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ダー君が戦闘会をする前の天界のちっぽけな話

2019.06.28 12:40

ある日の天界

ここ最近天界で主様と神の使い統括のユウとクダラは何かを話しているようだ。私たち神の使いはわからないがそれでもあの三方が話してるんだ。よほど重要なプロジェクトなのだろう。どんなものなのか不安だ。いつも通り人間たちの観察をして、のんびり仲間たちとお話をしてたい…そんなことを考えながら神の使いの宮殿から続いてる廊下を歩いてると、向こう側から見覚えのある緑の髪の青年が歩いてくる。

私は緊張した顔を紛らわすため自らの表情を少し”操作”をした。

ほーらいつもの笑顔が素敵なミーアちゃんだ。そうして私は仮初の笑顔をくっつけたまま、彼に飛び込んだ。

「セーーーリア!!!」

どすっと音がする。

「うぐっ!!!」

…ちょうどお腹に膝が当たってしまったようだ

「あら…大丈夫?」

「〜!!!あら…じゃねえええよ!!!なんなんだよ!!いってぇーじゃねーか!!!」

ぐわっと大声で叫ぶ。彼はとても口は悪い。でもとても正直で嘘が苦手なことを知っている。だから彼は生前の人達のように陰口も言わないし素の彼のままで接してくれる。そんな彼が私は友人として好きだ。

「あはは〜!セリアってどんくさーい!」

「んだとてめぇ!!!お前が飛びついてきたんだろうがよ!!」

またも怒る。けどその表情は本気の怒りではないことはわかる。

「そうだっけ〜?」

「そうだよ!ちっきしょう…いってぇ…」

痛みを気にするようにお腹をさする。私たちは神の使いの籠でいくらか痛みは軽減されてるはずなのに…そう考えると彼は仲間の中では一番人間らしさが残っていると思う。そんなことをぼーっと考えて見てると、おいっと声がかけられたことに気づきびくっとしてしまった。

「ミーア、今日は神の使いと主が集まる集会だろ?ぼけーっとしてると遅れるぞ」

と振り返って、ほら行くぞっと手を差し出して待ってくれる。けして置いていったりしない。やはり優しい。けど優しいとは直接言わない。なぜならそう言うと怒るからだ。理由はわからないが素直じゃない。

「!…わ、忘れてるわけないじゃなーい!セリアじゃないんだから」

「あ!?なんで俺みたいなんだよ!俺がいつなにを忘れたんだ!?」

「だってこの前の神の使いプチ集会寝坊してたじゃない(笑)」

「っな!!あれはだな〜!!……」

と信頼出来る仲間とたわいもない冗談を言い合いながら集会場所へ移動した。



今回の集会ではある計画の発表だった。計画はこうだった。以前から主様と一部の神の使いで計画していた『人類憎悪消去計画』。長い長い人類史のなかで溜まりに溜まった憎悪などの負の感情を装置を作り、負の感情を回収させ、装置ごと抹消させようというものだった。

なぜ一部の神の使いだけが知っていたものを集会で発表したのか。それは以前の世界での話。主様方はその計画を執行した。その結果は上場。彼…装置…いやダーとその世界で呼ばれていた存在は多くの負の感情を溜め込んだ。しかしまだ彼は回収できると判断した上層部の神様達は私たちの主様に別の世界の負の感情もこいつで回収してこいと仰られたようだ。1回作るのにも莫大な知識と神力を使うため無駄にしたくはないようだ。

そしてその重要な計画をある世界で実行することになった。それは錬金術と魔法があり、人間と魔物が争いあってる世界。らしい…

彼を人として紛れ込ませ様々な負の感情を吸収させる。そしてここからが私たちの仕事。彼が負の感情を限界まで吸収させたら、爆発を起こす前に適切に処理を行う。それが私たちが与えられた役目。

正直どんな世界かわからない未知の世界。それ故に行けるのは2人と限られていた。

ほかの神の使いは上からサポートを行う。

それが今回の集会での話しだ。

そしてその世界に行くことになったのが神の使い統括の1人のクダラと…セリアだった。

この2人の組み合わせはさほど珍しくない。普段から彼らは一緒にいるようだ。なぜだかはわからないが…それが仲間の中では当たり前になっていた。だから彼が選ばれたのも納得した。がしかし今回は一味違かった。

一緒に世界に行くはするものの、クダラは神の使いとしての記憶を能力を使い一時的に忘れさせる。そしてその間一番近くで装置を見守るそうだ。一方彼は装置の負の感情が集まった頃にクダラとは別で接触し動向を見守り、時が来た時に装置を殺し天界へ連れていく。つまり彼らは別行動をするとのことだった。

