正しい経営へ導く、日本を代表する監査人
【ゲスト】
丹羽教夫
【インタビュアー】
株式会社ビースタイル
代表取締役 社長 三原邦彦
【ライター】
荒川雅子
世界第2位のグローバル企業で監査部門長としてご活躍されたほか、外資系金融機関、日本の政府関係機関で監査・コンプライアンス関連業務に携わられた丹羽さん。現在は、某大手企業の監査部門長として注力する傍ら、複数社の顧問をご担当されています。
監査人としてグローバルにご活躍され、国際基準に基づいた最先端の監査手法を習得されてきた同氏に、当社代表の三原がインタビューさせていただきました。
丹羽さんのご経歴や、監査人をライフワークに選ばれた理由、今後のキャリアビジョンなどをお話しいただきました。
「世界で通用する監査人」を目指した
三原
丹羽さんのキャリアのスタートをお聞かせください。
丹羽
大学を卒業した後、政府関係機関で社会保障制度に携わっておりました。コンプライアンスや法務、監査の業務を主に担っておりましたが、当時は監査やコンプライアンスという言葉がようやく日本でも注目され始めてきた時期でもありましたね。監査部門では、本部から全47都道府県の教育庁内にある支部に対する行政監査ですとか、直営病院や宿泊施設への経営監査などをしておりました。
三原
へぇ~!47都道府県が対象となるとかなりの数がありますよね。
丹羽
数は多いですね。
部署は意外と少人数で回しておりましたが(笑)
その後、外資系金融機関に転じまして、CIAとして内部監査を7年ぐらいやらせていただきました。
三原
元々は政府関係のお勤めだったのが、
民間にあえて移られたということですね。
丹羽
そうですね。それが、180度違う世界なわけです。
しかも民間+外資+金融ですから(笑)
移った理由は、監査という仕事をする中でこの職業が非常に自分に合っていることを感じまして。これをライフワークとしたい、とするならば世界中どこの組織でも通用する監査人になりたい、と考えたからです。その舞台として、世界最大級の米系金融機関でグローバルスタンダードに基づく監査ができる場は最適と考えたわけです。
三原
外資系金融機関の監査は、
どういうところが難しかったですか?
丹羽
まずスピード感ですね。
あとは精緻さも含めた求められる水準の高さです。
外資系金融機関の日本法人の世界では、本国のガバナンスとともに金融庁のガバナンスも入ってきますので、広く深みのある内部統制・リスクマネジメントがキメ細かく求められてきます。
三原
監査ボリュームも大きいし、
難易度も高くなるということですね。
そのガバナンス通りにオペレーションしていくというのも、現場の方は大変ですね。油断していると、オペレーションが変わってしまうこともありますか?
丹羽
ありえますね。
経済・市場情勢に応じて制度やルールの改正も頻繁で年々厳しくなっていくこともあり、本社と全国の各支社間でガバナンスとオペレーションがどれだけ適切にワークしているかを精緻にモニタリングしていくかがキーポイントでした。やりっぱなしになっていないか、PDCAのCをよく見ていくということです。
その後、欧州に本社がある世界第2位のHR会社さんが監査部門長を探されているというお話をいただきました。海外とのリレーションが強いため、英語+監査ができる人材を求めてらっしゃる点、国内では社会保険労務士としても人事というところには多少の知見があったこともあり、CEO等のガバナンス意識の高さも魅力的であったことからジョインをさせていただきました。
世界NO2人材会社での、
「監査部長交換プログラム」
三原
そちらでのお仕事は、
前の会社と大きな違いはありましたか?
丹羽
そうですね。当時の事業規模が世界39か国、本当にグローバルベースでいろんなモノゴトを決めて、動かしていました。ここでは監査部長として、国内監査とグローバル監査の両方を率いていました。
三原
基本的には欧州の本国を中心として、
各国をコントロールするという考え方ですか?
丹羽
そうですね。
本国にグローバル監査本部があって、そこと連携を取りながら監査をしていきます。世界中の英知が結集されたような組織で非常に印象的でした。
これは一例ですが、地球ベースでの監査品質の標準化と育成を目的とした「監査部長交換プログラム」というのを導入し始めていました。各国の監査部長が他国の監査をそれぞれしに行くといったものです。
三原
すごいですね!
丹羽さんはどちらにいらっしゃったんですか?
丹羽
私はオーストラリアですね。
これが今までの経験の中で一番大変なものでした。
三原
といいますと、、、?
