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京山幸太 幸枝若一門を語る 2019年4月号より

2019.04.27 01:00

今回の京山幸太インタビューでは京山幸枝若一門がテーマです。修業のことから、去年入門した2人の妹弟子、京山若菜さんと幸乃さんのことまでネホリハホリ聞いています。先日開催された浪曲親友協会のお花見では弟子3人でキャンディーズの「年下の男の子」を振付きで披露していて、賑やか一門という印象を受けますが、実際はどうなのでしょうか。どうぞインタビューをご覧ください。(お花見の写真は京山幸太のツイッターに上がっていますので、気になった方はチェックしてみてください。)

目次

1.妹弟子3人と花見の余興「年下の男の子」

2.修業は酒から

3.ムードメーカー・若菜

4.京山幸乃は一門の…


1.妹弟子3人と花見の余興「年下の男の子」

―今日は幸枝若一門についてお話を聞かせていただきます。まず、先日のお花見で弟子3人で歌い踊った「年下の男の子」について。3人ともノリノリで、仲が良く、一門の明るさやサービス精神を感じました。あの企画はどういう経緯だったのでしょうか。

幸:まず入門した時から、師匠からお花見ではみんな演歌歌うから、もっと盛り上げる別のことをやってくれと言われてました。

―師匠から言われてたのですね。過去にはTMレボリューションやゴールデンボンバーのモノマネをしていたので、毎年幸太さん自ら弾けているのかと思っていました。

幸:あれは師匠の命令があるからで、実は歌詞覚えたりめちゃくちゃ大変なんですよ。

―たしかに、幸太さんは毎年お花見前は寝不足なってる印象です。

幸:夜遅くまで練習してるんで。もちろん楽しいんですけど、自主的に始めたことではないんです。そういう流れもあって、今年は3人でなんかせいと指令が出まして、3人となるとやっぱり自分キャンディーズ好きやし、今回それを選びました。

―『3人となるとやっぱりキャンディーズ』という発想が幸太さんらしさを感じますね。(幸太さんが浪曲師になるきっかけになったのはキャンディーズの作曲を担当した穂口雄右先生)。妹弟子2人は最初にこの話を聞いた時、どんな反応でしたか。

幸:全然オッケーって感じです。

―さすが幸枝若一門。踊りも幸太さんが指導したのですか。

幸:そうです。ぼくが2人に教えて、カラオケで練習したりしました。それから、3人が出演している浪曲会でプレステージとして披露しました。

―その時の完成度はどうでしたか

幸:全然でしたよ。若菜さんが踊りがちょっとゴリラぽくなってしまって。

―ゴリラっぽいですか(笑)。でも、本番ではしっかりセンターを務めてましたね。

幸:幸乃さんはフラメンコをやってたからか、すっと振り覚えてましたね。花見でもフラメンコやってはって、すごかったですね。あれでファンが増えたんじゃないでしょうか。

―幸乃さんは天中軒景友さんのフラメンコギターに合わせて踊っておられましたが、ギターも踊りも本格的でびっくりしました。

2.修業は酒から

―幸枝若一門の修行で特徴的なことはありますか

幸:師匠は「うちの一門の修行は酒からや」って言うてて、自分もそう思ってます。一門によっては酒もタバコも禁止もあると思いますが、師匠はどんどん飲んだらいいというスタンスです。芸人として飲めないよりは飲めた方が良いと思ってはります。師匠が車を運転して、弟子は飲ましてもらうとかもあるので、それはすごいことやなと思ってます。

―先代の幸枝若師匠もお酒やそういう場が好きな人として有名ですね。

幸:そうですね。 師匠は先代にブランデー混ぜたアイスピッチャーを一気飲みさせられて、そのままバタンと倒れたこともあったそうです。

―それはきついですね。今の幸枝若師匠は強要する感じはなさそうですね。

幸:全くないですね。自分に対しては飲めるって知った上で、「もっと飲め」とかは言いますけど、飲めない人にそういうのは全くしないですね。

―師匠はそういう気の使い方が優しいですね。

幸:そうですね。師匠の自宅の近所でベロベロなるまで飲んだ時も、「家に泊まっていけ」って言ってもらって。朝起きたら、師匠が「お前二日酔いやから汁気ほしいやろ」って言いながら、朝ごはん作ってくれてました。すごいありがたいなってその時思いました。

―めっちゃ優しいですね。

幸:手伝おうとしても「ええから座っとけ、好きで作ってんねんから」って言われるので。本当にありがたいですね。

―これを掲載することで、また幸枝若一門に入門希望者が増えるかもしれないですね。

―最近は入門する前に幸枝若師匠の浪曲教室に通うのが流れになってますよね。

幸:そうです。教室に通うは、音痴じゃないか、才能があるかを見極める期間でもあり、何よりも人柄を知るためです。教室に通って、ぼくの時は1席、妹弟子2人の場合は3席覚えました。覚えた浪曲がまだまだ下手やけど、論外ではないと思えるくらいの実力になってて、人柄がよかったら入門です。そこから教室じゃなくて、本格的に稽古をつけてもらえるようになります。それが月に2回くらいです。

―入門後はお稽古以外にも師匠のお仕事に付いて行くなど、お手伝いなどもしているのですか。

幸:師匠の仕事が自分の仕事と被ってなければ全部行きます。自分も今でも空いてたら行きますし。妹弟子がいるのでやることはほとんどないのですが、師匠の芸を見れる機会でもあるので。

