【 実証実験 】「日比谷音楽祭」での「&HANDボランティア」実証実験レポート
一般社団法人PLAYERSと公益財団法人日本ケアフィット共育機構の共同で実施した、スポーツや音楽イベントなどでのボランティア活動を支援する「ボランティア用&HAND」実証実験の結果をご報告します。引き続き、実証実験の結果をもとにサービス改善を行ってまいります。
「ボランティア用&HAND」サービス概要
イベント会場におけるボランティア活動において、手助けを必要とする人がスムーズにボランティアと出会えなかったり、依頼内容によっては手間や時間を要してしまうことがある。「ボランティア用&HAND」は、手助けを必要とする人とボランティアを発信機を内蔵した「&HANDデバイス」と「LINEアプリ」でつなげ、より迅速かつ的確なサポートを実現します。
「ボランティア用&HAND」実証実験
「日比谷音楽祭」にて「&HAND」の仕組みを用いて、障害者(視覚障害者・車いす利用者)とボランティアスタッフのマッチングを行います。
- 日時:2019年6月2日(日) 10:30~18:00
- 場所:「日比谷音楽祭」会場(日比谷公園)
- 被験者:視覚障害者・車いす利用者・ボランティアスタッフ
検証内容
- 音楽イベントでの「ボランティア&HAND」の有効性と改善点の把握
- 障害者の音楽イベント参加意向の変化
- 音楽イベントにおけるボランティア応対の最適化
- 音楽イベントでのボランティア活動における課題の把握
- ボランティアスタッフのボランティア活動への参加意向の変化
実験方法
- 「日比谷音楽祭」における一連の行動を、視覚障害者・車いす利用者のみで行ってもらう。
- ボランティアの手助けが必要になった際に「&HANDデバイス」をONにし、LINEから通知を送る。
- LINEの通知を受け取ったボランティアが対応する。
- 実験終了後にインタビューを実施。
実施主体 一般社団法人PLAYERS 公益財団法人日本ケアフィット共育機構
日比谷音楽祭 https://hibiyamusicfes.jp/
リリース https://www.andhand-project.com/posts/6346855
被験者:車いす利用者
Aさん 20代 男性 手動車いす(杖を所持しているが利用するのは職場と緊急時のみ)
野外音楽イベント:はじめて(応援しているミュージシャンの路上ライブに、電車で1時間半かけて行ったことがある)
野外音楽イベントは気分転換に最高!
- 昔はヘルパーさんに頼んで音楽イベントに行っていたが、最近は面倒臭いので諦めている。
- 本当はもっと音楽イベントに参加したいが、大変な事を色々と考えてしまい、自然と避けてしまっている。
- 普段は行きたくても我慢している野外音楽イベントに参加できて、最高の気分転換になった。
野外イベントでの困りゴト
- 公園は段差・細道・砂利道・芝生があって、自力での車いすの移動は体力的に厳しいし、精神的にもしんどくなってくる。
- 人見知りなので、誰かに手助けを求める事を躊躇してしまい、自分から声を掛けられずに諦めてしまう事がかなりある。
- 初めての場所だと方向が分からないので、車いすを押しながら道案内をお願いしたい。
- 買物の荷物を持てないので、持ってもらえると助かる。(普段は車いすの下のスペースに突っ込んでいる)
&HANDがあれば安心してイベントに参加できる
- 「ボランティア用&HAND」は、ぜひ利用したい。
- 1人での外出時は他人に声を掛けるのがとても苦痛なので、LINEから直接ボランティアにお願いできるのがとても良い。
- イベントに「ボランティア用&HAND」が採用されているだけで安心感があって、そのイベントに参加しようと思う。
- 電車の乗降り時の駅員さんへの依頼にも使えると嬉しい。
被験者:視覚障害者
Bさん 20代 女性 2種5級(弱視)
音楽イベント:2・3回 / 年 野外音楽イベント:1回
Cさん 30代 男性 1種2級(白杖)
音楽イベント:よく行く
DE夫妻 20代 男性 1種1級(白杖)・30代 女性 1種2級(白杖)
音楽イベント:はじめて 2人で食事や地元のお祭りに行ったりする
野外音楽イベントを満喫!
