「世界最高のチームをつくる。」“日本一働きたい会社”をつくったLIFULL羽田幸広の次なる挑戦。
日本で活躍する方にお話を伺う“EKIUMI SPECIAL TALK”。今回は株式会社LIFULL(LIFULL HOME’S運営)の人事責任者である羽田幸広さんにご登場いただきます。『日本一働きたい会社のつくりかた』の著者である羽田さんに、組織をより良くするためのヒントをたっぷりと伺いました。
■“日本一働きたい会社”から、“世界最高のチーム”へ
――― 本日はお時間をいただきありがとうございます。
羽田 はい。私で良ければなんでもお答えします!
――― 『日本一働きたい会社』をご出版されてからもう2年が経ちましたね。
羽田 そうですね。もう2年ですね。
あのときは人事責任者として実践してきたノウハウを、世の中に伝えたいという想いで必死に書いたのを覚えています(笑)
↓日本一働きたい会社のつくりかた(Amazon)
――― LIFULLの2年というのは相当な変化が求められると思うのですが、現在はどんなことを目指していますか。
羽田 まず変わらないこととしては、私たちは、会社のビジョンである「経営理念」を実現するために仕事をしているということです。
経営理念を簡単にいうと、「あらゆるLIFEを、FULLに。」ということです。
世界中のLIFE、つまり”人生・生活・暮らし”を幸せで満たしていこうという想いは変わりありません。
――― 日本中だけでなく、世界中のですか。
羽田 はい。それで去年の10月から掲げているのが、この会社を”世界最高のチーム”にしようということです。
――― 日本一から世界一という、スケール感を一気に広げたのですね。
羽田 まさに、そのスケール感を”桁替え”しているのがいま、という感じです。
■“世界最高のチーム”のつくりかた
――― その、”世界最高のチーム”の実現に向けてどんな人事施策を打っていますか。
羽田 語呂よく言うと、”風土と制度”を変えています。
――― 風土と、制度。
羽田 はい。まず風土というのは言い換えれば企業文化のことですけども、世界最高のチームに必要な企業文化にしていくためには代表の井上が自分の言葉で伝えることが大事だと思っています。
そのための施策としては、管理職に直接伝える”ミドルセッション”や、全社員と議論を交わす”コンパ”といった取り組みをしています。
――― そこで井上社長はどんなことを伝えているのですか。
羽田 ”世界最高のチーム”とはなにか?ということです。
たとえば、その問いに対して「よりプロフェッショナルになることが大事」という話があれば、その”プロフェッショナル”についても議論を深めていく。
そういったやりとりを通じて風土の醸成をしながら、それを支える制度を設計していきます。
象徴的な変化のひとつとしては、”ガイドライン”の改定です。
↓2019年8月現在のLIFULLガイドライン
――― これはLIFULLの全社員がそらで言えるという、あのガイドラインですね。
羽田 はい。あの、LIFULLの行動指針です(笑)
LIFULLでは社員の有志が集まっていろんなプロジェクトが進むのですが、このガイドラインの改定も社員が主体的に関わってくれています。
すこし話は逸れますが、世界を見たとき、たとえば多様性の面でLGBTについての理解を深める必要性を感じた社員が自ら動き出したり、出産・育児と仕事の両立をより良い形にするためのプロジェクトを動かす社員がいたりと、LIFULLではさまざまな動きが自発的に行われています。
――― 人事としては、社員が自ら必要性を感じて動くことを推奨しているのですね。
羽田 はい。ただもちろん、これは組織としての経営理念に沿うことが前提です。
たとえば、“個人にとってはメリットがあるけど、組織にとってはデメリットがあること”については、会社として応援しにくいですよね。
――― なんでもアリではないと。
羽田 やっぱりLIFULLは経営理念ありきの会社ですから、そこは外せません。
ただ時代の潮流とか、テクノロジーの進歩によって社会は変化していきますよね。
だからいまは個人にしかメリットがないことも、いずれ組織のメリットになることも出てくるとは思っています。
――― そうやって時代に合わせて制度設計をして、”世界最高のチーム”づくりをしている最中ということですね。
羽田 はい。冷静に考えて「あらゆるLIFEを、FULLに。」ってデカすぎることじゃないですか。
いまのままでは実現できないから、実現できるように組織の風土と制度を変えていくということです。
■最高のチームをつくり、増やすために
――― 羽田さんがLIFULLの人事責任者としてなにを大事にし、どう進歩させようとしているのかはよくわかりました。ここからは個人として目指していることについて教えていただけますか。
羽田 はい。個人として目指していることは三つあって、まず「最高のチームをつくる」ということです。
――― これは、これまでのお話ですね。
羽田 そうですね。次に二つ目は、「最高のチームをふやす」ことです。
