プディングクラブ Pudding club
こんにちは。
このブログを読んでいただいている方は、少なからずイギリスの食べ物や文化に興味を持っているのではないかと思いますが、では、「プディングクラブ」というイベントをご存知でしょうか?
これはイベントというよりも大人のお遊びの場、と言った方がいいのかもしれません。
イギリス中、あるいは世界中からイギリスのプディング好きが集まり、イギリスの伝統的なプディングを食べる、というものなのですが、決して安くはない参加料に対して、毎週満員になるくらいの人気があります。
場所はイギリスでは人気の観光地、コッツウォルズはチッピングカムデンの近くにある、スリーウェイズハウスホテル。この一風変わった催しは、1985年からこのホテルのオーナーが始めたもので、伝統的なプディングを後世に残そう、という思いがあるようです。
残念なことに、すでにたくさんのプディングが忘れられ、今では古い文献でしか見ることができませんが、それでもいまだにこのクラブに参加したイギリス人は、自分の子供時代を思い出してノスタルジーに浸るそうです。
ホテルの立地も、イギリス人に「古き良きイギリス」を思い出させるのかもしれません。
チッピングカムデンのタウンセンターから少し離れた場所にあるこのホテルは、美しい古い建物を改築したもので、外観も中身も本当に素晴らしく、プディングクラブに参加しなくても一見の価値ありです。

今日はこのプディングクラブのお話をしようと思うのですが、というのも、このクラブはその内容からイギリスの食の歴史の一部であると思うのと同時に、単純に、自分が参加してみて、とても面白かったからです!
突然このクラブを思い出したのには理由があります。
それは、留学中の2016年7月1日金曜日、ちょうど3年前の昨日、友人と一緒に初めてこのクラブに参加したからです。
私はこの数年前に一度だけこのホテルを訪れたことがありました。
ただしそれは観光ツアーの一部でさっとランチを取っておわり。あまり堪能する暇も、もちろんプディングを楽しむ余裕もありませんでした。
今回は、なんと、参加枠の関係でホテルに滞在しなくてはならず、普段なら泊まろうとも思わない高級ホテルに滞在!というおまけまでくっついてきて、いろんな意味で幸せな体験でした。
この時の参加者は私たち以外が全員イギリス人だったと思います。
おおよそ70名でしょうか。子供は一人もおらず、一番若いのが私たちだったと思います。
そして、参加者の半分が男性!
ほとんどが女性だろうと思っていたので、本当に驚きました。
でもよく考えてみたら、イギリス人男性が甘いもの好きなのは周知の事実。
どのティールームでもカフェでも、男性がひとりでお茶とケーキを楽しむ姿は、完全に日常の一部となっています。
イギリスでは甘いものは子供や女性だけのものではないんだなぁ、ということを、実感した瞬間でした。
さて、私と友人のトモコは二人ともイギリスのお菓子が大好きで、二人だとその話題しか上らないほど、特にトモコはイギリスの製菓学校にも通っていたくらいなので、それこそいろんな地域に、そのお菓子のオリジナルを食べに行ったりもしているくらいでした。
そんな二人だったので、プディングクラブのことはもちろん以前から知っていて、予約ができたときは大興奮でした。
ただ、私たちはプディングクラブというからには、プディングだけを食べるものだと思っていたのです。
実際はプディングの前に「ライトミール」と称した一人前の食事とドリンクがついていました。
その日は、ビーフかフィッシュケーキかマッシュルームリゾットかを選べ、更に追加でアルコール類も飲めるという、日本人にとっては普通の夕飯の後に、「いよいよプディングの登場です!」となったわけです。
この時点でほぼお腹いっぱいだったのですが、それを吹き飛ばすほどのインパクトがこの後訪れました。
まずはプディングのパレード!
参加者の中から選ばれた数人のゲストと一緒に、ホテルスタッフが高々とプディングたちを掲げてテーブルの周りを練り歩き、用意されていたステージに次々と並べていきます。
観客は新しいプディングが登場するたびに拍手喝采!
ホテルは毎回7種類のプディングを季節に合わせて用意してくれています。つまり、1日1プディング。週1回の開催なので、一気に1週間分のプディングが食べられるというわけです。
7種類もあるうえ、ちゃんとした食事の後なので、それぞれのプディングは本当に小さくカットされ、カスタードソース、チョコレートクリーム、イチゴジャム、濃厚なクリームとホイップクリームの中から好きなものをかけて食べることができました。
プディングはいくらでもお替り自由。みんなきちんとサーブテーブルの前に行列を作って、わいわいしゃべりながら自分の番を待ちます。
ただ、ご存知かとは思いますが、イギリスのプディングで軽いものは一切ありません。そこにさらに濃厚ソースをかけて食べるので、参加者の中には早々に7種類食べるのをあきらめてしまっている人もいました。
私はもちろん最初から食べきれるとは思っていなかったので、いくつかのプディングはトモコとシェアし、何とか7種類味見することができました。
この見る人が見れば酔狂なパーティーは3時間続き、そしていよいよ終わりが近づいてきました。
最後はもちろん、どのプディングが一番だったか決めなければなりません。
決めると言っても実際は本当にただの大人の遊び。
甘いもので興奮した大人たちが、その日一番好きだったプディングに挙手しスタッフが数を読み上げて発表するだけです。
その日のベストはシロップスポンジというプディングでした。
私のお気に入りのサマープディングは残念ながら3位。
発表と同時にまた拍手喝采!もうなにに喝采しているのかよくわからない状況の中、プディングクラブは終了しました。
今回体験できたのはたったの7種類でしたが、イギリスにはプディングだけで分厚い本ができるほど、たくさんのプディングがあります。
次に参加するときは絶対にクリスマスプディングを狙っていきたいと思います!