色弱では消防士になれない?東京消防庁に確認しました
私がいくつか所属させていただいている議員連盟の中に、カラーユニバーサル推進議員連盟というのがあります。
都議就任直後から参加させていただいて、各種勉強会やヒアリングなどを行いつつ、各都道府県でカラーユニバーサルデザインが進むように様々な質疑や提言を行なっています。
色覚異常とは先天的なものと後天的なものがありますが、色の見え方が世間一般の他の方とは違うように見えるという言わば「見え方の特徴」のことです。日本人では男性で20人に1人、女性で500人に1人という確率で何らかの色覚異常がある人がいると言われています。男性の方が数が多いとされていて、1クラスに1人もしくは2クラスに1人ほどいるという計算になります。
民間の行う小学生や中学生対象の「将来なりたい職業」のランキングで、「消防士」は公務員やパイロット等も抑えて上位の常連です。それほどに身近で目にすることも多く、街を守る志士として憧れられている職業だということがわかります。
この、消防士の採用試験に、色覚検査を求めるかどうか?これに、全国の消防でかなりばらつきがあるのが現状です。
2017年秋から、東京消防庁や稲城市を始めたとした独自の消防本部を持つ東京都の区市町村に色覚検査の有無と採用に影響するかどうかを調査をしました。その内容をまとめて、カラーユニバーサルデザイン推進ネットワークの調査として最終的に上がってきたのは、全国の36都道府県の532消防本部などのうち、215消防は色覚検査を実施せず、色覚異常があっても業務に支障がないと回答しているという現状でした。一方、色覚検査を求めたのは317消防で、うち261消防は採用に影響すると回答しています。
色覚異常が業務に支障があるので採用の可否に影響するという消防と、
業務に支障はないので採用の可否に影響しないので検査も実施しないという消防に分かれているのです。
ちなみに、東京消防庁は検査を実施しています。これについて、今回奥澤都議から文書質問で色覚検査の必要性をどう考えているのかを質して頂きました。
東京都が一つの基準にしているのは「運転免許を取れるかどうか」という点であるようです。
オフィシャルホームページによると、色覚の基準は、消防吏員としての職務遂行上、重大な支障がないこととしており、支障がない例としては、赤色、青色及び黄色の色彩の識別ができることが挙げられる、とあります。
つまり、自動車運転免許が取得できていれば問題ないとされるという考えであることが明らかにされています。
この件について担当の方と幾度となく話をする中で、こういったルールを定めている方達が色覚異常の当事者ではないことが多いため、そもそも「色覚異常とは何か」という点の理解が様々です。
色が見えていないということは、炎や煙の色が見えないのではないか、
信号機の赤や青がわからなくて 運転ができないのではないか、
怪我をしている人から流れている 血の色が見えないのではないか、
というような推測からくる色覚異常への誤解がやや散見されます。
色覚異常があっても、運転免許試験に合格している方が多々いることはあまり知られていなかったり、
色覚異常があっても、人の命を預かる職業である医師免許を取ることができる(医師は色覚が欠格要件になっていないです)ことも知る人は少なかったり、
そもそも色覚異常の人に炎や煙がどう見えているか、確認した人がいるのでしょうか。いるとしたら、この考え方が試験に入ってくることはなかったのではないかと思います。
当事者でもある、カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)の方には大変お世話になり、色覚異常は見え方の個性であるということや見え方は違うものの運転や普段の生活に基本的には支障はないが、例えば学校でのチョークの色が見えにくい、折り紙の色の識別がつきにくいという生徒さんには配慮が必要であるというような話も伺ってきました。
今現在小学生のお子さんたちは学校で色覚検査を受けないため、自分が色弱があるということを知らないまま大人になる場合もあります。そして、大人になって消防や警察の試験を受けるときに、初めて色覚検査を受けて自分が色弱であるということに気づく方もいるということです。
学校での的確な配慮を受けつつ、成長した暁には資格や採用試験などで生徒さんが根拠のない判断基準で差別されるようなことがないように、今後も取り組んでゆきたいと思います。
ちなみに東京消防庁も話し合いを重ねるごとに、出来るだけわかりやすい発信を、と消防採用試験のホームページを改訂してくださっています。最新版はこちらです。
もともと狭き門でもある人気の採用試験ですが、ぜひ総合的に能力の高い消防吏員の採用が進められるように、期待して注視していきたいと思います。