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真夜中のギーク | 「iPhone SEのSって何のS?」

2016.03.24 15:00

きっぱりギズモードの編集長をやめてから、はじめてみる前回のApple基調講演は、なんだか味気なかった。

9月に発表されたiPhone 6S&6S Plus。あれほど新機種がでる度になにがなんでもUPDATEし続けると豪語し続けたのに、そんな情熱はさっぱりどこかへ。「ああ、3Dタッチって触ってみたいが、これだったらサイバーエージェントから支給されたiPhone 6のままでいいや」という諸行無常感に襲われた。なんだか波に乗り切れてない感じ。でも、その波はもはや元の水にあらず。


そうこうしているうちにiPhone 6を駐車場で落としてしまい、これまたはじめてiPhoneの液晶を割ってしまった。人生で初。

写真がそのiPhone 6だ。かたときでもスマホを手放せない性格ゆえ、ひたすらひび割れたままで使い続けた挙句、まるでpoemgraphのようなデジタルオブジェとして成仏した。ここまで昇華したらもはや手放したくない!(会社のだけど)そんな風に偏愛できるギアはiPhoneだけだ。かつてギズモードがApple原理主義だとはげしく避難され続けても、頑として編集方針を変えなかった所以がここにある。

そんな中、今週行われたアップル発表会の中継は、ひさびさに興奮した。新規性に乏しいと各メデイアや世評的な反応はいまひとつ。さらには今回の目玉商品「iPhone SE」は “新しいiPhoneではない、馬肉だ!”と断言(えっ!?)していた記者までいたが、なんのその。会場はApple本社Infinite Loopのわりと狭くて暗いホール、得意の「One more thing」(アンコール)も旬なアーティストのライブもなし。淡々と任務をこなすキャプテン、ティム・クックCEOのシリアスなたたずまいに惚れこんだ。それは社会貢献を重視し、FBIからの要請にも屈しないという“南部出身の頑固男”の真骨頂だった。これまでのクック船長は無理していたんじゃないか?

source : (一番説明がわかりやすかったと評判の)BuzzFeed Japan / Via apple.com


そんなサービス精神のかけらも感じられないストイックな発表会。披露された4インチiPhone SEについて、最初みたときは何だろうな「SE」の意味がぜんぜんわからない...ギズをやめて海外テック系サイトを見なくなったからか...なんて思っていたが、そうでもなかったらしく、「SE」は「SPECIAL EDITION」の略だと、アップルのマーケティング担当副社長フィリップ・シラーが言ったとか、いやいや、それは解釈の自由であり、往年の名機「Macintosh SE」が開発に関わった人たちの心の奥にあったのだとITジャーナリストの林信行氏が、nobiさんらしくロマンチックに語ったりなど発表後に諸説流れていたようだ。


だけど個人的には、SEは「ストイック・エディション」か「シリアス・エディション」でいいんじゃないかという気がしている。ストイックに3Dタッチを捨てて、4インチに先祖帰りしたことで、Appleはシリアスなイノベーションを獲得したのだ。

なぜそう感じたか? お釈迦になったiPhone 6のかわりに、4インチの旧機種iPhone 5S(妻が6Sを買ったので白ロムになってたのを失敬した)を使っているのだが、 これがシリアスに使いやすい。

かつて(前述のITジャーナリスト)nobiさんと対談した時に、iPadがiPhoneが大きくなっただけに見えるけど何が違うのかという質問に対して「サイズが違えば体験が変わる、すなわちそれ自体がイノベーションである」という名言を残した。記憶が確かならばちょっとだけ大きくなったiPhone 6&6 Plusのときもブレなく同じ趣旨のことを話していたと思う。


であれば、この「小型化」もサイズ変更による体験の変化という立派なイノベーションではないだろうか? なにしろ親指1本で画面の隅から隅まで自在に片手操作ができるのだ。どんな新機能をさしおいても、文句無しに使いやすく快適。

iPhone 6Plus、そして6を使い続けてきた身にとって、これはシリアスな革命以外のなにものでもない。きっとiPhone SEは売れるにちがいないと確信した。特に16GB:5万2800円モデルはバカ売れするだろう。今時、音楽も写真もクラウドだし容量は問題じゃない。それより、安い、懐かしい、余計な機能はなしは、時流にあってる。


そもそもプロダクトにおける高機能化のビジュアライズすなわち「小型化」はイノベーションの正常進化である。プロダクトのみならず、人間だって小型化という進化の道を辿っている。ある世代から平均身長が下がりはじめているのは、きたるべき食料不足に備え、ドローン、VR、AIといったテクノロジーの進化による身体能力の減衰に備えた人間のバージョンアップであり、いずれ人間は小型版にイノベーションするとSILLY編集長・西條鉄太郎は飲みながら力説していたような気がする(ほかの人の持論だった気もするけど)。


なにより、もうひとつ発表されたApple Watchのナイロン版は、ローテクなように見えてハイテクなところがなんかナイキウーブンみたいだし、これとiPhone SEの組み合わせは忘れていたAppleの「近未来感」を感じさせてくれるのだ。最近はカセットテープとか、ちょっとぐらい先祖帰りしてるほうが新しいし。

source: Gizmodo Japan

真夜中にダラダラと書いてしまったが、iPhone SEの「S」は「SILLY」なのかもしれない。SEはSILLY同様、NEXT LEVELをゆくミレニアル世代のためのiPhoneなのだから。

iPhone “SILLY EDITION”のほうがなんかしっくりくる。そんな気がしてきた。


そんなわけない。