メイドイン・・・。
もう今更、「『MADE IN JAPAN』がセールスポイントです!」みたいなとこってあんまないかもしれないけど、それにしてもかなり安い『日本製』は多い。どこそこのセレクトショップオリジナルで結構肉厚のワッフルのロンTが¥5,000とか、原価がわかる僕から見たら正気の沙汰ではない。
しかもどこで作ってるかわかってしまうから、そのカラクリにはいつもながらにこの業界の闇をみる。が、「売れてる」事実も理解できるので、モラル的には受け入れ難くとも、工場側がその負のループから抜け出す努力を怠った代償とも思えてしまう部分もあるので、それ自体が悪だとか、正義だとか議論するつもりはない。
「脅迫めいた押し付け生産か?」と問われたら、案外そんな事実は、まぁアパレルメーカー側にはなかったりする。どちらかと言うと僕の感覚では、価格競争を主導する中間メーカーが、スライディングの試合をしているうちに、最終工場側に無理が行っているという感じだ。だから、「どこそこのアパレルが癖が悪い」という事実も無くはないけれども、多分そんな生産背景まで理解して発注しているアパレルメーカーはそんなにいないんじゃないかな。ことカットソーに関しては。
だって丸投げだもん。ことカットソーに関しては。
「〇〇を〇〇円で出来ますか?」「はい喜んで!!」の世界。
合わなければその潜り合いを仕入先同士がやりあうんだもん。哀れな中間メーカーたちよ。
「工場直で生産しているからこの価格です!」なんてのは、「工場背景がある中間メーカーが血反吐を吐きながらコストを合わせています!」に近い。けど発注側にそんな意識なんてない。良心的な中間メーカーが快く引き受けてくれているだけだ。
で、できれば中間メーカーも血は吐きたくないから、工場背景もどんどん怪しい方向へ行く。
最近、研修生問題で色々騒がしいけど、研修生さえ取れないような、おとーちゃんおかーちゃんだけでやってる工場とも呼べないような施設で縫ってる現場は、実は結構ある。そこのコスト感とか、まじビビる。
生地産地でさえこれだ。
こういうところにさえ名前が上がってこれない規模の縫製工場は東京にも何軒もある。そして、そういう工場は中規模の縫製工場の下請けとして粛々と縫っている。中間縫製工場から振られた仕事を、ただひたすらに言われた値段で言われた期日までに縫っている。彼らはどうにかなりたいとも思っていない(たぶん)し、このまま惰性でこの稼業を続けていくだろう。この仕組みで商売が続く限りは、死なない程度に続けていくだろう。
そんな仕事を振っている中間メーカーも実はおいしい商売も持ってたりする。でも、そういうのは自分でやるから、結局孫請けには血を吐くレベルの仕事しか回らない。それでもかき集めてなんとか食いつないでる。ほんと、スラム街という形容詞は、言い過ぎではない。
カットソーって値段取れないからね、取れる仕事があったら自分でやりたくなる気持ちはすごくわかる。
かたや、東京に立派な工場構えて、かなり強気の営業でものすごく勢いのあるところもある。そこの社長の考え方は、かっこいいし好きだ。けど、アパレルの人には結構難しい相手だと思う。
だって、高いんだもん。でも、これが全員日本人で綺麗に経営できる適正だっていうのも、彼らの仕事を見ればわかる。高いからと言って、全然楽な商売をしているわけじゃない。営業は必死だし、工場の人たちもその営業の受注に応えようと必死だ。商品は然るべき単価で然るべきお客さんに納められていく。高いと文句言うお客さんは値段しか見てないから結局取引できないし、なんなら、そこの社長は、「いいよいいよ、他所でやんなよ」って言う。「ウチはいつでも繁忙期だから、無理しておたくのやつやってる暇ないからさ」と平然と言う。
同じ地域内で、こうも差があると、なんとも言えない気持ちになりながら、この『削り合い』はいつかは破綻するだろうと思うと、今細々と彼らの仕事で食いつないでる人たちの顔が思い浮かんで、そんなコストで受けちゃう中間メーカーには早めに改心して、たまにはおいしい仕事も出してあげてほしいなと心から願うばかりだ。
という、祈り。