丹羽
法令やルールはもちろん文化や商慣習など全く異なる他国からいきなり乗り込んでいき、決められた期間のなかで監査のミッションを完遂しなければなりません。
例えば、ヒアリング対象となる事業部長がそもそもどの地域にいるかも不明な状態からスタートします。オーストラリアの場合はニュージーランドも含まれていたので実はドキドキでした(笑)ITシステム自体も日本と全く違いますから、そんな中で、アジアパシフィックの代表があったシンガポールともうまく連携を取りながら、様々をコンプリートしていく必要があったのです。
三原
それはまたすごい経験ですね。
部下はいきなり全員オーストラリア人ということですもんね。文化も違うからマネジメントも大変だったんじゃないですか?
丹羽
大変でしたね。
アジアパシフィックのエリアでは、私が「監査部長交換プログラム」の初ケースだったこともあり、皆さんどうしたらよいかわからないというのがありましたが、必死に取り組んでいるうちに周りの助けを得られ完了できました。
監査は「人」、を痛感しここでの経験は非常に有意義でした。
三原
なるほど。
そしてその後は国内2番手に位置する
人材持ち株会社に行かれたということですね。
丹羽
そうですね。
前グローバル企業は国内監査も100拠点くらいあり、国内の割合も意外に高かったんです。私としては、海外にもっと注力して、ウエイトを高めたいという思いがつのってきておりまして。
そんな折、この人材会社さんがオーストラリア最大級の人材会社を買収し、ガバナンス関係プロジェクトのゼネラルマネージャーを求めてらっしゃるというお話をいただき、ジョインさせていただきました。
三原
今度はそちらのオーストラリアの会社を、逆に日本からどうガバナンスするのかとかの整備をされるということですか?
丹羽
おっしゃる通りです。
日本企業の関連子会社になるわけなので、日本基準であるJ-SOXによる内部統制の導入ということですね。
三原
その形で経営も会計もちゃんとやれるようにしていくということですもんね。それは大変ですね。
そして、教育とITの上場企業でのCFOを経て現在に至ると。
丹羽
そうですね。
同社の企業理念に大きく共感し数年前から社外取締役等をやらせていただいておりまして、敬愛していたCEOをいったん中から支えるという形でお引き受けしました。
任期満了後の現在は、某企業の監査部門長と複数大手社の顧問をさせていただいております。
官民/外資まですべてをカバーできる唯一性
三原
今後のキャリアとしては、必要とされている会社さんにお話をいただきつつ、お手伝いしていくという形ですか?
丹羽
そうですね。
社外取締役、社外監査役、顧問という形を将来的に考えております。
三原
顧問だと、どんなミッションが多いですか?
丹羽
一言でいうと、内部監査部門の強化。
そして内部統制や経営管理部門の強化への助言と指導ですね。
自分の強みは、公的部門から民間・外資まで全てカバーできるところだと考えておりますので、国内・海外問わず幅広くご支援できる点かと思います。
三原
それと例えば、外資は監査技術がとにかく進んでいるので、それ自体を古い日本の会社に導入していく、ということもできるでしょうしね。
丹羽
そうですね。
つたないですけれども、これまでの知見をご提供させていただくことにより、効率的・効果的に部門の強化のご支援をさせていただきたいと思っています。
日本で今、監査人が求められる理由
三原
丹羽さんはどういう会社を応援してきたいというのはありますか?
丹羽
私がご支援を決める一番の決め手は「この経営者を支えたいと思うか」ですね。おこがましく恐縮ですがそれは誠実性であったり、バランス感であったり、いろいろな要素があります。
三原
経営者の方が、監査に対してどのようなお考えを持たれているのかというのは、重要なのかもしれませんね。
丹羽
そうですね。
特に外資系の経営者は、コンプライアンスやガバナンスに対してビジネスと同程度以上の高い意識を持たれているケースが多いと思いますが、日本ではまだまだコンプライアンスやガバナンス関係は営業へのブレーキやコストであるという意識がまだまだ高いように感じます。
三原
なぜ外資系はビジネスとコンプライアンスを同じレベル感で持たれているんですか?
