木ノ芽峠
福井県の地域区分は最大で2つに分けられます。
それが「嶺南」と「嶺北」。
嶺南は旧国名の「若狭」、嶺北は「越前」とほぼ合致します。
ただここであえて「ほぼ」というニュアンスを使ったのは、僕にとって重大な違いがあるから。
それは
敦賀市は「嶺南」であり、「越前」だということ。
敦賀、美浜の境である「関峠」でした。
しかし嶺北と嶺南の境は、また別の峠に由来するのです。
それこそが今回紹介する
木ノ芽峠(きのめとうげ)
敦賀市と南越前町の境に位置する、深坂越と並んで古来からその名が伝えられる歴史ある峠です。
その現状を探ります!
木ノ芽峠は現在、国道476号木ノ芽峠トンネルとして、その名を残しています。
しかし本来の木ノ芽峠も決して廃道と化したわけではなく、その姿を残しているのです。
写真は国道476号から別れたところを振り返って撮った一枚。
「新保」のバス停が目印です。
この道は中部北陸自然歩道の一部となっているらしく、立派な看板がありました。
前から気になってたんだけど、これ歩いて全国回ってる人っているのかな?
是非お話を聞いてみたい。
お知り合いでそんな方がいたらご紹介いただきたい(笑。
道は新保の集落をかなりの急勾配で抜けていきます。
言われてみれば確かに、古い街道の線形です。
集落の中心道路=街道という図式はあながち間違いではないのです。
武田耕雲斉の本陣跡を抜けると、いよいよ山道に突入。
小さな木の看板が控えめに道案内をしてくれます。
道ははっきり言って悪いです。
何も知らずに歴史探訪でこの道を通ったら、若干ちびる程度の荒れた舗装路が続きます。
しかしまだまだこんなのは序の口にすぎないのです。
ここからこの道は市道から林道へシフトチェンジします。
名は真谷林道、ここから先は「黒河林道編」でも触れた専用林道です。
完全自己責任の世界となりますので、通行されて事故にあわれても当方は一切責任を負えません。
林道は国道476号木ノ芽峠トンネルの脇をすり抜けて、勾配をあげていきます。
写真を見ると激藪の中を走っているように見えますが、
道幅が狭いだけでちゃんと舗装路を走っていますよw
うん。
きてるね。
この林道、間違いなくかなりやばい!!
うおおおおい!!
土砂崩れ放置ですか!?
この生々しい感じは結構以前からこのまんまってこと?
こりゃ通行不能かと思いきや、脇にちゃんと轍が残ってるあたりが嫌らしい。
以前通った奴がいるなら、
通らねばなるまい!!
今度は道の真ん中に
木が生えていらっしゃる
しかし崩れて根を伸ばせるところ少ないだろうに妙に生き生きしてるな。
ここでも轍残ってるし・・・。
しかし・・・、
この幅だよ???
さすが林道クオリティ、無茶言ってくれるぜ。
ちなみに左の路肩を僅かにでも読み誤れば、
よくて脱輪、悪ければ転落ですね。
写真は豪雪によって折りたたまれたカーブミラー。
こんな見事に畳めるんですねぇ。
この辺の雪深さがうかがえます。
久しぶりに四輪車走行難度でこの道を表すなら、
狭さ 2 (1.4車線・離合個所無し)
落石 3 (車から降りてどけなければならない落石、枝あり)
勾配 1 (普通)
路面状況 1 (ガレ・苔等なし・コンクリート舗装あり)
設置物有無 1 (ガードレールあり・カーブミラー破損あり)
特殊評価 3 (法面崩落・および道の真ん中に木は衝撃的)
合計 レベル11 (最低0 最高20)
これは相当なレベルと思ってください。
最高レベルの道なんて「通過不能」な道なんですから。
レベルが2ケタを超えると、通過する車を選びます。
僕のてぃーだくんがギリギリ通過できるレベルと思ってください。
しばらく行くと広域基幹林道栃ノ木山中線にぶつかり真谷林道は終了です。
栃ノ木山中林道はかなりの高規格林道なので快適に峠近くまで行くことが出来ます。
ちなみに木ノ芽峠に至るだけなら、真谷林道を通らずとも辿りつけます。
上記の栃ノ木山中林道、もしくは今庄365スキー場からの道がおススメです。
しばらく走ると手書きで峠茶屋と書かれたプレハブ小屋に至りました。
ここには・・・、
こんなわかりやすい地図が。
あ、黒線と赤線はこちらで書き足していますよ。
黒線が、今四苦八苦して通ってきた「真谷林道」
そしてここから峠までは徒歩であることがわかります。
そしてここでもう一つ重要な情報が、この木ノ芽峠、実は「栃ノ木峠編」でも紹介した、
連続峠(高原型峠)であるということ。
そのもう一つの峠の名は
笠取峠(かさとりとうげ)
そして今頃気付く間違い。
これ、赤線が正解だろうなぁ。
黒線ルートでいっちゃったよ。
大分時間経ったけど、もう一回ここだけでも行かないとなぁ。
登山口には木の杭にラミネートされたチラシ(?)が貼ってありました。
祭りがあるようですが、ここはさすがにアクセスが大変でしょうに。
ちなみにこの辺りから南越前町側の麓にかけては「日本の秘境100選」に選ばれています。
それも納得の山深さ、隣町とは思えません(真谷林道ですでに南越前町に入っています)。
階段を登りきると分岐がありました。
右は笠取峠方面。
左は木ノ芽峠方面です。
まずは右の笠取峠を攻略!
