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特別の教科「道徳」指導案

道徳教育論-理論と実践-(14)

2019.06.14 08:49

4、中学校学習指導要領(平成29年告示) 特別な教科 道徳

 道徳科の内容について

                     横浜市立大学非常勤講師 鈴木 豊

学習指導要領解説特別の教科道徳編では、道徳科の内容について、第3章 道徳科の内容、第1節 内容の基本的性格で、次のように書かれている。

 学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の要である道徳科においては、以下に示す項目について扱う。とし、1 内容構成の考え方において、

道徳科の内容について、学習指導要領第3章の「第2 内容」では、上記のように示した上で、各項目(以下「内容項目」という。)を示している。

とし、次のように説明している。

ここに挙げられている各項目は、「内容項目」といわれる。

内容項目とは、3年間の中学校生活において、生徒が人間として他者と共によりよく生きていく上で、学ぶことが必要と考えられる道徳的価値を含む内容を、短い文章で平易に表現したものである。

内容項目には番号が書かれているが、中学校では22の内容項目全てにわたって、中学校3学年の各学年において行うこととしている。

また、内容項目ごとにその内容を、端的に表す言葉(徳目)付記されている。

内容項目は、生徒自らが道徳性を養うための手掛かりとなるものである。

その指導に当たっては、内容を端的に表す言葉そのものを教え込んだり、知的な理解にのみとどまる指導になったりすることがないよう十分留意する必要がある。

指導に当たっては、道徳学習の説明が加えられ、各内容項目を生徒の実態を基に把握し直し、指導上の課題を具体的に捉え、生徒自身が道徳的価値の理解を基に自己を見つめ、物事を広い視野から多面的・多角的に考え、人間としての生き方についての考えを深めることができるよう、実態に応じた指導をしていくことが大切である。としている。

 A 主として自分自身に関すること

[1 自主、自律、自由と責任]

 自律の精神を重んじ、自主的に考え、判断し、誠実に実行してその結果に責任をもつこと。

[2 節度、節制]

 望ましい生活習慣を身に付け、心身の健康の増進を図り、節度を守り節制に心掛け、安全で調和のある生活をすること。

[3 向上心、個性の伸長]

 自己を見つめ、自己の向上を図るとともに、個性を伸ばして充実した生き方を追求すること。

[4 希望と勇気、克己と強い意志]

より高い目標を設定し、その達成を目指し、希望と勇気をもち、困難や失敗を乗り越えて着実にやり遂げること。

[5 真理の探究、創造]

 真実を大切にし、真理を探究して新しいものを生み出そうと努めること。

 B 主として人との関わりに関すること

[6 思いやり、感謝]

 思いやりの心をもって人と接するとともに、家族などの支えや多くの人々の善意により日々の生活や現在の自分があることに感謝し、進んでそれに応え、人間愛の精神を深めること。

[7 礼儀]

 礼儀の意義を理解し、時と場に応じた適切な言動をとること。

[8 友情、信頼]

 友情の尊さを理解して心から信頼できる友達をもち、互いに励まし合い、高め合うとともに、異性についての理解を深め、悩みや葛藤を経験しながら人間関係を深めていくこと。

[9 相互理解、寛容]

 自分の考えや意見を相手に伝えるとともに、それぞれの異性や立場を尊重し、いろいろなものの見方や考え方があることを理解し、寛容の心をもって謙虚に他に学び、自らを高めていくこと。

 C 主として集団や社会との関わりに関すること

[10 遵法精神、公徳心]

法やきまりの意義を理解し、それらを進んで守るとともに、そのよりよい在り方について考え、自他の権利を大切にし、義務を果たして、規律ある安定した社会の実現に努めること。

[11 公正、公平、社会正義]

 正義と公正さを重んじ、誰に対しても公平に接し、差別や偏見のない社会の実現に努めること。

[12 社会参画、公共の精神]

 社会参画の意義と社会連帯の自覚を高め、公共の精神をもってよりよい社会の実現に努めること。

[13 勤労]

 勤労の尊さや意義を理解し、将来の生き方について考えを深め、勤労を通じて社会に貢献すること。

[14 家族愛、家庭生活の充実]

 父母、祖父母を敬愛し、家族の一員としての自覚をもって充実した家庭生活を築くこと。

[15 よりよい学校生活、集団生活の充実]

