【北岳】祝・南アルプス開幕!今年も変わらないあの場所へ【2019.6/21.22】
北岳肩ノ小屋で働いていたスタッフ綾井にとっては、なんといってもこの開山初日はお祭りみたいなものなのです。偶然に開山初日の21日(金)が休みだった綾井は、考えるまでもなく登山バスが出ている芦安駐車場へ車を走らせていました。
開山初日といえ平日の金曜日。そこまで混まないだろうと始発の時間ギリギリに来たところ、タクシーはすでに満員。バスに切り替えます。ご存知の方が多いとは思いますが、バスの時間の少し前に発車するタクシーに乗れば、広河原までバスより早く・楽に乗ることができます。
さてバスに乗ろうかと移動しようとすると、南アルプスをこよなく愛する友人・知人にさっそく遭遇。今回は日帰りでサクッと登ろうと軽量装備で来たのですが、すぐにみんなとゆっくり登山に変更となりました。
広河原到着。北岳の頂もしっかりと見ることができました。つり橋を渡って登山開始です。
今回予定していたルートは白根小池小屋を経由する「草すべり」ルート。しかしこの日の連れ合いとなったメンバーは大樺沢(おおかんばざわ)の二俣から小太郎尾根へ抜ける「右俣」ルートをチョイス。沢沿いなので残雪が少し心配でしたが、みんなと行きたいので右俣コースへ突っ込みます。
即席パーティの中で1番付き合いが長いのがこの赤いジャケットを着る田口さん。肩ノ小屋で働いていた時の先輩であり、昨年K2登頂を果たした山の先輩でもあります。
日帰り予定の綾井に比べ、今日のお仲間はテント泊&大宴会装備。80Lクラスのザックがパンパンになる程に荷物を持ち上げています。
たまらず荷物を放り出す小池さん。何度も来ているルートとはいえその重荷は堪えますね。ここで軽荷の綾井が小池さんの荷物からクーラーボックスを受け取りました。
中身は肉・ソーセージ・冷凍チャーハン、そして肉…酒と肉のために身を削る見上げた宴会根性。それに応えるべくクーラーボックスをサコッシュスタイルで持ち上げます。
二俣の下部から雪が出てきました。危ない傾斜に雪はついていないのでノーアイゼンでオッケーでした。ストックも持ってきて良かった。不安な方は軽アイゼンなどを持って行ってくださいね。
暑すぎず寒すぎず、順調に高度を上げて二俣に到着。重い荷物を背負ってへばっているグループが到着するのを見届けて、すぐに尾根へ向かいます。どうして帰りのバスの時間も気になりますからね。
こちらが通称「雪田」。例年遅くまで雪が残るところで、近くなった北岳を見上げるのにいいところです。少し雲がかかっていましたが、やっぱりここから見上げる北岳は素晴らしい。
雪田からもう少し登れば北岳山頂から北へ延びる小太郎尾根に合流です。その直下も雪が残っています。ステップも切られていたのでここも問題ないでしょう。さあ稜線の向こう側の景色はどうなるか、あと少しです!