うお!道どこだ!?
予想以上に草の浸食が激しく、道筋がかなり失われていました。
しかし緑の落とし穴(草が覆い隠した路肩)のおかげで、なんとく道筋に復帰。
夏場はえらいことになるんじゃないか?これ?
刈払いするのかな?
ここは冬はスキー場の一部になっているため、リフトの索道支柱が幅を利かしていました。
このなんかがっかりする光景を抜けると・・・、
笠取峠、着。
ゲレンデの片隅に、その名も告げずに佇む峠でした。
ただその名の由来、笠を吹き飛ばすほどの強風は今も健在。
そしてこの峠、実は一つテンションの上がる遺構を残してくれていました。
そ れ は !
石畳!!!
一体いつの時代の石畳だろう?
北国街道が春日野道に主役を譲った明治以前であることは確実と思われます。
ゲレンデの端に石畳を敷く理由がないし、何より石の風化具合が素晴らしい!
これだけでもここに来た甲斐がありました・・・。
さて名残惜しいですが、ここで踵を返し、木ノ芽峠に向かいます。
奥の建物は、先ほどの案内板にも描かれていた言奈地蔵。
茅葺の立派な小屋の中に鎮座する言奈地蔵。
このお地蔵さまのお話は大変面白いのですが、長くなるので割愛させていただきます。
もちろんここでも一礼、先へ急ぎます。
笠取峠側よりはるかに整備された道を進みます。
勾配はほとんどなくトラバースルートと言った感じです。
遺構はほとんどありませんでしたが、沢の部分に架かる暗渠は時代を感じるものでした。
当時のものでしょうか?
しばらく行くと、石畳が見えてきました。
これも当時のものでしょうか?
もしかしたら歴史を鑑みて、戦後に敷かれたものかもしれませんね。
しかしさっきから犬の鳴き声がしてるんだよなぁ・・・。
そして木ノ芽峠着
最初の話に戻りますが、福井県の地域区分「嶺南」「嶺北」はこの木ノ芽峠に由来すると言われています。
木ノ芽峠は奈良時代には「木嶺」(もくれい)と呼ばれていました。
木嶺以北を「嶺北」、木嶺以南を「嶺南」と呼んでいたのが現代に残ったのです。
そして福井県の文化圏は事実、この峠を境に大きく変わります。
方言も味付けも、県民性も変わるとも言われています。
もともと取って付けたような県ですからね(福井県の歴史をお調べください)
しかし犬の声が大きくなってきたような・・・。
さぁ峠の先の景色を見て帰ろう!
とそのとき・・・、
ワンワンワンワンワンワン!!!!!
いやぁあああああああ!!!!
はぁはぁはぁはぁはぁ・・・。
どうも峠のお宅のご主人が、犬を放し飼いにされている様子。
この2匹が僕の姿を確認するや否や猛ダッシュ!!
必死に坂を下って逃げました。(四足歩行の動物は下り坂が苦手)
僕は犬に小学校の頃に追いかけられて以来、犬恐怖症になっています。
非常に良い峠です。
おススメですが、ただひとつ。
犬が苦手な方は行かない方が無難です!
僕はたぶん2度と行きません!
以上!木ノ芽峠編