 教師や学校の人々を敬愛し、学級や学校の一員としての自覚をもち、協力し合ってよりよい校風をつくるとともに、様々な集団の意義や集団の中での自分の役割と責任を自覚して集団生活の充実に努めること。

[16 郷土の伝統と文化の尊重、郷土を愛する態度]

 郷土の伝統と文化を大切にし、社会に尽くした先人や高齢者に尊敬の念を深め、地域社会の一員としての自覚をもって郷土を愛し、進んで郷土の発展に努めること。

[17 我が国の伝統と文化の尊重、国を愛する態度]

 優れた伝統の継承と新しい文化の創造に貢献するとともに、日本人としての自覚をもって国を愛し、国家及び社会の形成者として、その発展に努めること。

[18 国際理解、国際貢献]

 世界の中の日本人としての自覚をもち、他国を尊重し、国際的視野に立って、世界の平和と人類の発展に寄与すること。

 D 主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること

[19 生命の尊さ]

 生命の尊さについて、その連続性や有限性なども含めて理解し、かけがえのない生命を尊重すること。

[20 自然愛護]

 自然の崇高さを知り、自然環境を大切にすることの意義を理解し、進んで自然の愛護に努めること。

[21 感動、畏敬の念]

 美しいものや気高いものに感動する心をもち、人間の力を超えたものに対する畏敬の念を深めること。

[22 よりよく生きる喜び]

 人間には自らの弱さや醜さを克服する強さや気高く生きようとする心があることを理解し、人間として生きることに喜びを見いだすこと。

道徳教育における、「四つの視点」について

 「第2 内容」では、指導すべき22の内容項目を以下の四つ点に分けて示している。

 四つの視点から内容項目を分類整理し、内容の全体構成及び相互の関連性と発展性を示すものである。

  A 主として自分自身に関すること

  B 主として人との関わりに関すること

  C 主として集団や社会との関わりに関すること

  D 主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること

以上の、四つの視点である。

道徳の時間において自己の問題として振り返るとき、自己の在り方は、この四つの関わりの中で生存し、その関わりにおいて道徳性を発現させ、身に付け、人格を形成する、と説明している。

「A 主として自分人身に関すること」とは、自己の在り方を自分自身との関わりで捉え、望ましい自己の形成を図る内容である。

「B 主として人との関わりに関すること」とは、自己を人との関わりにおいて捉え、望ましい人間関係の構築を図ることに関する内容である。

「C 主として集団や社会との関わりに関すること」とは、自己を様々な社会集団や郷土、                    国家、国際社会との関わりおいて捉え、国際                    社会と向き合いながら平和で民主的な国家や                    社会の形成者として必要な道徳性を養うこと                    に関する内容である。

「D 主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること」とは、自己と生命や自然、美しいもの、気高いもの、崇高なものとの関わりおいて捉え、人間としての自覚を深めることに関する内容である、と書かれている。

道徳科授業における内容項目の取扱い方は、一般的には年間指導計画において、1時限ごとに22の内容項目が、振り分けられた形で主題が組まれている。

1時限の道徳授業において1つの内容項目を扱い主題が設定されるのだが、次のような記載もされている。

 指導内容を構成する際のよりどころは、基本的には22の項目であるが、必ずしも各内容項目を一つずつ主題として設定しなければならないということではない。

内容項目を熟知した上で、各学校の実態、特に生徒の実態に即して、生徒の人間的な成長をどのように図り、どのように道徳性を養うかという観点から、幾つかの内容を関連付けて指導することが考えられる。と書かれている。

この考え方は、いくつかの内容項目を小単元とし、それらをまとめた大単元として関連付けてた指導等も考えられよう。

また、「各学校における重点的指導の工夫」という文章がある。

「重点的指導とは、各内容項目の充実を図る中で、各学校として更に重点的に指導したい内容項目をその中から選び、多様な指導を工夫することによって、内容項目全体の指導を一層効果的に行うことである。」と書かれている。

一般的には、ひとつの内容項目が年間の授業時数の中で複数回とられることや、ひとつの内容項目を何回かに分けて行っている。

重点的指導を行う内容項目は、各学校の学校教育目標や道徳教育における目標、重点目標等にあたる内容が多い。