南アルプスの女王、仙丈ケ岳が姿を見せてくれました。甲斐駒ケ岳は雲の中でしたが、小太郎山へ続く稜線も見る事ができました。
何度何度も来ているのに、小太郎尾根に乗るとテンションが上がります。まだまだ登山歴の浅い綾井は、より多くの山に登りたいという気持ちを持っているのですが北岳は特別。毎年夏と冬に各一回以上は行きたくなる、思い入れの強い山域です。
小太郎尾根は例年7月にはハクサンイチゲやミヤマキンバイのお花畑が登山者を迎えてくれる。今回の山行では少しではあるが気を早くした高山植物たちが僕たちを迎えてくれた。北岳では雪解けとともにキタダケソウが開花し、遅れて他の高山植物が花をつける。
小太郎尾根はいつも気持ちが高まってつい歩くスピードが上がってしまいます。それはもうすぐあの場所に帰れるから。
「北岳肩ノ小屋」到着。山を深く知る事ができた、僕の青春の場所です。
この日に一緒に登ったメンバーといつもの小屋のご主人やスタッフさんと記念撮影。いつも笑顔で迎えてくれる素敵なところ。
小屋番さん「今日は泊まっていくら」
綾井「いやー、日帰りの予定なんですよ」
小屋番さん「泊まってけし」
綾井「はい😇」
ということで意思の弱い綾井は肩ノ小屋に泊まり、明日はここからエルクに行く「エクストリーム出勤」が確定することに。そりゃあこんなに仲間がいて泊まりたくない訳がないですよ。
泊まることになったとはいえ、今日中に北岳山頂とキタダケソウを見ておかなければならない。同じく次の日の朝一に下りる田口さん、そして上写真奥の青い帽子を被った今回のパーティで体力ナンバーワンの田邊さんと山頂へアタックする。あれだけの荷物を背負っても、まだまだ元気な田邊さん。何を隠そう甲州アルプスオートルートチャレンジというトレイルランニングレースの実行委員の1人であり、自らも山を駆け回るトレイルランナーでもある。荷物から解き放たれた田邊さんが本気を出せば僕は置いていかれるのは間違いない。
⬇︎甲州アルプスオートルートチャレンジについてはこちら⬇︎
北岳肩ノ小屋から山頂へは、少なくとも50回以上は通っているだろう。ほとんどは登山口からではなく小屋からであるため誇れるものではないが、この道は僕にとって散歩道。空身で向かいました。
すっかりガスに包まれながらも無事に山頂へ到着。濃いガスに包まれていても、ここから見えるであろう山を指をさして「ボーコンの頭のケルンが見えるね」「今日は見晴らしがいいから大無間山までばっちしだ」など言い合う3人。山頂にいた他のパーティにとって僕たちは大変気持ち悪かったに違いない。しかし何も見えないからといって落胆するのではなく、こうやって慰め合うのがツウな登山者である。
ついでに雪の上に寝転んでみる。「太陽が眩しいぜ」と言いながら雪の上で日光浴するのもツウな登山スタイルである。
いい加減にキタダケソウの様子を見にいこう。山頂から南へ下り、吊尾根分岐から下のいつものところへ。
今年も会えました、北岳でしか見ることができない固有種「キタダケソウ」。雪解け後1番に花をつけて、高山植物最盛期の7月中旬には姿を消してしまう。まるでハクサンイチゲの群落に埋もれてしまわないように、可憐な姿を早く見せて散っていく儚い花である。
近年積雪量の減少により、バス開通前に最盛期を終えてしまう年が増えてきました。しかし今年はバス開通直後のこの時に見頃を迎えていました。⬇︎昨年の様子はこちら⬇︎
群生地にはロープが張っているので、必ずその内側に足を踏み入れないようにして鑑賞しましょう。稀少な植物や生き物、道を守るために登山者それぞれの心がけが大事です。
さて帰ってあとは宴会だ!
呑んで呑んで
小屋の夕食出しを少し手伝って
呑んで呑んで、おやすみなさい…
翌朝目覚めると宿泊者が一斉に外に出始めている。小屋の主人である森本茂さんが「泊まって良かったね」と言い、他の登山者と同じく外に出てみる。
本当に泊まって良かったです。何度も何度もここから日の出を見てきたけど、何度もそしてこれからも見ていたい鳳凰山の後ろから現れるご来光。稜線で泊まるからこそのご褒美。
この日泊まった登山者もカメラを向けてこの瞬間を噛みしめる。自然の美しい光景に感動する、シンプルだけど都会では感じることのできないこと。これだから登山はやめれない。
ここからはエルクの出勤に間にあわせるべく一気に下ります!朝は昨日見えなかった甲斐駒ケ岳を見ながら、田口さんと小太郎尾根を下っていきます。
小太郎分岐のところでもう一度北岳を振り返る。後ろ髪を引かれる思いですが、現実へ一旦帰ります。
下山は草すべりルートをチョイス。上の写真の御池小屋上部にはまだ雪が残っていました。その後無事に広河原へ下山。ちゃんとエルクの開店前に間に合うことができました。
エクストリーム出勤を完遂したその日。早くも多くのお客様に残雪状況や花の開花情報をお伝えすることができました。山に入り、その山の情報と装備の相談をする。山のフィールドに恵まれている山梨の登山用品店であるからこそ登山という遊びを仕事に活かすことができる。これからも多くの山に入って、お客様に山の情報と遊び心をお伝えしていこうと感じた1日でした。
でも夕方には眠くて半目になっていたのはお許しください!