精子の数や運動率だけでは不十分、DNAの状態を確認することが重要...②
エス・セットクリニック 佐々木豊和先生のお話
2019年1月発行『i-wish ママになりたい 男性不妊の検査と治療』
生活改善+服薬で精子の状態がよくなることも
■精子の状態は変わりやすい?
精子の状態は変化しやすいものであり、まずは複数回の精子検査を行った上で判断するように心がけています。特に禁欲期間が長い場合は運動率や正常形態率が低下する傾向にあるため注意が必要です。
精索静脈瘤について
精子検査の結果が思わしくない方であれば、約3分の1の患者様に精索静脈瘤が見つかります。静脈瘤の治療には漢方薬、コエンザイムQ10等の抗酸化剤を含めた薬物療法と根治療法としての手術療法があります。程度の軽いもの、また不妊歴が長くないケースでは、まず薬物療法をお勧めしています。しかし、内服治療による効果がみられず、中等度以上の精索静脈瘤と診断したケースでは手術療法に踏み切ることをお勧めしています。
奥様の年齢が高い場合
以前は奥様が40歳以上の場合、精索静脈瘤の手術は勧めていませんでした。一般的に手術後精子の状態が改善するまでには半年程度かかるとされています。このため、多くの産婦人科の先生方のご意見と同様、その期間を不妊治療せず棒にふるのはいただけないと考えていました。
しかし、当院で採用している精索静脈瘤低位結紮術においては術後の造精機能の早期回復が期待できます。当院では手術3か月後すべての患者様に精子検査と手術後の状態を確認するエコー検査を行っています。その時点で造精機能が回復しているようなら、不妊治療の再開が可能である旨を報告しています。もちろん、その間に自然妊娠されるカップルもいらっしゃいます。ですから、ハイグレードの精索静脈瘤が見つかった患者様には積極的に手術をお勧めしています。
精索静脈瘤の手術後に妊娠を目指す
■精索静脈瘤の手術後への期待
当院での精索静脈瘤手術は局所麻酔単独での日帰り手術を行なっております。強く希望される方には静脈麻酔を追加することもあります。毎週土曜日を手術日にあてることで、週明けの月曜日からは仕事を含めた通常通りの生活を送っていただくことが可能です。また当院の特徴としましては、手術前後に高度精子検査を行なっていることが挙げられます。手術後に総精子数や運動率があまり変わらないケースもありますが、精密検査を行なうことで詳細に精子の改善具合を知ることが可能なのです。例えば、受精能力が改善したケースでは不妊治療のステップダウンも検討に値します。術後に高度精子検査を行なうことで、男性側からではありますが、今後どの不妊治療法が最適で勝算があるかをアドバイスさせて頂いております。
精子の状態が改善すれば治療のステップダウンも可能
■精子の状態がレディースクリニックでの治療を変える?
精子の状態を見て、今なら顕微授精でなく通常媒精での体外受精や人工授精でも妊娠可能と判断できれば、そのようにお伝えしてレディースクリニックへの紹介状を作成します。実際、手術を受けたことで顕微授精からステップダウンされる方もいらっしゃいます。この時に、当院で選別した精子を持ち込んだほうがよいと判断すれば、それもお伝えします。
検査から手術まで男性不妊の治療が完結
■クリニックを移転治療の院内実現化!
移転をして、以前よりかなり広いスペースを確保しました。移転の大きな目的は、ここで男性不妊の治療が完結するようにしたかったからです。以前のスペースでは検査はできても手術ができないなど治療が限定されていました。そのため、検査を受けたものの、どこで手術を受けたらいいのかと不安に思われた方もいらっしゃいました。ですが、今は当院で男性不妊の治療が完結しますので、安心して治療に臨んでいただけると考えます。
精子の数や運動率だけでは不十分、DNAの状態を確認することが重要...①
エス・セットクリニック 佐々木豊和先生のお話
2019年1月発行『i-wish ママになりたい 男性不妊の検査と治療』