アプロディテとアドニス
2019.06.11 01:11
最愛の父と関係を持ったスミュルナは、没薬の樹に姿を変えた時には父キニュラスとの子を身ごもっていた。
十月を経て生まれたその男児は見事に愛らしく、誰もがそ魅了されてしまう程の美少年の名前はアドニス。それはアプロディテも例外ではなかった。「誰にも奪われたくない」そう思ったアプロディテはまだ赤子であるアドニスを箱に入れ、冥界の王女ペルセポネに預けた。しかし箱を開けてしまったペルセポネもたちまちアドニスの虜になってしまった。
アドニスをめぐり争い合う二人の女神についにはゼウスが名乗り出て裁定を下した。「アドニスは一年の三分の一は自分の好きなように生きなさい。もう三分の一はペルセポネと、残りはアプロディテと過ごしなさい」
しかしアドニスは自分の為の三分の一の時間もアプロディテと一緒に過ごすことを選んだ。美しい青年へと成長したアドニスと美の女神アプロディテ。二人は野山を駆け巡り、愛と官能の日々を過ごす様になった。
そんなある日、嫌な予感を感じたアプロディテはアドニスに狩りに出ないように悲願した。しかしアドニスはそれを聞き入れず出かけてしまい、その日森であったイノシシに突き殺されてしまった。
やっと彼を見つけたアプロディテは流れ出た彼の血から赤いアネモネを咲かせた。
アプロディテはアドニスを失った悲しみを父ゼウスに訴えると、アドニスは一年のうちある期間を冥界で過ごしたら残りを天界でアプロディテらと共に過ごせるように取り計らった。