打鍵について
打鍵という言葉は考えてみると実は不思議な言葉です。人によって感じ方も違うかもしれません。でもピアノを弾く日本人には極めてなじみの深いよく使う言葉です。
かく言う私もよく、打鍵、打鍵と言ってしまいます。
打鍵ですからその言葉の意味は、鍵盤を打つ、叩く。乱暴にいうと、ぶったたく、ぶつ、つく、ということも含まれるかもしれません。
ピアノの音が鳴るのは中に張ってある弦が鳴るからです。弦が鳴るためにはハンマーが弦を叩きます。これを打弦と言います。
この打弦という言葉は、ほかに言い換えようがありません。まさにハンマーが弦を打っているのです。なのに打弦という言葉は、あまりなじみがなく打鍵と言ってしまいます。
ここで大いなる疑問がわきます。
ハンマーが打弦して音が出るのに鍵盤を打ったり、叩く必要があるのだろうか?
指が鍵盤を打つためには、高く振り上げる必要があります。
実際にやってみてください。
人差し指を高く振り上げて勢いよく打つ。指を上げるのも振り下ろすのも結構力が必要で続けていくと相当疲れると思います。
中指は中指だけ上げようと思ったら他の指を押さえつけなければならず大変です。薬指はさらに大変です。
小指は振り上げるのは楽ですが弱そうです。
いずれにしても鍵盤を打つと打った打鍵音がどうしてもなってしまいます。
このように指を高く上げて振り下ろす奏法をハイフィンガー奏法と言います。
明治の文明開化で西洋に追いつけ追い越せと日本政府は西洋文明を取り入れるのに躍起になっていましたがその中でもピアノに対する熱は相当だったようです。ハイフィンガー奏法もどうやらその頃、輸入されたようです。
有名なピアニストでは大正・昭和に活躍した久野久さん、あの中村紘子さんもジュリアードに留学して徹底的に直されるまでハイフィンガー奏法で弾いていたということです。
久野久さんにおいては指の振り上げを楽にするため手首をうんと下まで下げて弾いていたという記録があります。なるほど確かにこうすると指の振り上げが楽ですが手首にも指にも力がこもった状態となりピアノを弾くということが相当過酷な修行のようなものになってしまいます。
さて現在ではハイフィンガー奏法はいいところがなく悪影響が大きいということで見直されてきています。またそう言っているけどハイフィンガー奏法はそんなにダメでもない、という意見もいまだにあります。いろいろ混乱しているのです。それゆえに初心者は、習う先生、習う先生で言うことやることが違いどれが正しいのか分からないという悩み事をネットで見ることが多いです。
ピアノの代表的な奏法にはハイフィンガー奏法や重力奏法などがあります。この項ではこれらの良し悪し、具体論について詳細を述べるのは避けたいと思います。(すでにハイフィンガーは悪いって言っているかも)
しかし一つの提案として言葉と実際に行う動作の整合性は高めた方がいいと思います。(何とか理論的に説明しようとしているんだけどそれあっているのかなぁという説明が多い気がします。)そうした方が混乱を防げるはずです。
さてここまで来て打鍵とよく同一線上で語らるタッチについて考えてみたいと思います。