。さらに言えば、お座敷にあらわれるも、花魁は座敷の上座に座ったままお客と話すらせず黙っていることも)
そんな花魁は当時、ファッションリーダー的な存在でもありました。
もちろん、厳しい境遇から這い上がった、という背景も含めての憧れだったのです。
当時は生まれた家で人生が決まっていましたから。
浮世絵は庶民が愛好した、今でいうところのグラビアでした。
江戸のファッションリーダーの装いに、現代の若い女の子が憧れるというのは、分からなくもないじゃないですか!!!
むしろ、「時空を超えて21世紀の乙女に憧れを抱かせるとは、すごいな花魁」と思います。
とはいえ、私は「花魁、素敵だよね。でも、成人式はやめようね」と思っています。
成人式に「親に売られた人たちの立身出世の象徴的な装い」はふさわしいとは思えないから。
ましてや、その振袖レンタル代を親御さんに出してもらうなんて、いかがなものか。
花魁コスプレはハロウィンの仮装などで、お楽しみいただけるといいのかな、と思います。
きもの歴も長くなり、自らがオバサンとなっていくと、心の中に「着物警察手帳」を忍ばせるようになるのだな、と私自身の経験からも思います。
でも、着ている人を責めるのは「ちょっと違う」と思うんです。
「提供している側」が存在するからです。
そう。それをビジネスとして行っている人たちがいる。
リアル警察の人たちの薬物の取り締まりの理論は
薬物の所持、使用はいけません。
製造、販売はもっといけません、です。
青少年を守るためには、薬物製造・販売の業者を摘発するじゃないですか!
この夏も、取り締まりたい!という気持ちになる浴衣姿を多々、目にすることになるでしょう。
でもね。
それを「売っていた」「貸していた」から彼ら、彼女らは着ているんです。
若者を取り締まったところで、何も変わりません。
むしろ「きものって、めんどくさい」を助長するだけ。
バイトしてためたお金で買ったり、借りたりしているのかもしれないし。
だったら、着物警察の我々のお眼鏡にかなう品を身に着けるのは難しいですもの。
そんなあたたかな眼差しで、きものや浴衣を楽しむ、若い人たちを見つめていきたいと思っております。
読んでくださって、ありがとうございました。
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