- HPを見てもあまり内容が分からなかったが、実際に来てみたら食事や演奏体験など、かなり楽しめた。
- 公開ラジオや色んな出店があって、とても楽しめた。
- 普段、楽器を触る機会がないので、三味線やアコーディオンを演奏できて貴重な体験になった。
&HANDはイベントへの強い参加動機になる
「ボランティア用&HAND」が採用されたイベントは、「行ったら何とかなるから、とりあえず行ってみよう!」と思えるので、参加の後押しになる。
視覚障害者にとって1人でのイベント参加は敷居が高いが、「ボランティア用&HAND」が採用されていると、障害者に配慮したイベントであると目印になって、参加したいと思う。
友達といる時はサポートを頼めるが1人の時は不安なので、事前に「ボランティア用&HAND」があることが分かれば、1人でも参加しようと思える。
「ボランティア用&HAND」がもっとイベントに採用されれば、視覚障害者の人生の楽しみが増える。
&HANDは安心感があって気軽にサポートをお願いできる
屋台での買い物など、ちょっとした事は自力でがんばって何とかしていたが、&HANDがあれば気軽にお願いできて助かった。
困った時に自分から声を出すのではなく、ボタンでボランティアさんを呼べるのが良い。
ボランティアさんにずっと付いてきてもらうのは気が引けるが。&HANDは困った時に気軽にお願いできる。
待っていれば、むこうから来てくれる安心感がある。
ポートしてもらっている最中のボランティアさんとの会話が楽しかった。
サポート時はとても親切にしてもらえて良かった。
ボランティア用&HANDについて改善して欲しい所
- LINEの選択ボタンは「道案内」「トイレ」「買物」があると良い。
- 音声入力でサポート内容を選択できると良い。
- ボランティアが自分達を見つけるのが大変そう。視覚障害者も白杖を見えやすくすると、キョロキョロするなどしたら良いと思う。
- ボランティアが自分を見つけてくれる為には、顔写真、性別、年齢、服の特徴、電話番号を教えてもOK。
- ボランティアが自分を見つけられるか心配になった。顔写真は嫌だが、服や鞄、白杖の有無、周りの目印や風景は情報提供しても良い。
- ボランティアに提供する情報として、名前、顔写真、住所、電話番号は抵抗あるが、服装などの特徴は教えても問題ない。
- ボランティアが来るまでの待ち時間が分かると良い。時間が掛かるようであれば、キャンセルしたい。
- 待っている時に、このまま待ってて良いのかを知りたい。制限時間があると良い。
- どんなボランティアさんが来るのか分かると安心する。
- LINEチャットでのやりとりが大変なので、電話で直接話せると良い。
- 対面でなくとも、LINEで写真を送って「このお店は何ですか?」など会話できると良い。
- イベントの情報もLINEから知れると良い。
- デバイスを押してから、ボランティアが来るまでに待つ場所が欲しい。
- デバイスのオンオフを物理的に分かるようにして欲しい。
- キーホルダー型ではなくて、リストバンド型が良い。
- BeMyEyesで特定のイベントverがあると良い。
野外イベントでの困りゴト
- 事前にHPやアプリからチケットの申し込みが必要な事が分からなかった。
- 全体の規模感やどこに何があって、何ができるのかが分からない。
- 入り口で地図をもらったが、字が小さくて見る気がしない。会場の全体像が把握できずに困る。
- 目的地までの行き方が分からないし、点字ブロックもないので1人では移動できない。
- 野外イベントだと、トイレの場所が分かりにくくて困る。
- 屋台での注文時にメニューや値段が分からない。分からないまま列に並ぶと、買わなくてはいけなくなる。(普段は近づいてスマホで撮影し、拡大して確認しているが、怪しい人だと思われている気がする)
- LIVEパフォーマンスで他のお客が盛り上がっていても、見えないので何で盛り上がっているのかが分からない。
ボランティアへの要望
- 会場全体を一緒に歩いてくれると、全体の地図が頭に入るので助かる。
- 自分でできることはやるが、イベントに関する詳細情報など、自分だけだは分からないことを教えてもらえると助かる。
- ボランティアさんが忙しそうにしていると、頼みにくい時がある。
- ボランティアが対応できなかった時に放置されることがある。分からない時は他のボランティアにつないで欲しい。
- 今やっているライブやイベントを教えて欲しい。
被験者:ボランティア
Fさん 20代 男性
ボランティア経験:3~4年(計7回)
Gさん 20代 女性
ボランティア経験:5年(計3回)
Hさん 女性
ボランティア経験:8年
&HANDでより積極的に活動でき、互いに満足感が得られる!
