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本日の空模様は、、、。

6.21

2019.06.20 15:00


俺は、静かな夜が欲しかった。 



 喧騒で目が覚めた。 

下の階からだ。 

今となってはいつものことだ。 

いつからなのかは忘れてしまった。 

今夜はやけに喉が乾いている。 


 一杯だけ。


 寝床から抜け出す。 

階段をひとつ降りる度に罵声が大きくなる。 

言葉の1つ1つが鮮明になってくる。 



 あんたの浮気がどうとか、 

いくら貢いだとか、 

前妻との間に生まれた娘が恋しいかとか、 

借金まみれだとか、 

こんな生活費じゃ生きていけないだとか、 

早く新しい仕事を見つけろとか、 

金が何より一番大事だとか、 

全部投げ出して帰国してやるとか、 

辛いとか、 

苦しいとか、 


 子供なんか作らなきゃよかったとか。 



気が付いた時には、一歩足が前に出ていた。 

それまでの罵声が嘘かのようにピタッと止んだ。 

構わずキッチンへまっすぐ向かう。 

グラスを取る。 

冷蔵庫を開ける。 

お茶を注ぐ。 

ゴクゴクと飲み干す。 

お茶を元の場所に戻す。

 冷蔵庫をしめる。 

グラスを洗う。 

そして上の階へ戻る。 


誰とも目が合う事はなかった。 

罵声だけが消え去っていた。 



自分の部屋の前まで戻ってきた。 

喧騒が止んだからか、隣の部屋からすすり泣く声が聞こえた。 


「私のせいで二人は結ばれてしまったの、ごめんね」 

気配り上手で不器用に笑う彼女は、 

「私、要らない子なのかな」 

そう言って啜り泣いていた。  


彼女が長女であって、長女でないことを知ったのは、思い返せばあの夜だ。 

 

その日から彼らの態度はあからさまに変わっていった。 

躊躇なく物を投げ、

刃物を向け、 

家を追い出し、

家を放り出し、 

母からは罵倒、 

父からは無視、 

挙句には、たった一要素を持って人としても扱われなくなった。 




 それでも俺は負けたくなかった。 




あれから何日が経っただろう。 

家族との縁を切ってから、夜は随分静かになったもんだ。 

そう、俺はこんな静かな夜が欲しかったんだ。 

勝ち取ったのだ。 


でもどこか寂しい気持ちがするのは何故だろう。 

「情なんてクソほどの役にも立たねえのに」 

遠慮がちな舌打ちが静かな部屋に響いて、 


 やがて歯軋りが小さく狭い部屋を満たし始めた。 



 あの日の未来になった静かな夜にて。




自分が幸せなのか、不幸せなのか。

今の自分は何の迷いなく、答えを出せる事に気が付いた。


それは忘れてはいけない過去と、

それに向き合ってきた自負と、

その延長に自分がいることを自覚しているからだ。


でもその下に

犠牲となった出来事や

失ってしまった代償があることを

俺は忘れちゃいけない。


正確には忘れられないんだと思うけど。

この歯軋りがその証拠だ。



後悔はしていないが、

後ろめたさはある。


そんな23歳を迎えて、俺もまだまだだなって。

まだまだ伸び代があるんだなって。

そう思う事にした。




もっと大きく飛躍する一年にしよう。