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【Talk】『フルマラソンによりそう音楽』実体験──忘れかけていた“音楽を共有する感覚”を取り戻す

2016.03.18 05:37

『フルマラソンによりそう音楽』制作メンバーの三原勇希とともに、彼女とプライベートでも親交がある同世代の面々が“チーム走るひと”として『2016 おきなわマラソン』に集結。実際にプレイリストを聴きながらフルマラソンに挑んだ深谷江里子・山内悠希衣が無事完走を果たすと、それを迎え入れた10kmレース参加組のもとで感想を語り合った。

“音楽を共有する”──私たちが忘れかけていたその感覚を取り戻した彼女たちの、目に映ったものとは。


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<参加メンバー>

深谷江里子(写真左)

IT企業勤務。今回のおきなわマラソンでは、『フルマラソンによりそう音楽』の総再生時間に合わせたタイムで完走してくれた。


山内悠希衣(写真右)

アパレル勤務。これまで数々の大会でサブ4を達成しており、今大会も3時間45分で見事完走。


<聞き手>

三原勇希

タレント・モデル。スペースシャワーTV『SPACE SHOWER COUNTDOWN』『桜井食堂』、MBS『オレたちゴチャ・まぜっ!』に出演中。『フルマラソンによりそう音楽』制作メンバー。

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上田唯人

雑誌『走るひと』編集長。今回、深谷・山内とともにフルマラソンを完走した。


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フルマラソンは“一本の映画”


三原勇希(以下、勇希) 今回、フルマラソンでこのプレイリストを聴きながら走ってくれたのが、ゆっきー(山内悠希衣)と、えりちょす(深谷江里子)。どうでした? えりちょすは上田さんと一緒に、プレイリストの時間に合わせて5時間ちょっとのタイムで完走してくれたんですよね。

深谷江里子(以下、江里子) そうなの。フルマラソンには、ちゃんと歌詞を聴きながら走りたいタイミングと、BGMっぽく流して応援してくれるひとの声に耳を傾けたくなるタイミングがあるけど……このプレイリストは、その配分がすごくいい感じだったなって。

勇希 本当ですか? うれしい! プレイリストを作るときには、まさにえりちょすが言ってくれたように、流れやバランスをすごく考えました。とにかく気分を上げてくれる曲もあれば、肩の力を抜いて楽に走らせてくれる曲もあるし、踊るように走ってもらえるダンスミュージックも入っていたり……。ゆっきーはどうだった? 今までに音楽聴きながら大会で走ったこととかあった?

山内悠希衣(以下、悠希衣) ううん、今回が初めて。沿道から応援してくれるひとの声を聴きたいタイプなのかも。大会で音楽を聴いたのは初めてだったし、自分の知らない曲もあったんだけど、なんだか自然と馴染んだというか……最初の入りからすごく良くて。

勇希 ジェームズ・ボンド(プレイリスト一曲目『007 ジェームズ・ボンドのテーマ』)だ〜!

悠希衣 そうそう! よかったよね?

江里子 うん。最初流れてきたとき笑っちゃった(笑)。

勇希 (笑)。スタート前って緊張するから、最初にちょっとクスッて笑ってもらえたらいいなって思ったの。リラックスしてほしいなって。

江里子 『スター・ウォーズ』もめっちゃよかった(笑)。

悠希衣 よかった〜!

勇希 1区には、今挙げてくれた二曲みたいに映画のオープニングのように盛り上げてくれる曲もあれば、序盤から飛ばしすぎないように気持ちを落ち着かせてくれる曲だったり、言葉で応援してくれる曲もあるの!




江里子 プレイリストの真ん中あたりで流れてきた『ええねん』は、すごく久しぶりに聴いて改めて「これめちゃくちゃいい!」って思えたよ。

勇希 10km組で『ええねん』が入っている2区を聴いてくれた真実ちゃんも、めちゃくちゃよかったって言ってたもんね! 破壊力すごいな〜。2区のテーマは“フルマラソンを楽しむ”ための曲。最初に都ちゃん(モデル/女優の高山都。『フルマラソンによりそう音楽』制作メンバー)の選んだ日本語ロックがきて、そのあと、金井さん(ロックバンド『BIGMAMA』Vo./Gt.の金井政人)と私がそれぞれ選んだ8曲が続くの。次に鹿野さん(音楽ジャーナリストの鹿野淳)セレクトの曲に入るんだけど、中盤には淡々と走りたいときもあるっていう鹿野さんの提案で、ダンスミュージックとかテクノみたいな、歌詞がなくて一定のリズムを刻む曲が多くなってるんだよ。

悠希衣 私、すっごく長い下り坂のところでそのあたりの曲が流れてきて、リズミカルに下りられてよかったよ。それまでは上り坂が続いててちょっとペースが落ちてたんだけど、また自然と足が進むようになった。きっと、音楽があったおかげで自然と気持ちを切り替えられたんだと思う。

