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崖の上のボロ庵宿坊ものぐさ帖

徳川2代目の秘訣

2019.06.15 16:27


徳川2代目の秘訣




徳川の2代目将軍に決められた秀忠は、当初、なにかと父家康と比較されて神経が参るような毎日だった。

そんな折、小倉城主、細川忠興が江戸城に登城してきた。

あの細川ガラシャの旦那様である

世渡り上手に長けた忠興は、父の幽斎にひけをとらぬ名2代目の名が高かった。

そこで秀忠は話を聞きたいと思い、忠興を部屋に呼んだ。


「どのようにすればあなたのような名2代目になれるか、その秘訣を伺いたい」


秀忠は率直に訊ねた。

 

それに対して忠興は、

「秘訣など別にございませぬ。わたくしはただ父の教えを守っているにすぎませぬ」


幽斎は全国に名将誉れ高い…


「ではその教えをお尋ねしたい」

謙遜する忠興に秀忠は食い下がる。


忠興は秀忠の心中を見通し、やんわりとこう答えた。


「父幽斎はこう申されました。家中は重箱である。そしてその重箱に蓋をする時は必ず丸い蓋をせよと、そう教えられました」



「重箱に丸い蓋とな。四隅が空きますな」



「ご賢察、さすがは徳川2代目。重箱にピッタリと蓋をすれば、中のものが息苦しくなる…そういうことでございます」


(そうか重箱は天下か…)

秀忠はニッコリした。


忠興はなおも続けた。


「しかも父幽斎は、重箱を掻き回す時には決して楊枝を使うな、スリコギで掻き回せと申しました」



「なるほど、丸い蓋と同じですな…」


秀忠はそう言って満足げに頷いたそうな。



重箱は国であり、会社であり、家庭であり、突き詰めれば、一個の人間でもあろう。


長たる者、息苦しくならぬようユトリをもたせ、突っつき掻き回す時もスキを与えるが如し。


それは一個人の生き方にも通ずることであろう。