【紹介:強烈な中毒性を持つ店】大阪・京橋 喫茶洋酒の店 NONSY!(ノンシー) 23/10
大阪のJR/京阪 京橋駅から徒歩5分、知る人ぞ知るお店※ 喫茶洋酒の店 NONSY!(ノンシー)さん。
※全国的に超有名店であってもおかしくないと思うのですが。。。なかなか世の中、難しいものですね。
マスターは無類のトラキチ。
X(旧Twitter)のご投稿の半分が、阪神関連の熱い記事※。
下の写真にあるのは、カウンターにおいてある前回優勝時の記念グッズ。
※modern jazz NONSY on Twitter
残り半分はジャズ関連。このクセになる味わいに魅かれ、フォローされておられる方もいらっしゃるのでは?
ということで、
ARE、本当におめでとうございました!
NONSY!さんは、ジャズ・スポットの王道ど真ん中を歩み続けているお店であり、強烈な中毒性を持つマスターのお店。
このお店を絶対に訪問すべき人。
それは、「ジャズとは?オーディオとは?」と探求している若い感性をお持ちの方。
ここで書いた「若い感性」とは「どんなお話もフラットに聞いて判断出来る柔らかい感性」という意味ですが、そんな方は、是非一度、ご訪問くださいませ。
尚、個人的には4月以降、このお店で過ごす濃密な時間(注9)が急増。
700km以上あった九州に比べ、岐阜・中津川は約1/3と近くなったことも含めて、全ては縁。
ジャズの店って、ここぞという所を決めて、通うもんとちゃうんか?※
このマスターのお言葉どおり、通えば通うほど、よりディープに面白さが増していくお店と巡り合い、通える状況になったならば、出来得る限り通うのが流れというもの。
そして、これを続けていくとどうなるのか。。。焦らない焦らない。行けばわかるさ、です。
※特定のジャズ・スポットに通う充実感と、広くジャズ・スポットを巡るワクワク・ドキドキ感。
それぞれに違った魅力がありますが、そのどちらも存分に味わうことが出来た九州。
あの幸せは格別だったのだと改めて想う今日この頃でもあります。
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【以下、2019/06の記事を転載、2023/10一部改訂・(注9)を追記、(注9)はその後も適宜追記】
大阪・京橋にある喫茶洋酒の店 NONSY!(ノンシー)さん。
奥に長細い店内に入ると、お客さんが誰もおらず、目の前のカウンター席でおられたマスターと真正面からご挨拶。。。物腰は柔らかいものの、何とも表現しがたいオーラのあるマスターに警戒警報発令!
いつ頃からジャズをお聴きになられておられるのですか?
ついついマスターに聞いてしまうこの質問が「一番説明しにくい」と苦笑いされるマスター。曰く、物心ついた頃からジャズが好きだったから(注1)。
これは後日聞いた話ですが、こんなことをさらっと口にし、客とのハードなやり取りの伝説(注2)も数多くお持ちのこのマスター。私のキケン察知能力も捨てたものではありません。笑
奥にあるオーディオを確認する余裕もなく、マスターに勧められるまま手前にあるカウンター席に着席。珈琲を注文した後もあまり店内を見回すこともせず、鳴っているシダー・ウォルトンのCEDAR!をずっと聴いていたのですが、これまで聴いたことのない音に疑問符だらけ。
何だろう?この粒立って見えるようなベースとピアノの音。何でこんなにクリアによく聴こえるんだろう?でもこうやって聴こえると、すごく気持ちいい!この音を鳴らしているシステムは何?!
最初は大人しくしていたものの、段々我慢出来なくなり、遂に、お店の左奥を覗き見。
え?パラゴン!?
次の瞬間、我を忘れ、思わず叫んでいる自分がいました。
マスターに「なんや、お前?」みたいな顔をされてしまい、しまった!と思ったものの、それより何故パラゴンが縦に置かれているんだろう?何故パラゴンの前のベスト・ポジションと思われるテーブル席が座れないように封鎖されているんだろう?と、鳴っている音だけでなく、セッティングにまで拡大する疑問符。
このJBLの銘スピーカー 初期型パラゴン(注3)を中心としたオーディオ・システムは、マスターが100%ジャズのインストゥルメンタル曲を聴くためだけにセッティングし、チューニングされたもの(注4)。
最初の大失態が逆に良かったのか、背伸びすることなく素直に自分のレベルをさらけ出したのが良かったのか、ジャズとオーディオにおいて基本的に押さえるべきことから、PCオーディオのススメ(注5)や美味しい珈琲の秘密(注6)に至るまで、私のレベルでもわかるように懇切丁寧に色々なことを教えていただきました。また、私も楽しくて時間の許す限り滞在したのですが、あちらこちらに話が逸れ過ぎて(注7)、一番お聞きしたかったジャズの話にまでは到達せず、残念ながら時間切れ。
しかし、このお店が近くになくて残念、で終わらないのが、またスゴいところ。
このマスターはブログやTwitter(※1)等で、そのお考えやジャズのオススメ盤等をご披露(注8)されておられますので、まずはそこで学びたいと思います。
(※1)マスターのブログのアドレスはこちら、Twitterはこちらです。
最後に、ほとんど何の先入観もなく、このお店のことを教えていただいた神戸のらうさん(※)に心から感謝いたします。
(※)こちらはご存知、関西ジャズ愛好家ご用達のフリー・ジャズ情報誌「WAY OUT WEST」ですが、らうさんがこのお店についてご執筆されておられるのがこの2019年2月号。
併せて、その記事もどうぞ!
