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7ZELが語る、絵を見て絵を描くな ~絵を通して学ぶ世界の見かた~

2019.06.25 10:23

SSS by applibotではアプリボットやサイバーエージェントグループのクリエイター向けに、SSSのメンバーが登壇するセミナー「SSSスクール」を定期的に開催している。

今回は7ZEL が登壇した講義「絵を見て絵を描くな ~絵を通して学ぶ世界の見かた~」の内容を紹介する。


・前回の記事

米山舞が語る、キャラクターが動き出す!生きている絵のつくりかた

https://applibot-pr.amebaownd.com/posts/6240917

7ZEL

フリーランスで、キャラクターデザインやコンセプトアートなど幅広く制作活動を行う。代表作は「ポケモンカードゲーム」「ポケットモンスター サン・ムーン」のキャラクターデザインなど。

・プロフィール、その他イラスト作品はこちらから

https://sss.applibot.co.jp/member/7zel.html

戦略的に絵柄を描きわけるメリット

まず自らの絵を例にあげ、絵柄の描き分けについて語った。

上記の絵に描かれた4つのキャラクターは全て同一のデザインだが、絵柄と描画技法はそれぞれ異なっており、絵柄自体に固有名詞を与えている。

そうすることにより、

「あの絵とこの絵は同じ絵柄だったのか」と絵をよく見てくれているファンに楽しんでもらえたり、

「その時々でただ描きたいものを描いているわけではなく、それぞれが文脈の元に描かれている」とリテラシーを深めてもらうことができる。

また、どの絵柄がどの程度反響があるか、どんな層にどういった部分が人気なのかを分析し、今後の制作に活かしているという。

絵柄は自分が今置かれている環境・状況をベースにし、相対的に縛りを決めていくことが大事だと言い、

例えば、ライトノベルの挿絵のイラストレーターになりたい場合は、”ライトノベルの絵のセオリーに則る”という縛りが生まれる。

7ZEL自身は「ポケモン案件」に関わっていることが一つの縛りで、そうした仕事や身の回りの環境を鑑みた上で絵柄・画法を絞っていく事により、

対外的にも合理性の伴ったスタイル構築を目指していく。

人生におけるあらゆる面から絵柄は決まっていくものだが、自分にとってナチュラルな方向性を選び取ることも戦略性と同様に大切だと語った。


人の心に刺さる作品をつくるために

これ以降は事前に参加者から募った質問群に回答していくかたちで講義が行われた。

「7ZELさんの絵のように人の心に刺さる絵を描くためにはどうしたら良いか」という質問に対して、

「僕の絵が人の心に刺さる絵だと思ってくれているのであれば、質問されたあなた自身の心に刺さっている証拠です。自問自答してもらうのが一番早い」

と、人の心に刺さる絵はそれを見る者の感性が一番の基準になっている、と前置きした上で次のように語った。

概ねの場合、人の心に刺さるかどうかは三大欲求など人間の本能的な部分に準拠していることが多いため、本能にストレートに訴えかける絵を描くことは一つのネックだという。

例えば、少女の絵はわかりやすく心に刺さるモチーフとしてグローバルに流通している。なぜなら、少女とは「生と死」の代名詞だからだ。

女性は人生のうち少女でいる期間が限られ、儚さの象徴でもある。

儚さ、つまり一定の状態を留めておけないものに対して、多くの人が心を掴まれる。

なぜなら人間は永遠に生きられず、生命活動的に儚い自分自身を肯定し、種として後世に残したいという欲求を持つからだ。

儚さが焼き付けられた絵は”永遠そのもの”の顕現なのだ。


誰もやっていないことに敢えて挑戦する、尖った絵作りの方法とは?

