繊維について第3回「動物繊維 羊毛 絹」
こんにちは、株式会社フォーリン HP制作担当の野村です。
今回は「動物繊維」について書いていこうと思います。
前回の記事はページ最下部のリンクからご覧ください。
さて動物繊維も植物繊維と同じように細かく分類することができます。
「獣毛繊維」
「絹繊維」
「羽毛繊維」
「その他」
です。
単純明快な分類名なので既にお分かりかと思いますが、
「獣毛繊維」は動物の毛であり、羊毛やカシミヤ、らくだ等が当てはまります。
「絹繊維」は蚕の吐く糸である絹。
「羽毛繊維」はアヒルなどの羽毛。
「その他」は上記に当てはまらない、例えば蜘蛛の糸などが当てはまります。
「獣毛繊維」は動物の種類の分だけ存在するので、多くの種類があります。
ウール(羊毛)、カシミヤ(ヤギ)、ラクダ、モヘヤ(ヤギ)、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ(ウサギ)などが流通している獣毛繊維です。
この中でも圧倒的に流通量が多く、親しみがあるのは羊毛でしょう。
したがって羊毛について詳しく書いていこうと思います。
ウールは利点として「肌触りがよく」「保温性が高く」「燃えにくい」などがあります。
一方欠点として「洗濯によって縮む」「虫に弱い」「摩擦によわい」等があります。
ウールセーターなどを普通に洗濯してしまって縮んだ経験がある人も多いのではないでしょうか。
なぜ洗濯するとウールが縮んでしまうのか。
それは繊維の構造に答えがあります。
ウール繊維の表面には「スケール」と呼ばれるうろこ状のものがあるのですが、これが水に濡れることによって開くのです。
そうすることで表面積を増やし早く水分を発散させようとするわけなのですが、この開いたスケール同士が摩擦によって絡み合うことで縮んでしまうのです。
こうした現象をフェルト化といいます。
逆にあえてフェルト化をさせて使用する場合もあります。
最近ではこのフェルトを針でチクチクしてぬいぐるみを作るキットなども100円ショップ等で見かけることがありますね。
一概にウールとくくっていましたが羊には多くの種類が存在し、種類ごとに毛の質が違います。
なので代表的な種類をいくつかご紹介したいと思います。
一つ目はメリノ種です。
最も一般的であり、かつ高品質な羊毛が採れる種類の羊です。
品種改良を重ね、一頭の羊からより多くの羊毛を採れるように、皮膚がたるむほど余っています。
スペイン原産の種類であり、現在はオーストラリアをはじめとした世界各地で飼育されています。
二つ目はロムニー種です。
国内のウールカーペットはこのロムニー種からとれるウールを使っていることが多いです。
メリノ種より繊維が太いためカーペットに最適な羊毛。フェルト化して使用することも多く、フェルト業界ではメリノ種と並んで有名です。
他にも、サフォーク、コリデール、チェビオット、ジャコブなど様々な品種があります。
そして動物繊維の中でもう一つ、日本人が古くから使用している「絹」について少し書いていきます。
絹は自然界から採れる繊維の中で唯一「長繊維」に分類されます。
絹は昔から高級品として世界各地で利用されてきました。
中国で作られた絹が、インドやエジプト、ローマなどに輸出され超高級品として販売されていました。この交通路がかの有名なシルクロードというわけです。
日本でも絹は古くから生産され、1900年頃には中国を超え世界一の生産国でもありました。
さて絹の採取方法ですが、絹はカイコガの幼虫が成虫になるときに作る繭が原料です。
かと言って幼虫が吐く糸がそのまま絹になるわけではありません。
フィブロインとセリシンという物質から出来ている生糸を精練し、フィブロインと呼ばれる繊維状のタンパク質を取り出します。フィブロインは一本の生糸から日本採れ、一本が約1デニール程度です。硬さを残したい場合はセリシンの落とし方を調節することで対応します。
前回、短繊維の絹もあると書きましたが、それは生糸を作る際に出てくるくず糸やくず繭などのことです。これらを紡績して一本の糸にするため、絹紡糸などと呼ばれます。
絹の特徴は何と言ってもその美しさです。光沢、ドレープ性、染色性などは非常に優れています。しかし欠点も多く、経年による黄変、日光による劣化、汚れのつきやすさ、虫に弱いなど、繊細な繊維です。
これらの欠点を差し引いても、その美しさから根強い人気がある高級品として現代でも販売されています。
次回は「再生繊維」について書きたいと思います。
今回のおさらい
動物繊維は「獣毛繊維」「絹繊維」「羽毛繊維」「その他」に分けられる。
ウールの繊維はスケールといううろこ状の構造を持っている。
それが水分を含むことで広がり、からみ合うことで縮む。これをフェルト化という。
絹は天然繊維の中で唯一の長繊維。
蚕の幼虫が吐く糸は生糸と呼ばれ、生糸はフィブロインとセリシンから出来ている。一本の生糸からは二本のフィブロインが採れる。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
参考文献
愛知県繊維振興協会(2016) 『TEXTILE HANDBOOK』
一見輝彦 (2014) 『わかりやすい アパレル素材の知識 改訂版』 星雲社
等
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