いまの時代、多くの人が自分の心に従って生きられる時代になってきて、生き方が多様化していますよね。
仕事一筋の人もいれば、副業を頑張る人もいるし、まったく別のことに夢中の人もいて。
で、そのやりたいことを実現させたいとき、組織・チームに所属する必要が出てきたりしますよね。
――― そうですね。一人では限界があります。
羽田 でも、ここで落とし穴があって。
最初の「自分はこれをやりたい!」という熱い想いが、組織・チームのなかに入ったときアレやコレやによって冷めていくことがよく起きますよね。
――― 起きますね。風土や制度が原因で冷めることもあれば、たった一人の存在が原因となって冷めてしまうこともあります。
羽田 そう、それってすごくもったいないというか、不幸じゃないですか。
だから、そうならないように最高のチームを増やしていきたいんです。
最高のチームなら、熱量は下がるどころか上がっていきますから。
――― それは、会社だけでなく地域団体などにも当てはまりそうな話ですね。
羽田 そうなんですよ。たとえばこのエキウミの拠点である茅ヶ崎のなかにすごく良いチームがあるとしますよね。
好きな街の、好きなチームに所属できるって考えたら結構HAPPYだと思いませんか。
――― めちゃくちゃHAPPYですね。
羽田 良い組織・チームをつくる施策は散々ためしてきた自負があるので、その事例を皆さんに展開することが最高のチームを増やすことにつながると思っています。
まだまだ微力ですが、執筆とか、講演とか、こういうメディア出演などを通じて、少しでも多くの人が良いチームでより良い人生を送れたら良いなと。
↓笑顔を見せる羽田さん
――― 最後に、三つ目の目標を教えてください。
羽田 LIFULL財団っていうのがあるんですけど、そこの事務局長を任せていただいてるんですね。
Well-Being(ウェルビーイング)といって、身体的にも精神的にも社会的にも満たされている状態の実現を目的としているんですけども。
――― ええと、そのLIFULL財団は、具体的になにをしているのですか。
羽田 なじみのありそうな話をすると、”世界の幸福度ランキング”ってあるじゃないですか。
「今年の世界一幸福な国はどこどこです!」というアレです。
――― あまり日本のランキングがよろしくないアレですね。
羽田 ですね。でもあの測定方法って、実はちょっと欧米の文化に寄っているところがあるんです。
たとえば、「最高の人生を10としたときに、あなたは何点ですか?」みたいな質問をされるんですけど、この質問自体に問題意識があって。
――― どういうことでしょうか。
羽田 これ”カントリルの梯子の質問”というんですけど、要は梯子の上に行けば行くほど幸福であるという欧米の人生観からきているんですね。
でも、日本の人生観って”梯子型”というよりは”振り子型”で、人生には良いことも悪いこともあるので「ちょうど良い」ところが一番幸せ、という感覚がある。
――― たしかにそっちのほうがしっくりきます。
羽田 きっとアフリカに行けばまた違う人生観があるだろうし、極論を言ってしまえばひとりひとり違う人生観を持っているわけですよね。
説明が長くなりましたが、この幸福度の測定ということにしっかり取り組んでいくのがLIFULL財団です。
――― その、LIFULL財団を頑張っていきたいというのが三つ目の目標ということですね。
羽田 はい。この財団の代表理事は予防医学博士の石川善樹さんで、彼が獅子奮迅の活躍をみせているので、私は事務局長としてしっかり支援していきます。
幸福度の測定ができれば、それを高める打ち手が見つかりますよね。
それは多くの人のWell-Beingを高めることでもあり、「あらゆるLIFEを、FULLに。」というLIFULLの目指すところに近づくことでもあります。
――― 素晴らしいと思います。ところで羽田さんの三つの個人目標は、全部仕事に絡んでいるのですね。
羽田 そうですね、私の場合、やっぱり仕事がライフワークになってるんですよね。
もしも仕事が住む場所とまったく関係のない状態になったとしたら、茅ヶ崎の海の近くに住ませてもらうことがあるかも知れないので、そのときはよろしくお願いします(笑)
――― もちろん大歓迎です(笑)チームづくりや人生観について考えるきっかけになるお話でした。インタビューは以上です。ありがとうございました。
(おしまい)
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▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
2015年に茅ヶ崎市に移住し、2017年に「エキウミ」を立ち上げる。東海岸商店会の公式サイトの運営や、アクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティング、記事の寄稿も行う(SUUMOタウン「まだ茅ヶ崎に行ったことのないあなたへ」)。