小暮香帆、藤田陽介「フロー」BUoY
ダンサー、小暮香帆氏と、音楽家、藤田陽介氏との共作による新作公演。公演時間は約1時間。これまで耳にしたことがない種類の音楽と、強度と存在感が増した小暮氏のダンスが鮮烈な印象を残す。
まず藤田氏が登場し、公演が行われるスペースの手前中央に置いてある水槽をたたいたりして音を出す。水が奏でている音楽のように聞こえる。
藤田氏が中央のスペースから去ると、薄いベージュの柔らかそうなワンピースを着た小暮氏が静かに登場し、初めはゆっくりと動く。音楽は水がポチャンというような音もあって、偶然に出る音もあるのか、全てコントロールしているのか判断がつかなかったが、おそらく全て音楽家の操作によって奏でられているのだろう(?)。そう思った理由は、音楽と小暮氏の動きが絶妙に呼応しているように見え聞こえたから。
小暮氏には、清楚で健全なセクシーさ(色気)と狂気という、相反しそうなものが同居している。私が写真家だったら、絶対に彼女が踊っている姿を撮りたいと思うだろう。
体の中の水が暴れているように、水を通して感電したように、小暮氏の体が痙攣し、何かに引っ張られたように激しく動く。体が疲れていても制御できずに勝手に体が動き回り走り回り、壁に引き寄せられ、同じ動きを繰り返す。床も壁もコンクリートなので、ぶつかりはしないかとひやひやする。床を執拗に転げ回る姿は、体を傷み付けているようで怖いけれど美しい。
会場のBUoYはもともと地下の銭湯だった場所で、太い柱が幾つかある。死角がない席は少なく、ダンサーが移動すれば姿が見えなくなる。そのときは壁に映る影を眺めた。浴槽や蛇口が残る会場は、水の音楽で踊る作品にふさわしい。湿った水の匂いがずっとしていた。
照明もかっこよくて、終盤、激しい曲で激しく踊る場面ではフラッシュのような強い効果の照明で、迫力があった。
後方に置いてあった、少し水の張ってある大きめの水槽に小暮氏が身を潜め、ここから出てきて終演だろうか、でもそれだとちょっと……と思っていたら、藤田氏がギター(?)を持って登場。水槽の横に座り、演奏しながら歌い始めた。小暮氏は水槽の中で微動だにしない。しかし、その歌が子守歌で、すやすやと休息した後に目が覚めたように、小暮氏が徐々に手と足を動かし、ついに水槽から出た。ゆっくりと、自分の体を確かめるように動く。今度は体の中の水がうまく収まっていて、自分の体と上手に付き合っていけるという予感を感じさせた。水の中から生まれ変わって出てきたみたいだった。
繊細だけど力強い。小暮香帆氏のダンスは見るたびにもっと好きになる。これまでの踊りの蓄積を増やしていきながら、毎回、真っさらに生まれ直しているみたいだ。
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振付・出演:小暮香帆
音楽・出演:藤田陽介
照明:久津美太地
宣伝写真:田川友彦
宣伝映像:FILM SESSIONS
2019年6月7日(金)20:00開演/6月8日(土)19:00開演
予約:3,000円/当日:3,500円
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