67.人間関係は進歩しない
第一章 新たに仕事を始めるにあたって
テクノロジィー(技術)が将来どこまで進化するか誰も予測ができません。その進展は後戻りすることなく前へ前へと進んでいくからです。例えば、初めて携帯電話が登場したのは、今から約30年前の出来事です。自動車用電話が売り出され、外出用にはショルダーストラップが付いた重い電話でした。バッテリーの充電も時間がかかり、値段も高く一部の人だけに愛用されていましたが、それから僅か30年後の現在を誰が予測できたでしょうか。一人が一台を個人用として所有し、軽く、小さく、多機能なスマホまで進化したとは驚きです。これから先、どのようになってゆくのかを予知するのは難しいでしょう。
それに対して、人間関係については何千年もの間、全然と進化していません。その原因はテクノロジーと異なり積み重ねができないからです。人間には寿命があり、寿命が尽きた時点で個人が積み重ねた実績が消滅してしまうので、また、次の人間が最初からやり直さなければなりません。ほぼ完成したと思ったとき、その人間はあの世界に旅だっていきます。
過去から現在、そして未来へと時代は変遷しますが、人間関係だけが進歩せずに同じことを繰り返しているにすぎません。これが人間関係の歴史です。未来に良き人間関係を築こうとするならば、唯一の可能性は過去を学習し同じ過ちを人間が繰り返さないことです。そこに歴史と言う過去を学ぶ価値があります。
したがって、私たちが直面する人間関係の問題は、平安時代、紫式部が源氏物語を書いた時代、織田信長やはたまた坂本龍馬が活躍した時代と比べても何ら変わりがありません。国会などで論争している様子を例にとってみると、昔と今では建物、服装、髪型などは変わっていますが、喧喧諤諤と同じ内容を話しているにすぎません。人間関係は「無常」であり未来永劫に続きません。情けないようですが、そのお陰で「やる気」があれば誰でも成功する可能性があるということです。