周りは良い案だと言うが私は…少し心配だ。

セリアは実は今まで単独任務は経験したことがないのだ。

だからいきなり重要な任務での単独行動…荷が重いのでは?と思った。がそんな心配もいらなさそうな様子だった。

彼は胸を張り「その大役仰せつかりました。必ずも天界と主様によき結果を報告してみせましょう」と言い切った。

その様子なら大丈夫かなっと思った。けど彼にほんの一瞬だけ…違和感を感じた。それがなんのことだっかは…その時はわからなかった。



集会が終わり私はセリアに近づく

「セーリア!凄いじゃない!!大役ね!」

「………」

「?セリア?」

「ん?あ?あぁ!そうだな。絶対に成功させないとな!まぁ俺にかかれば完璧だろうよ!」

「はっ!そう言って〜!これは本当に失敗しないでよね!」 

「しねぇーよ!!」

そう彼はいつも通りの雰囲気で言った。言ったあとまた違和感があった。なんだろう?この違和感。ムズムズする。

むーと唸ってると

「……なぁミーア」

先程とはうって変わり冷静に言った

「!な、なに?」

「あのさ…お前ってさ感情を操る能力だよな?」

「え?ええ!そうよ?それがどうしたの?」

なぜ今更私の能力の確認したんだろう?

「……お前のさ能力でさ…例えばだぞ?苦しみや悲しみを喜びや愉快って感情に変えれたりできるか?」

「?えぇできるわよ?一時的でしかないけれどね」

「!」

一瞬動向が広がる。そして

「そうか」

と一言言った。

「…?どうしたの?あっまさか…実は不安だったりして?あははー!なーんちゃって………」

…どうやらそうらしい。

「本当に不安なの?」

「……まぁな」

珍しく素直だ

「大丈夫よ!クダラもいるんだから!きっとちょっとの失敗ならカバーしてくれるでしょ!貴方はただ装置の動向を見守り、負の感情を人間たちから吸い取り、彼を殺して天界へ連れてけばいいのよ!」

どんどんっと励ますように背中を叩く。それでも彼の表情は冴えなかった。

かなり来てるようだ。仲間として…いや友人としてなにか助けになりたいと思った。


「……なぁミーア。」


「?なーに」


「俺にさ…苦痛を感じた時にさ楽しくなるようにしてくれないか?」


「……え?なんで?だって私たち神の使いは物理的な痛覚はあんまり感じないはずよ?」

「…いーだろ?保険だよ保険。おまじない感覚だよ。頼む。お前にしか頼めないんだ」

お前にしか頼めないんだ。その言葉に私は嬉しさで舞い上がってたのだろう。友人に必要とされてる!こんな私でも手助けができると!だから深くまで考えられなかったんだ。苦痛が物理的な苦痛だけでは無いこと。それを味わったあと元に戻ったらどうなるかまで考えられなかったんだ。そんな浅はかな私は彼の手助けができる!役に立てるという嬉しさでいっぱいだった。

「!…しょうがないわね〜!いいわよ!このミーアちゃんに任せなさい!」

「!…ありがとうミーア」

素直に感謝を述べられさらに嬉しくなってしまう。得意げな気分だ。

「ふふーん!どういたしまして!さっ!いくわよ!」


彼の頭にそっと手を添えて力を込める。感情のパーツを変えていく。捻り、捻って置き換えてく。悲しみを喜びに。苦痛を快楽に、捻り捻って変えていく。

ほーらできた。私にしかできない能力。戦力ないけど役に立てた。


ゆっくりと手を離し

「できたよ」

と伝える。

それを聞き彼はゆっくりと目を開ける。そして…


ゆっくりと口角があがっていく。


「…はは、ありがとうミーア。おかげでだいぶ楽になったよ」

「ふふ!どういたしまして!あっそうそうその効果はこのプロジェクトが終わるまでよ?」

「あぁ!十分さ」

ふふふ、ふふふふふと笑い声が漏れている。

友人の役に立てて嬉しい。嬉しいはずなのに…何故だろう?胸騒ぎがする。

「ねぇ…セリ」

「ああ気分がいい!とてもいい!はは!ミーアのおかげだ!すごいすごい!これなら…今ならなんでも出来る気がする」

喜んで…くれてる…んだよね?ねぇ、セリア?

いつものセリアじゃなくなったように感じて少しずつ焦りがではじめる。

「せ、セリア!」

「…ん?なんだぁ?」

「っ…セリア…」

大丈夫?と声をかけたかった。かけたかったのに。でも弱虫な私は怖かった。だから

「……成功を祈るよ」

そうしかいえなかった

「はっ!あったりめーだろ?俺様なんだからできるに決まってる。はは!だからお前はここで待ってろ」

そう言って彼は一瞬ふらつきはしたものの、計画の準備をするために歩いていった。

その姿を見つ送ることしか私はできなかった。