江里子 長い下り坂あったね〜。でも、4時間切るタイムで完走したゆっきーは、プレイリストの2区が終わる頃にもうあの坂を走ってたんだね、速い!(笑)




上田 そのあと30km超えて徐々にゴールまで刻んでいく感じになると、プレイリストも3区に入って、言葉でどんどん励ましてくれる邦楽がくるんだよね。

江里子 サンボマスターの『できっこないを やらなくちゃ』の歌詞にも励まされたよ。

勇希 3区は、一番つらい30〜35km地点をイメージしてるから、わかりやすい言葉で応援してほしいなって思って、ストレートな言葉で励ましてくれる熱めの邦楽が多くなってるの。

江里子 30km過ぎたあたりからは体もどんどん痛くなってきてやっぱりつらかったんだけど、音楽があったおかげで心はつらくならなかった。音楽で笑顔になるの。それで、笑うとポジティブな気持ちになれるから、そこからまた頑張れる。

悠希衣 うんうん、わかる。私、つらいのに歌っちゃったりもしてたよ。

江里子 私も! ゆっきーはどのあたりからつらくなった?

悠希衣 今までは25kmからは必ずつらくなってたんだけど、今日は音楽効果もあって35kmくらいまでは全然いけました。

勇希 アップダウンがあるハードなコースなのにすごい! 



上田 つらくなってからは、3区と4区の曲の言葉たちに力を借りつつ乗り越えていく感じだったよね。そうやって、乗り越えた先のラストにくるのが『ドント・ルック・バック・イン・アンガー』。

江里子 もうすごかった……。

上田 これはイギリスのロックバンド「オアシス」のサッカー好きとしても有名なメンバーが作った曲で、競技場を彷彿とさせる雰囲気を持ってるんだよね。

江里子 おきなわマラソンのゴールは競技場だったから、本当にマッチしてました。映画の主人公になったみたいというか、むしろ主人公だと思った。マラソンを走ると、たくさんのひとに応援してもらえるでしょ? これって、普通に生活してたら味わえない感覚で、私がマラソンを好きな理由でもあるの。その感覚が音楽の力で増幅されて、言葉では言い表せないくらいの主役感があるんです。





共感できるプレイリストから生まれる新たなつながり


勇希 他のひとが選んだ曲を聴いてみて、どうだった? 

悠希衣 自分が聴かない曲でフルを走るっていうことに対して、最初はどうなのかなってちょっと不安に思ってたんですけど、想像してたような違和感とかは全然なかったよ。

勇希 よかった〜。

江里子 私は今回「あのひともこういう曲が好きなんだ」みたいな発見とか驚きとかがあって、楽しかったです。昔、自分の好きな曲とかおすすめの曲を集めたCDを作ったりしましたよね? それを友達と聴いて語り合ったり……その感覚を思い出した感じがする。

上田 カセットテープとかCDとかMDとか、みんな作ってたよね。ここ何年かはネットでなんでもできるようになったことによって忘れかけていたけど、またこういうアプリができたことで、もっと簡単に音楽やプレイリストを共有できるようになった。でも、それがあんまり仲良くないひととか、共感できないひとのものだったら興味がわかないでしょ。そこで目をつけたのが“走っているひと同士は自然と仲良くなれる”っていうことだったんだよね。

勇希 ライフスタイルが全然違っても、ランっていう共通点があると共感できることって結構ありますよね。

上田 そう。そういう部分に、音楽が合わさったら面白いんじゃないかなって。



江里子 実際に、今度は私が勇希ちゃんに「これが私の好きな曲だよ」って言いたい! 勇希ちゃんが選んだ曲、私が好きなのばっかりだったの。今まで二人で話すときってランの話がメインだったけど、これからは音楽の話もできるなって思って、すごくうれしかった。

勇希 本当に? 私もうれしい! そう言ってもらえてよかった。このプレイリストを作るときに一番大変だったことがあってね、それは「みんなのために作る」っていうことで……みんな好きな曲なんてわからないし、受け入れてもらえるかちょっと心配だったの。

江里子 特定の相手がいるわけじゃないから難しいよね。

勇希 そうなの。だから今日みんなが走り終わってすぐ「プレイリスト楽しかった!」みたいに言ってくれて、本当によかった。あと、ほかにもうれしかったのが、このプレイリストを聴いていると周りから祝福されているような気持ちになったり、応援してもらってるような気持ちになったって話してくれたでしょ? そういう、「ひとりじゃない」って思えるってことがこのプレイリストのテーマでもあったんだよ。

悠希衣 私もその気持ちをもっと味わってみたいから、タイム別のプレイリストもほしいな!

勇希 そうだね、4時間とか3時間半とか、タイム別のも作りたい! あとは10km用のも作って、大会以外でもみんなで一緒に聴きながら走ってみたいね!



Photo: Ishino Chihiro/Text: Sasanuma Kyoka



チーム走るひと

今回の参加メンバーをはじめ、走ることを習慣とする人々のつながりによって生まれたコミュニティ。あらゆるイベントや大会を、賑やかに走り抜ける。