「宇田川源流」 米中貿易戦争悲観論について考える「資本主義と共産主義の壁」
「宇田川源流」 米中貿易戦争悲観論について考える「資本主義と共産主義の壁」
米中貿易戦争に関しては、今までも何回も書いてきた。実際に米中間の争いは「貿易」ではなく、すでに「戦争」というような状況になっている。
基本的に、経済制裁に限らず、何らかの制裁を受けて、その制裁の問題や原因が顕在化した時、または国内の影響が出てきたときに、すぐに対処したり国内の路線を変えれば回避できる。日本などはアメリカや中国に、過去、怒られたり、あるいはマスコミのいい加減なブラフが出た時に、すぐに相手のことを忖度し対処してしまうので、あまり制裁などが大きな影響を与えることはない。日本も例えば貿易摩擦という単語を使ったり自動車摩擦などということを言ったり、あるいはコメ問題など様々な問題があったり、あるいは中国進出企業の問題が出てきた場合などもあり、様々な摩擦が存在したのであるが、そのように先に手を打つこと、つまり、日本国籍の企業に路線変更という負担を強いることで、対処してきた。
しかし、そのように国内企業に対処を強いることができない場合は、制裁が発動されることになる。しかし、例えばイラン、あるいはクリミア問題におけるロシア、核開発問題における北朝鮮、そして米中貿易戦争のような場合は制裁が発動されることになる。ここで影響が出てから政策変更をすれば、結局は、もともと悪かったということを認めることになり、最終的には国内企業の負担を強いることになるので、国内の指導層に対する不信感が募り、その後の国内運営がうまくゆかなくなる。そうなれば限界まで我慢をし、そして、制裁している国家またはその関係国を攻撃することになる。戦争をして解決するものではないものの、それ以外に「国内の評判を落とすことなく、政権を維持する」ということができなくなってしまう。このように「勝てる見込みがないのに戦争を始めてしまうこと」を「不合理の合理」というのであるが、まさにそのような状況に突入することになる。戦前の日本やナチスドイツなどは、まさにそのような「不合理の合理」を正当化し、国内の内容を維持することで戦争を始める。
一方で、今回の北朝鮮のように「首脳会談でお互いが妥協する」ということを模索する場合もある。現段階では言えないが、たぶんイランに関してもまた中国に関してもそのようなことが模索されていることになろう。
しかし、そのような妥協策がうまくいかなかった場合、当然に戦前の日本やナチスドイツのようなことになるのではないか。
トランプ大統領元側近バノン氏、G20での米中和解に悲観論
トランプ米政権の発足当初、ドナルド・トランプ大統領の首席戦略官兼上級顧問を務めたスティーブン・バノン氏はこのほど香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」の単独インタビューに応じた。インタビューでは、「トランプ大統領は習近平主席を高く評価しているが、個人的な関係は米中間のディール(取引)には役に立たない場合が多い」と語り、6月下旬に大阪で行われるG20サミットでの米中首脳会談で両国が貿易戦争回避で合意する可能性は低いとの見通しを明らかにしている。
バノン氏はメディア経営者、政界関係者、戦略家、元投資銀行家、そして保守系ニュースサイトであるブライトバート・ニュースの元会長と様々な顔を持つ。同氏が注目されたのが2016年8月に、米大統領選挙の際にトランプ陣営の選挙対策本部長に指名されたことだ。当選すると、彼はトランプ政権で最初の7か月間、首席戦略官兼上級顧問を務めたものの解任されている。
これについて、バノン氏は同紙に多くは語っていないが、「いまも大統領のドナルド(トランプ)と個人的な関係は続いており、重要なことについては、彼の側近を通じて連絡を取り合っている」ことを明かした。
バノン氏は「いま、ドナルドが最も関心があることは来年の大統領選で当選して、2期目を続けることだ」と述べたうえで、「米中関係は大統領選でもっとも大きな争点になることは間違いない。アメリカが貿易戦争で勝利すれば、ドナルドが再選されることは確実だと私は思う」と強調した。
しかし、バノン氏は「もし、ドナルド以外の大統領候補が当選した場合、その次期大統領は共和党であれ、民主党であれ、ドナルド以上に中国に強硬な人物であることは間違いない」と指摘した。
トランプ大統領はすでに、米国向けに輸出されている2000億ドル分の中国製品のほか、残りの3250億ドル分の中国製品にも最大で25%もの関税を上乗せることを発表している。これについて、バノン氏は「ウォール・ストリートの人々はドナルドが中国に強硬になることで、株価が下がることを心配しているといわれるが、これは大うそだ。そうなってもあくまでも短期的だ」と分析。