(注1)マスターがまだ幼かった頃、TVのゴールデンタイムで流れていたアメリカのドラマ「鬼警部アイアンサイド」が何故か大好きだったとのこと。
中学生になってそのワクワクしていた原因がそのオープニング・テーマで、それ以降もジャズ的なものに魅かれてきたご自身の嗜好に気づかれたのだそうですが、それ以降の話もお知りになりたい方はこちらへどうぞ。
(注2) 途中でいらっしゃった常連さんから教えていただいたのですが、ご開業された当初は、毎日お客さんが追い出されてたとか。
ただ、現在このお店は「ジャズ喫茶」の看板は下ろされ、「喫茶 洋酒のお店」として営業しておられますので、相当な知ったかぶりをしない限り、そのようなことはないと思います。多分。笑
(注3)この初期型パラゴンをマスターが見初められたのは、ジャズ喫茶を始めるに当たってのオーディオ探しでアメリカン・サウンドさんに行かれた時のこと。この初期型(16Ω)がたまたま置いてあったのだそうですが、その音を聴かれて天地がひっくり返る程、感動。横に置いてあった半額以下で買える中期型(8Ω)とは全く別物だったそうで、購入決定。初期型はパラゴンの中でも大変希少なものだけに、縁があったとしか言い様がありません。
尚、ご開業時の縁と言えば、(注6)で後述する珈琲豆を探しておられた時にも同じようなお話有。このお店の珈琲豆は、関西人にはお馴染みUCC上島珈琲の会長も一目置かれる方のお店から卸しておられますが、そこにお願いするようになったのは、やはり縁。
というのも、単に「このお店の珈琲が好きで通っていたから」というだけで、そんな血統書付き(笑)のお店とは知らず、取り引きのお願いに行ったマスター。逆に、お店の方から紹介者がいない事実に驚かれたという逸話付き。まぁ、これはマスターの優れた味覚・感性を証明しているお話でもあると思いますが。
(注4)マスターのご主張は、以下の3つの言葉に集約出来るような気がします。
1. ジャズをオーディオで鳴らす時に大切なことは、全ての音がしっかり聴こえること(ベースが聴こえないとコード進行等が理解出来ない)とそのバランスを取ること。
2. 一つのオーディオで全ての種類の音楽を100%鳴らすのは無理なので、もしそうしたければ割り切りが必要。
3. オーディオ再生の最重要項目は録音(もっと重要なのは記録された演奏の内容だけど)。
マスターがこのお店で鳴らしたいのは、先にも書いたとおり、ジャズのインストゥルメンタル曲(※2)ですが、そのためだけに、それが出来るオーディオ機器を選択。。。先にご紹介した初期型パラゴン、プリ・アンプMacIntosh C-20(※3)、パワーアンプJBL SE400S(一関・ベイシーさんと同じもの。。。こう指摘したら、マスターが露骨に嫌な顔をされます。笑)といった往年の銘機が勢揃いしたのは、結果論。
全ての音がすっきり浮かび上がって聴こえるだけでなく、相当な大音量にも関わらず会話をしても聞き取れる程、瞬発力のある音響は、そのチューニング、部屋の残響をデッドに仕上げたこと(※4)等にその秘訣があるそうですが、全ての調整がマスターの「音の記憶力(※5)」によって為されておられるのもスゴいところ。
このお店に限りませんが、ジャズ・マニアとオーディオ・マニアが高いレベルでバランスしているマスターのお話は、どれだけ長い時間お聞きしていても興味が尽きません。
(※2)シンバルやブラシの音を強調したシステムでヴォーカルを聴くと、周波数が被るので、サ行や破裂音がキツく聴こえてしまう等、ヴォーカルとインストゥルメンタルの両立は難しいとのこと。
ちなみに瞬発力のお化けみたいなこのシステムで聴くオーケストラは、マスターご自身も苦笑いされておられましたが、タンノイ・ユーザーである私にとってはかなり厳しかったです。まぁ、パット・メセニーによるスティーブ・ライヒのエレクトリック・カウンター・ポイントはさすがでしたが。