- 困っている方に声をかけるのはとても勇気のいることで、&HANDを使う事で必要な方に積極的にお手伝いに行ける気軽さが良いと思います。
- &HANDがあればスポーツボランティア時の見廻りで、見落としがちな事柄にも対応できると感じた。
- 自分を必要としている人から直接LINEが届くので、「この人の役に立てる!」と思った。
- ボランティアとしての役割が明確になり、役に立てている実感や満足感を得ることができた。
- 目視では困っている人が分からない事が多いので、LINEで通知が来ると「助けて良いんだ!」とモチベーションが上がった。
- 近くに手助けを求めている人がいることが分かるので、探し出そうとする。
- 不特定多数ではなく困っている人が明確なので、迷わずに声を掛ける事ができた。
- LINEだと1対1でやりとりしている感じがあって、より積極的に行動できた。
- LINE通知は自分が求めらている感じがして、モチベーションが上がった。
- 依頼内容がLINEで届くので、対面するまでに地図も用意するなどの準備ができて助かった。
- 車いすの方、目の不自由な方、あるいは年配の方にお声がけして断られた場面を目撃したこともあります。断られた気持ち考えると気の毒だったが、&HANDであればそれは起きない。
- ただサポートするだけでなく一緒に楽しむことを大切にしているので、自分のボランティア活動を通じて相手に、「1人だけではできなかった体験」を提供することができて嬉しかった。
- 聴覚障害の方が、電車・バスでアクシデントが起こった時や、さまざまなトラブルにもお手伝いできそう。
- ニュースでメトロ銀座線での実証実験を見て、私が目にするのはまだ先かと思っていたが、貴重な体験ができて嬉しい。
ボランティア用&HANDについて改善して欲しい所
- 人混みで対象者を見つけることができなかったので、見つけやすくして欲しい。
- 呼び出しした人と受信側に時差が生じていた。
- 相手が障害者の場合、事前にその方の障害の内容な依頼内容が分かると助かる。
- 「性別」「服装」「居場所」など、対象者の特徴をLINEで知りたい。
- 対面で会ったどうにでもなるので、ヘルプ内容はそんなに細かくなくて良い。(端的に分かればOK)
- サポート内容に「トイレに行きたい」「緊急事態」があると良い。
- 周りが賑やかだと、スマホの通知に気づかないことがある。
- 設定ミスで着信音がならない状態になっており、着信に気づくのが遅れました。
- スマホのLINE通知に気づかないことがある。
- 相手が見つからない場合、いつまで探し続ける必要があるか迷う。
- 相手との距離感を知りたい。
- 受信者からみて東西南北どの方向か?など、大体の位置が分かると助かる。
- 今回は1対1でしたが1対数名の場合、スマホ画面上にはどんな状況が見られるのかを知りたい。(返信した内容は全員に表示される?)
- 通話ができると嬉しい。
- LINEをボランティアの連絡にも使えると良い。(情報共有や対応方法の確認をしたい)
- ボランティア中は周りの目があるので、スマホをいじりにくい。
ボランティア活動での困りゴト
- ボランティア活動に正解はないので、「求められている事に対して自分の行動が一致しているか?」不安になる事がある。
- サポート中に相手が不安な顔をしていると、自分も不安になってくる。
- 依頼内容について「自分で対応できるか?」不安になることがある。
- 事前情報が共有されておらず、何をするのかイメージを持てずに当日を迎えることがある。
- 事前に資料・詳細な情報がない時がある。イベント会場の地図、移動動線、タイムスケジュール等を予め頭に入れておきたいし、入れておく必要があると考える。
- 東京マラソンでのボランティア時は、「説明会や資料で確認していた事と、当日現地での指示が違った」「集合場所の指定がおおざっぱに指定される」(地下鉄○番口付近と書かれているが、毎回迷子状態になっている方達を見かける)で困った。
- ボランティアの募集人数と活動内容のバランスが悪いことがある。
- 自分の役割が曖昧だったり実際にやる事がない時に、「自分がいる意味はないな」と感じてしまう。
- やることがないと、役にたっている実感が持てずにモチベーションが下がる。
- ボランティアのリーダをやる時は、最適なボランティア配置に迷うことがある。
- リーダーに確認相談せず、自分の考えだけで先に行動してしまうボランティアは困る。
これまでに実施した実証実験
- IBSAブラインドサッカーワールドグランプリ 実証実験(2019/3:PLAYERS・ケアフィット)
- JR赤羽駅 実証実験(2019/3:PLAYERS・JR東日本・ケアフィット・ソニーモバイルコミュニケーションズ)
- 福岡市 実証実験(2019/2・3:DNPなど)
- 新宿駅 実証実験(2019/1:DNP)
- 大阪駅 実証実験(2018/8:DNP・JR西日本など)
- メトロ銀座線 実証実験(2017/12:PLAYERS・DNP・メトロ・LINE)
- 鉄道博物館 実証実験(2016/1:PLAYERS)