―なるほど。月2回の稽古以外にも師匠の芸を学ぶ機会があるのですね。

幸:そうですね。東京で仕事があった時は帰り新幹線で、自分の高座を聴いた上でのアドバイスしてくれたりもします。そこで昔の浪曲界の話も聞けたりして、そういうのも自分の身になってる気がします。

3.ムードメーカー・若菜

―去年入門した妹弟子2人に関しても聞いていきたいと思います。まず、若菜さんはどういう印象ですか。

幸:若菜さんは完全に幸枝若一門のムードメーカーですね。一番師匠に怒られるし、一番笑わせるし。師匠から「お前ええ加減にせえよ」って言われてるナンバー1やと思います。

―年齢的には一番落ち着いているはずですが…。

幸:師匠もキレて怒ることはなくて。おもろいやっちゃなぁと思いつつ、師匠として怒っとかなみたいな感じやと思います。

―具体的に何で怒られているのですか。

幸:若菜さんがベロンベロンに酔って、師匠にタメ口使ったりして(笑)

―それは絶対に怒られるやつですね。幸太さんにもタメ口使うことがあるんですか。

幸:使われることはありますけど、怒ることはないですね。ツッコミ入れるだけです。ホンマに失礼なことはしないので。

―幸太さんが怒ってるのは想像できないですね。

幸:感情的になるのが嫌なんで、怒るのは苦手ですね。楽屋仕事とか先輩として教えないといけないことは言いますけど、怒ることはないですね。

―若菜さんは入門したきっかけは何だったのでしょうか。

幸:テレビで師匠の浪曲を見て、本人曰く血が煮えたぎったらしいです。それで一心寺に観に行ったら、師匠が河内十人斬りを二日で前後編やってて、それで惚れ込んだそうです。それから教室の生徒になって1年くらいは普通に生徒としていたんですけど、どうしてもやりたい気持ちを抑えきれなくて弟子入り志願したそうです。

―社会人をある程度経験してから、芸の世界に飛び込むのはすごい熱を感じますね。

幸:入門してからも頑張ってますね。音やリズムを外すことはあるけど、うまくなってるのがわかります。それに声が良くて、あの歴で考えたら啖呵がすごいうまいです。感情を乗せやすいタイプなんでしょうね。

―若菜さんは声もですが、目力もありますもんね。男っぽいのも似合いますし。

幸:男もできるのがすごいですね。

―持ちネタは今どれだけありますか。

幸:今は「狐の嫁入り」「馬の脚」「比良八荒」「安珍清姫」です。それにまだお客さんに見せられるレベルではないけど「山崎迎え」もあります。

―「山崎迎え」も!大ネタじゃないですか。

幸:女流の先代京山幸枝司師匠の音源で覚えたんですよ。幸枝節に近くてめちゃくちゃ節大変なんですが、迫力がすごいんです。その分モノにするにはなかなかの時間はかかると思います。

4.京山幸乃は一門の…

―幸乃さんは関東から大阪に引っ越してきて入門されたのですよね。関東にも沢山浪曲師がいるなかで、幸枝若師匠を選んだきっかけは何だったにでしょうか。

幸:入門前から演芸が好きで落語会とかもをよく観に行ってたみたいです。そのうち浪曲にもハマって通ってるうちに寄席仲間ができて、寄席仲間から幸枝若師匠を勧められてわざわざ一心寺まで来たんです。それで師匠の浪曲を聴いて、初めてプロでやりたいってくらい感動したそうです。

―最初は一演芸ファンだったのですね。勧められて大阪まで観に来る幸乃さんもすごいですが、幸枝若師匠を勧めた寄席仲間の方の影響力は大きいですね。

幸:今でも東京から応援に来てくださってますしね。

―デビューの時も東京から沢山来られているのを見ました。大人しい人だと言われてましたが、友だちも沢山いらっしゃってすごい社交性のある人だと思います。

幸:意外と喋り出すと喋るんですよ。それに変わってますよ。

―変わってるんですか。

幸:雷電為右衛門の絵で自作のパーカー作って、それを着てたりとか。

―それはだいぶ変わってますね。軽く想像を超えてきました。何をするのか読めないですね。そうなると幸乃さんは幸枝若一門の何担当になりますかね。

幸:何担当か、真面目担当…。でも普通みたいに聞こえますもんね。だいぶ変態なんですけど。浪曲界のムッツリ!これ大丈夫かな?

―どうでしょう(笑)

幸:難しいですね。入ってまだ半年なんで、わからないことも多いんですよ。今はまだ遠慮してはりますけど、本当はもっと話すと思います。芸の方は音感もリズム感もいいし、その点はすごいです。

―フラメンコやってたことも影響してるんですかね。

幸:それもあるでしょうし、鍵盤も触ってたみたいです。自分と若菜さんは勢いでいったれみたいなところが似てるんですけど、幸乃さんはそうじゃなくて音を一つ一つ丁寧に取っていくタイプですね。性格が芸に出てる気がします。

―なるほど。出身も幸枝若一門では珍しい関東出身で新しい個性になるかもしれないですね。

幸:関西出身じゃないことで、ある意味自分の色を出しやすくてチャンスでもあると思います。先代とか師匠の独特の関西弁で言って引き込むのはそれこそ先代や師匠の持って生まれたニンもあります。無理矢理真似しなくても、それはそれでいいと思います。その分、幸乃さんなりの浪曲を作っていく可能性があると思いますよ。