特徴的な絵を描くポイントとしては、”尖った”要素を入れることだという。

尖っていることとは、端的に言ってしまえば「人がやっていない」ということだ。誰もやっていないことをやれれば簡単に目立つことができる。

例えば、「最近は○○というアニメ作品が人気であるとか、この絵柄が流行っていて、誰もがこぞって描いている」といった大衆的な時流があるとして、

そうしたトレンドに反し、敢えて逆行した絵を目指すと、印象的な絵作りにはなる。

制作時の資料集めに関しても、流行っているものを資料として集めず、なるべく見向きもされなそうなものへの注目を心がけること、と語った。

とは言え、目立つだけであればこれらが最善策だが、絵の要素の全てが目新しさで埋め尽くされてしまうと、たとえ目立ったとしてもスルーされてしまいかねないという問題も。

基本構成はありふれた表現にし、一部に崩しの要素を混ぜることで、間口を広く保ちつつ目立つ要素に視線誘導を促すことが可能となる。


普段どんなものからインプットしているのか?

「普段どんなものからインプットして制作に生かしているのか」という質問に対しては、「なにをインプットするかではなく、自分がなにをインプットしやすいのかを第一にする」と語った。

特にインプットのしやすさは、自身の嗜好はもちろん、その日の感情に大きく左右されるため、その時々で自分のテンションに合ったカテゴリーにアクセスしやすくする環境作りが重要。

落ち込んだ気持ちのときに無理に明るい曲を聴くのではなく、暗い曲を聴いたりと、そのときの気持ちに正直になることがインプット効率を上げることに繋がると語った。


世界が全て茶番に見える…俯瞰したものづくり

自分という精神は「イラストレーター」ではなく、「プレイヤー」だと語り、常に俯瞰して一つ上のレイヤーから世界を見ていると語った。

そうすると、どんなシリアスな場面においても遊びの盤面、茶番に見えてくるため、動揺することも減り、心に余裕が生まれる。全ての体験は本来、精神領域を侵食しないということだ。

絵の制作においても同じく、プレイヤーとしての自分がRPGのゲームのキャラクターを育てているようなものだと言い、「そろそろこの呪文を覚えさせようかな」「上位魔法はまだ早いかな」と俯瞰しながら自分に絵を描かせている。


非日常を大切にしていく…制作に対しての考え方のルーツ

「どうしたら7ZELさんのような独特な物事の捉え方や考え方ができるのか」という質問に対して、

自身のことを独特とは感じないが、ひとつ言えるのは非日常的なことが起こった瞬間を大切にしていくことで、今のような思考に変遷していったと語った。

自分が面白いと思える瞬間は、非日常的なことが起こった時なので、その瞬間をよく観察し、自らが世界をどう捉えているかを絵なり考え方なりに落とし込んでいくと良いという。

それは、日常の中で浮かんだふとした感情や疑問でも良く、

例えば「コンビニで売っているおにぎりと、誰かの手作りおにぎりはどう違うのか」と考えを巡らせたとする。

一見そこに大した差が無いような気もするし、普通は考える必要も無いかも知れない。

が、考えないのが日常であれば、敢えてそこで考えてみるのはそれだけで非日常だ。

コンビニおにぎりよりも手作りおにぎりの方があたたかみがあり美味しく感じるのかも知れないし、

もしくは、コンビニおにぎりの方が添加物や包装の点で優れており、長期に渡り美味しさを保てるのかも知れない。

そういった日常の中で感じた、ある種の発見や違和感といったものを蓄積し、ストックしておくこと。そうしたルーチンがやがてはオリジナルのロジックを生み出していく。

また、なるべく常識に縛られないよう努める癖をつけると良いという。

人間は多かれ少なかれ常にルールに従って生きているので、無意識に色々な思考・感情を押さえ込んでしまっているという。

ものを投げたら落ちる、ものがぶつかったら痛い、などの物理法則をはじめ、社会常識や法律など、この世に溢れる様々なルールの支配下にあるのが我々人間だ。

更に言えば肉体(人格を含む)というフォーマットにすら縛られている。

つまり、ルールとは日常そのものであり、ルール外である非日常的な行為の中に普段は及ぶことのない感情や思考に辿り着く可能性があると語った。


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SSS by applibotでは今後も定期的に社内セミナー行っていく予定だ。

次回は「League of Legends 2018 animation PV」のキャラクターデザイン、アニメ「ソウタイセカイ」キャラクター原案などを手がけたPALOW.の講義を紹介する。


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