5月22日(水)『歌舞伎座団菊祭五月大歌舞伎』
今月の歌舞伎座は、団菊祭だ。團の方は、團十郎が死んで、海老蔵が来年團十郎を継ぐことになっている。菊は、菊五郎、菊之助の親子が揃い、菊之助の息子が七代目丑之助を襲名して、初舞台だ。
夜の部は、鶴寿千歳。昭和3年、昭和天皇の即位の大典を祝い、十五世羽左衛門の雄鶴、六世菊五郎の雌鶴で初演された。新しい令和を祝い、演目に入れられたのだろうが、今回は松緑と時蔵では、今の歌舞伎界のベストを揃えたとは言えまい。まあ優雅さは感じたが、それだけ。
観客の一番の楽しみは、絵本牛若丸。菊之助の息子が、丑之助を襲名し、初舞台である。浅黄幕が落ちると、上手に吉右衛門、下手に菊五郎が座り、その真ん中に丑之助が座り、まさに御曹司。将来を約束された役者の誕生の一瞬を観た気持ちになる。この後、父親の菊之助が弁慶で登場し、挨拶があった。セリフ回しも元気でよく、立ち回りもよく覚えて、破綻はない。丑之助が、菊之助を襲名する時までは、歌舞伎を観ていたいものだ。菊五郎劇団勢揃いで、寿いだ一幕。最後弁慶を馬にして、まあ肩車をして花道を引っ込んだが、場内からは盛大な拍手が起こった。
次は、菊之助の娘道成寺、35分の休憩の間に、弁慶から白拍子花子に大変身した。これが歌舞伎だ。菊之助は美貌の役者だから、花子は若く美しい。菊之助の花子は,どちらかと言えば清楚で。玉三郎の様な艶っぽさ、色気は欠けるが、安珍を思う、愛情の深さは感じた。美しさにうっとりとしている間に、鐘の上に乗っていた。
最後は御所五郎蔵。松也が五郎蔵、星影土右衛門を彦三郎、傾城皐月を梅枝,逢州を尾上右近が演じた。彦三郎の声の大きさに驚いた。今の歌舞伎では、声量は一番ある。活舌もいい。でも全面歌い上げる台詞回しだけでいいかは疑問。松也も負けじと声を出していた。松也ファンだから、こうした大役を任せられて嬉しい。松也も全力で飛ばしている。今まで、どんな役を演じていても、パターン化していて、面白さを感じなかったが、メリハリが出て来て、怒りに任せ、感情が、爆発する台詞は、成長したなと思った。見得も綺麗で、舞台に生える。傾城の二人のコンビは、若手花形で、美しい女方の代表である、梅枝、右近が揃い、絵面が綺麗だった。