(※3)1960年代に使われていたこのプリ・アンプには、これまで私の見たこともなかったツマミ有。お聞きしたところ、レコード会社は1950年代半ばに出来たRIAAという統一規格を使うまで、それぞれのイコライザーカーブでレコードを制作していたため、レコード毎にこのRECORD COMPENSATORというツマミで低域や高域を補正してあげないと制作者の意図した音にはならないのだとか。何ともレコード再生の奥の深いこと!勉強になりました。
尚、イコライザーカーブについて面白い記事がありましたので、こちらをご参考まで。
(※4)以前、宮崎・ライフタイムさんと長崎・波佐見のDoug(ダグ)さんの記事で取り上げた「ジャズはデッド?」議論再発か?!とこの時は思いましたが、私の中での結論は「全ては空間の広さと音量のバランス、自分が鳴らしたい音楽次第なので、一般論としては言えない」です。
尚、音響システムの考え方において、私が大きな影響を受けたもう一つのお店は小倉のオーディオ・ビキンさん。その記事もご参考まで(こちら)。
(※5)音の記憶力:この話も詳しくはこのマスターのメルマガをご覧いただきたいですが、私自身にその能力がないことは南阿蘇のウッドサイド・ベイシーさんで自覚したとおりで、耳に痛いお話でした。
(注5)PCオーディオのススメ:予めお断りしておきますが、ここでのマスターのご主張はあくまでCDのベストの鳴らし方についてのみ。再生能力におけるレコード・プレイヤーとの比較はまた別の話です。
CDがプレイヤーによって音の違いがあること、またその大きな要因の一つがデータをピックアップする際の読み取りエラーにあることも、オーディオ・マニアの方には自明の話。
では、原理的に読み取りエラーをなくすためにはどうすればいいのか?通常のプログラムを読み込む際にはチェックデジットを使って100%読み取りエラーがないのだから、それと同じ方法(リッピング・ソフト)を使えば良い。。。なるほど。理論的に正しいことは理解しましたが、英Chord社のCDトランスポーターBlu愛好者としては聞かなかったことにします。笑
詳しくはマスターの「簡単PCオーディオ入門 ハードウェア編、ソフトウェア編、補足編」をご覧ください。
(注6)美味しい珈琲の秘密:まだまだよくわかってはいませんが、マスターの高い嗜好レベルとお客さん第一というお心遣いから生まれてきているのは間違いありません。
自家焙煎全盛期にわざわざ自家焙煎を選ばない誠実さ。曰く、珈琲豆は農作物。毎年の豆の出来具合を見計らって、同じ味を継続して作り出すことは自分には出来ないから、プロ中のプロにお任せする。
このお店で言えば、スピーカーの聴くベストポジションをカウンター席のお客さんになるようセッティングするというお心遣い同様、プロ意識の高さとはかくあるべしと感心しきりな逸話でした。
(注7)私が福岡時代にお世話になったJABやブラウニーのマスターの若かりし頃のお話もあれば、私の大好きな現代音楽のスティーブ・ライヒの話で盛り上がったり、私のあまり聴いていない同じくミニマル音楽のテリー・ライリーに逸れたり、私も大好きなバリ島のケチャの話に飛んだかと思えば、その演奏パターンを解明・実演して世界を驚かせた芸能山城組の話が始まる等々、マスターの知見の深さを垣間見させていただきました。
(注8)マスターのブログのインデックスはこちらですが、現時点で私の面白かった頁にリンクを貼りましたので、ご参考まで。
しかし、集中的に読んで思いましたが、やはり実体験は大切。そのミュージシャンのライブを一度聴いたら、CDで聴いても何となくその音や雰囲気を修正して聴けるのと同じで、この記事を読んでいると、マスターの声が聞こえてくるような気がしました。
ジャズは何から聴いたら、ジャズをわかるにはどうすればいいでしょうか?
