天干数理の解密
天数の極数9と地数の極数10とでは地数の方が大きく、天数に勝るような錯覚に囚われるだけでなく、これに固執すると「天の十干」概念の説明が難しくなります。《易》が宇宙の理論を説いて、かつ天干を基礎としながら、地数の極数10との整合を如何にとるか?これまで誰一人説明できなかった難問がそこに存在します。
しかし、拙者はこれこそが「暦に隠された暗号」と直感したのです。これまでの理論を精査してみると、一つのことがわかります。それは「十干の10と数字の10とが根本的に異なる概念」ということです。数字は単なる数列として存在します。シリアルな配列をもって数字を構成していますが、十天干の10は循環数理であり、スパイラルな配列を以て論じるべきものです。つまり、十天干の10とは「循環の基数」となるべき数で、古くから無数の典籍の中で説かれた「極数」という考えとは大きく異なり、円を描く数配列(循環配列)なのです。 このことから、天干の「十」と数字の10とは全く性質が異なる別物でなければならない事情が見えてきます。さて、拙者は《易経》「繋辞伝上」の『天一地二、天三地四、天五地六、天七地八、天九地十』の中にある数理が隠されていることも発見しました。それは、天数と地数の循環概念を創り出す数理です。最後と最初に位置する極大数と極小数を加算した時、つまり、天地それぞれで大小数を包含する数を加算して作る時、なんと天数は(天九)+(天一)=(天十)、地数は(地十)+(地二)=(地十二)になって、奇しくも、十天干と十二地支の基本数ができるのです。この加算は極大と極小を繋げる意味を含んだ算法で、ここから次のような円環配列の数理が導かれるのです。
●天1(生数・因数)+天9(成数・果数)=10・・・・・・天の生成と因果の循環を表す10。
天数が循環する時、極大の9を越えて陽極まり、物極必反から陰=地数へ転じる理がここに見えるのです。このように天数(奇数)同士を加算すると地数(偶数)になり、つまり、天から地が生まれ、天から天が生まれない易理も理解できるのです。
●地2(生数・因数)+地10(成数・果数)=12・・・・・・地の生成と因果の循環を表す12。
地支の循環を代表する地数12でもあります。地数の和はどこまでも地数で、決して天数(奇数)へと変われない理がここに示されます。 これら数理から、天数(陽・幹・奇数)が極まり地数(陰・枝・偶数)を生じることができても、他方で、地数(陰・枝・偶数)が極まっても天数(陽・幹・奇数)を生じることができないことを表します。これは枝が生長しても決して幹に成れない事実と符合するものです。