平織り "Tessellations"
「平織り」とは、正方形や正三角形などの格子状の折線を基準にして、平面(もしくは半立体)上に無限に広がる模様を「織り」あげた折紙作品の総称です。
平織りの大きな魅力のひとつに、光を透かした時の模様があります。
上の作品に表裏からそれぞれ光を透かすと、下のようになります。
表から透かした時と裏から透かした時で模様が全く違って見えるのが面白いですね。
模様を半立体的にすることもできます。
多くの平織り作品は切り込み無しの紙1枚で作られますが、切り込みを入れないという条件で作ることのできる模様には制限があります。例えば、下図(a)のような模様は折ることが出来ます。凹多角形は一見表現するのが難しそうですが、(b)の赤線で示した正方形の各辺から鈍角のカドを出して倒すことで実現可能です。
では、(c)の風車のような形はどうでしょうか。(b)と同じように補助線を入れると、正方形の1辺から2つのカドを折り出さないといけないことがわかります。
これは2つのカドの間にどうしてもヒダができてしまいますから、(c)のような形にはなってくれません。
下図(e)の青線正方形から赤く示した変則的な四角形を出して折りたたむことも考えられますが、角度αが180度未満であることから風車の内側にヒダを入れずに2つのカドを共存させることはできません。
従って、このアイデアでも(c)の形は切り込み無しでは実現できません(もし天才的なアイデアを思いついて実現した人がいたら教えてください)。
この「切り込み無しでは実現不可能な(であろう)模様」の存在を示したくて創作したのが
下の作品です。
この展開図を折り畳むことでできます。黒い細線が切り込みになっています。
切り込みを入れることで実現可能になる平織り作品の先駆けは、藤本修三さんの「あじさい花壇」だと思われます。切り込みから紙を引き出すことで裏の色を出した表現技法は傑作です。誠文堂新光社から出版されている「あじさい折りおりがみ」に収録されていますのでぜひぜひご覧ください。
切り込みを入れたからこそ実現できる特殊な平織りの世界がさらに注目を集め、発展していくことを願っています。