【付録】パラゴンの特徴と鳴らす際に工夫するポイント
・パラゴンの最大の特徴はオール・ホーンであること。
・ホーン故、その特徴を生かすためには、ある程度以上の音量が絶対に必要。
・3つのホーンが通常のスピーカーとは違い、バラバラの位置に配されているため、タイムアライメントが合いにくいこと。
・その結果、3つのホーンがバラバラに鳴り、ヤマタノオロチみたいになりやすいこと。
・それを1つのユニットが鳴っているように聴こえるようにセッティングすること。
・低音をこの短いホーンだけで出すのは難しいが、パラゴンがフロア型である理由は床をホーンの延長として使うためなので、あまりその位置を高くしてはいけない。
・パラゴンには種類が多数あるので、どのユニットが使われているタイプか把握して、対策を練ることが大切。
・割ったら取り返しがつかないので、前面の突き板を外す時は絶対に一人ではやらないこと。。。立ち往生して、30分ぐらいアブラ汗を流す羽目になるので要注意。笑
(注9)急増中の濃密な時間:以下の羅列は、マスターから学んだことの個人的な覚えです。
もしご不明な点がございましたら、お店をご訪問になられた上、マスターにご確認くださいませ。
【追記:2023.10.15、最新更新:2023.11.1】
【考え方】・「好き嫌い」と「良し悪し」は違う:音楽で言えば、ポップスは「好き嫌い」の音楽。ジャズとクラシックは「良し悪し」があり、「好き嫌い」とは別に論じるべき ・どんな状況でも一切手を抜かないのがプロ。お店の値段は品質保証料込み ・品質の違い:例えばハイボールなら、しっかりとしたウィスキー、ちゃんとした氷とソーダ水を使って、丁寧にちゃんと作るから、値段は居酒屋より倍以上高くなるが、味の次元/感動も全く違う
【ジャズ】・ジャズは時代の空気感と共に歩むもの ・自分が生きている「今」のジャズを聴かないのはもったいない ・ジャズの良い所は芸術とエンターテインメントの間にあること ・ジャズは民族音楽を除いたあらゆる音楽の中で、アドリブ=その時一回限りを旨としている唯一の音楽 ・スタンダードは後付けであろうと歌詞とメロディの関係を知っておくべき ・日本あるある:ピアノ・トリオが大好き/わかりやすい演奏は評価しない ・泉のように湧き出すような才能は、残念ながら枯れてしまうことも多い ・ジャケットを見ず、ブラインドで演奏の良し悪しを判断出来る感性/演奏者を判別出来る力量
【大分・一粒万倍(イチリュウマンバイ)の「開業準備」当時】・パラゴンについて(上述【付録】はその一部) ・その音作りに対する助言:①ともかく、CDを基準にして音を作ること ②レコードで音作りしてはいけない。音の変わるポイントが多過ぎて※、基準になり得ない。「割れ鍋に綴じ蓋」を繰り返すだけで、結局まともな音にはならない ・レコード、特にモノラルを鳴らす際の注意点
※プレイヤー、アーム、カートリッジ、針(更に同じ型番でも、その中で出来不出来あり)、昇圧トランス、更にはリッツ線、消耗品等々。
【音響】・オーディオは録音技師の意思どおりを再現すべき ・部屋=空間が音に与える影響は大きい ・音だけを言えば、録音音楽が最高※ ・いい音=システムを仕上げるための基準 ・個人のオーディオと店のは違う(リスニング・ポイントがただ1点でいいなら、その周りをド吸音して音を鳴らせばいい) ・理論的には音が悪くなるはずなのに、何故か良くなるJBLマジック ・ブルーノート、ECM、TBM、VINUSといったレーベルは音を作り過ぎで、好みではない ・MJQのアトランティックの録音は自然で好ましいが、そのバランスの取れた再生は難しい(このお店で聴けば、言っている意味がわかります)
※録音音楽は、ライブでは絶対に聴こえない音をマイクで拾って合成して出来るもの。例えば、ライブでは細かい音まで聴こえるはずのないDsだが、録音音楽ではマイクを複数立てることで、細かい音の魅力まで引き出すことが出来るから。
但し、同時代の最高峰のミュージシャンのライブには出来るだけ行くこと。録音には色々な魅力があるとは言え、音楽の缶詰めには違いなく、積極的にナマを体験すること。
【酒】・マスターのお酒の師匠※(=キタにあったオーセンティック・バーのマスター)・シッピング(sipping)のススメ(私が下戸故のお話ですが、いいウィスキー等をショットグラス1杯、チェイサーと共に、時間をかけて舐めるように飲む楽しさを教えていただいております。)
※マスターがお酒のイロハを教わったと仰ぐ師匠はまた凄い方。客に媚びず、物事の道理に忠実な方だったそうで、客に向かって『いくらお金を積まれても、このお酒で水割りは作れません』と平然と言い放つのも日常茶飯事。マスターが「俺が言うのも何やけど、あんなに客に『帰れ!』言うたら、そら、客が来んようになるわな」とおっしゃったのも面白かったです。
【駐車場:無、喫煙:不可】