米中貿易戦争によって、米国内の農業従事者が大きな被害を受ける可能性があるとの観測についても、「米国の農民はアメリカの繁栄が続くことを信じている。また、アメリカの労働者も米中貿易戦争で、アメリカが勝つことで、雇用が戻ってくることを確信している」と断定した。この理由について、バノン氏は「ドナルドの最大の支持者はラストベルト(米中西部から南部のかつての米国の工業地帯)に集中している白人労働者だからだ」と主張した。
バノン氏は6月下旬の大阪での米中首脳会談について、「ドナルドは習近平国家主席と会談することになるだろう。しかし、これまでの米中協議をみれば、両者の主張の違いは大きく、ドナルドと習主席の話し合いで、そのギャップを埋めることができるとは思わない」と述べて、悲観的な見方を明らかにした。
2019年06月09日 07時00分 NEWSポストセブン
https://news.nifty.com/article/world/worldall/12180-301016/
トランプ大統領の首席戦略官兼上級顧問を務めたスティーブン・バノン氏の言葉が、どれほどトランプ政権の意思を反映しているかはよくわからない。同時に、中国の政権内部の意思決定やあるいは国内事情に関して、どれほど調査し、経験した内容であるかということが見えてこない。しかし、少なくとも、政権を離れジャーナリストとしてある程度客観的に、そして元職ということである程度インサイダー的に現在の内容を見た場合、「米中関係は悲観的」と映るらしい。
「米中関係は大統領選でもっとも大きな争点になることは間違いない。アメリカが貿易戦争で勝利すれば、ドナルドが再選されることは確実だと私は思う」<上記より抜粋>
つまり、大統領選挙があるから、安易な妥協はできないということになる。単純に、日本のようにあまり情報が入っていない国においては「北朝鮮との間」ばかり見ているが、アメリカの本命は、間違いなく「中国」である。もっと単純に言えば「資本主義・自由主義経済・民主主義を守ること」であって「中国共産党政府が社会主義経済を行い、国営企業に不当な援助を行って自由な競争を阻害すること」と「その自由な競争を阻害することによってアメリカの企業が赤字に陥り、アメリカのプーアホワイトが失業することを最も嫌う」ということに他ならない。そのプーアホワイトこそ、トランプ大統領のもっとも強力な支持層であり、中国と対立し「貿易戦争に勝つこと」こそが彼らの望みであるということを言っているのである。そのために「国家権力を動員して企業競争を阻害していることを排除することがトランプ大統領の役目」でありそれに期待している国民に支えられているということになる。
同時にもしもトランプ大統領を打ち負かす他の候補がいるということは、プーアホワイトが切り崩されることを意味しており、それは、自分たちの雇用が永久に確保されるという要件が必要であり、それは、「トランプ大統領以上に中国に対して強硬な態度をとる」つまり、「トランプ大統領出は甘い」ということになる。それは「中国を貿易だけではなく攻め滅ぼす」というようなことにならざるを得ない。つまりトランプ大統領は、まさに戦争の直前まで貿易戦争の効果を高めているということを、バノン氏は主張しているということになる。
「ドナルドは習近平国家主席と会談することになるだろう。しかし、これまでの米中協議をみれば、両者の主張の違いは大きく、ドナルドと習主席の話し合いで、そのギャップを埋めることができるとは思わない」<上記より抜粋>
ギャップが大きいということは、正に「根本的なことで対立している」ということを意味している。つまり、最大であれば国家の存立の部分や、あるいは、イデオロギーの部分を言っているのであり、場合によっては米中の貿易取引をすべて中止する準備があるということを言っているのである。まさに、「米ソ東西冷戦」のような状態に近づくということを意味している。
これがバノン氏の見方であり、今までこのブログ(前のブログを含め)で行ってきたことと同じであることがわかる。まさに悲観的、つまり戦争を辞さない状況であるということを意味している。
支持層が「プーア」つまり「貧乏なブルーカラー」であるということが大きな問題であり、単純に、「理論で打ち負かすことよりも、戦って勝つことを紛争解決の中心に考える」人々であるということが大きな問題で、平和などを訴えるのではなく即物的に「勝利」つまり「アメリカファースト」が実現されることを望む。そして、そのことがトランプ大統領の再選の条件なのである。そう考えた場合、この問題の解決方法は大体わかるのではないか。
さて、日本はこのようなバノン氏の言葉を受けて、どれだけその覚悟を、また準備をすることができるのであろうか。