丹羽
外資系では投資家への意識が非常に強いので、自分たちのビジネス提供をコンプライアンス・ガバナンスを含んだ所与のパッケージとして考えることが多いです。
日本では、ビジネスは「売上・数字達成・ノルマ」が優先という考え方がまだまだ根強く、コンプライアンスは「足を引っ張るブレーキ」であるイメージが感じられます。
三原
日本の経営者は、きちんとコンプライアンスやコーポレートガバナンスに則って経営することにおける、株主に対する責任意識が少し低いのかもしれませんね。
丹羽
おっしゃる通りです。
日本企業の不祥事は今現在も枚挙に暇がないですが、それはそこにまさに現れていることかと思います。
不正は、3つの要素が重なった時に起きます。それは、動機と機会と正当性です。どの不正の事例を分析しても、ここに帰結します。
三原
動機というのは?
丹羽
例えば「売上目標を達成しなければならない」という動機ですね。これはプレッシャーとも言えます。
二つ目の機会は、内部統制の甘さです。
内部統制に穴があると、「あ、ここでこういう風にできるじゃん」と不正をしやすくなります。
最後は正当性です。
正当性は「役員がやってるからオレもやっていいでしょ」「先輩がやっているからオレもやっていいよね」といったものです。
三原
なるほど。
昔からの体質というのもあるんでしょうね。
丹羽
はい。
これまで事件を経験されたことのない経営者の方々は、「まさか、今まで不正事件などは起きたことがないし、ウチはしっかりしているので大丈夫です」とおっしゃられるのですが、不正事件はそういったまさかというところから出てくるものです。今不正事件の対応に迫られている大企業の関係者もまさかウチが、と思われていた部分もあるのではないでしょうか。
昨今は、企業による不祥事が頻発したこともあり、正しく経営するためにも社外役員などの外部の目を入れて、不正の未然防止の意識啓蒙や教育育成、監査の強化などの仕組み作りのためのアドバイスが非常に強く求められています。
「正しい経営へ導く」という監査人の魅力
三原
それでは最後に、日本を代表する監査マンである丹羽さんがライフワークにしようと思われた、監査という仕事の魅力を教えていただけますか?
丹羽
監査という仕事の魅力は、経営者の皆さんがまだお気づきになっていないことを気づかせて差し上げられること、そして「あるべき姿」に組織を引っぱっていけるところでしょうか。
三原
確かに経営者はわからないですからね。
さっきおっしゃった、不正ができてしまうオペレーションの穴とか。
丹羽
そうですね。
そういった基本的なガバナンスの知見をご提供することはもちろん、例えば、お忙しい経営者の方がなかなか察知できない社内のことをきちんと見て回り、フラットな観点から良い情報も悪い情報もきちんとお伝えすることにより、正しい経営判断をしていただき、正しい経営を行っていただく。
監査人はそのお手伝いができます。
三原
それが好きだってことですね。
丹羽
そうですね。
ほんの少しの「知らなかった」「意識が低かった」ことで最終的に大きな誤った判断をしてしまい、お客様はもちろん社員やそのご家族など皆に残念な思いをさせてしまう。これは社会にとっても会社・個人にとっても非常にもったいないことだと思っています。
基本的な知識や意識醸成のご提供により救えたケースも多いですからそれをぜひ救い続けたいのです。
また、ポジティブな意味では、きちんとコンプライアンス・ガバナンスが整備されている会社は逆に社会や市場、顧客からも信頼を得られ、業績・株価の向上にも寄与する可能性が高いです。
専門家としての知見に基づき「あるべき姿」を明確にお示しし、それで感謝をしていただける、ここが好きなところです。
三原
しっかりとした監査人がいることで、正しい経営をすることができ、残念な思いをしてしまう人を作らずに済むということなんですね。
これからは日本も、コーポレートガバナンスがしっかりしているということが株価に明確に影響してくる時代に入っていくでしょうね。
丹羽
そうですね。
世界の公的機関投資でも採用されてきているESG投資のGはまさにガバナンスのことですので、国内外の投資家もそこには厳しい目を向けてきているとも言えます。
三原
なるほど。
時代の流れもありますし、監査人はこれからもっともっと必要とされそうですね。
略歴
文科省/農水省関係機関
・コンプライアンス/監査関連業務を10年以上経験
・社会保険労務士
プルデンシャル生命保険株式会社
・CIA(公認内部監査人)として国際基準/金融庁基準での外資系金融機関監査
ランスタッド株式会社
・監査部門長としてグローバル監査および国内拠点監査統括
パーソルホールディングス株式会社
・海外M&Aに伴うJ-SOXプロジェクトジェネラルマネージャー
株式会社すららネット
・独立役員(社外監査役、社外取締役)を経て取締役CFO
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