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青川素丸 表参道の父

秒の理論

2019.06.03 16:26

 時刻の中でも「秒」単位に関する理論は特に複雑です。単純に1分を60等分すれば良さそうなものですが、地球の自転周期の僅かな誤差を検出したり、あるいは社会的需要として1秒をさらに分割しなければならない事態が生じたため、高い精度の秒単位の計算が必要になってきました。つまり、秒という短い時間を正確無比かつ、何かの周期に基づいた形で、単位として世界的に標準化する必要が出てきたのです。

 そこで考え出されたのが水晶時計です。この水晶時計の原理もちょっと複雑なのですが、簡単に述べると、水晶に交流電流をかけることによって生じる、一定周期の規則的な振動を利用した時計と言えます。この振動数は「水晶振動子(しんどうし)」という水晶の塊を2枚の電極ではさんだ水晶振動体を用いると、通常で32,768Hz(215Hz)の振動を生じるのです(小型時計の場合)(Hzは振動数・周波数の単位で、1Hzは「1秒に1回の振動数・周波数」があることを意味します)。ですから32,768Hzというと、1秒間に32,768回振動する計算になります。裏を返せば、この水晶振動子が215Hz振動する毎に1秒という信号をカウントできれば、水晶振動子の継続的な振動によって、正確な秒を刻み続けることができるという訳です。その周波数の精度は10-6オーダーとも言われ、非常に正確であることから、時計として十分利用価値があったのです。しかし、理論的にはそうでも現実には水晶の温度や特性等によって発信周波数が影響されてしまいます。これは即ち、振動数にバラツキが生じる原因となる訳です。

 それを補正するため次に誕生したのが原子時計です。原子時計の原理はさらに複雑です。簡単に言うと、原子や分子は電磁波を吸収・放射する性質を持っています。この原子・分子が吸収・放射する周波数が、実は個々に異なる性質を利用し、水晶時計に補正を加えれば、より正確な「秒」単位を作り出せると考えたものです。

 そこで、注目されたのが「セシウム133原子」だったのです。「セシウム133原子」のエネルギー状態が磁界により変化する時に出る電磁波(マイクロ波)の周波数約91億9263万1770Hz(振動)を1秒としてカウントすることができれば、正確な1秒を測定できるとしたのです。現在、このセシウムを利用した原子時計は世界各地におよそ300台が稼働しており、それらのデータを集積しているフランスの国際度量衡局が秒単位の原子時(げんしじ)という時間を決しているのです。勿論、水晶時計と同様、温度変化や地球の地磁気などに影響されてしまうようですが、その誤差は数十万年に1秒程度に過ぎないと言います。

 こうして科学技術の発達と共に正確無比な「秒」単位を作り出すことができたばかりか、これまで地球の自転や公転など自然周期から導かれていた1秒が、標準化された時間単位を作り出すセシウム133を利用した原子時計に取って替わることになったのです。

(※原理的には、セシウム133原子以外にもアンモニアやルビジウム、水素などの原子を利用して秒単位を作ることは可能とされています。)


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