いつも顧客で溢れるユニクロの成功事例から見るマーケティング4.0
ビジネス・マーケティングを学ぶ上で、成功事例を参考にすることは非常に効果的な方法です。今回は、ファストファッションブランドとしてグローバル企業にまで上り詰めた「ユニクロ」を例に、マーケティング手法を細かく見ていきます。
ユニクロは、近年注目されているマーケティング4.0をはじめ、ベーシックなものから高度なものまで、様々なマーケティングモデルを駆使しており、非常に参考になる事例です。
事業ステージに合わせて細かくマーケティング手法を変化させている点にも注目です。
それでは見ていきましょう。
グローバルに展開する巨大アパレル企業「ユニクロ」
成長著しい「ユニクロ」。その規模や特徴について、改めて確認してみて下さい。
ユニクロ(UNIQLO)は、カジュアルウェアの製造から販売までを一貫して展開する企業です。正式名称は株式会社ユニクロ(UNIQLO.CO.LTD)。国内・海外合わせて年間約13億ものアイテムを製造・販売している世界6位のグローバル企業です。
株式会社ファーストリテイリングの中核事業を担う子会社であり、同社はほかに株式会社ジーユー(GU)等複数のカジュアル衣料品企業を展開しています。
店舗数とプロダクトの特徴について以下にまとめました。
■店舗数
・事業合計 2136店
・国内 825店
・海外 1311店
※201904時点 公式サイトより
■ユニクロのアイテムの特徴
・無個性でベーシックなデザイン(高い汎用性でジャンル・世代を問わず着用できる)
・高品質
・リーズナブル
・程よいファッション性
・機能性を重視
ユニクロのアイテムの特徴は、極端ともいえるほどの無個性なデザイン。その特徴がゆえに、トレンドや世代、ファッションのジャンルに左右されることなく活用できることから、幅広い人々から支持を集めています。
さらに安くて良いものが欲しいという消費者が最も喜ぶ要素を満たしており、ファストファッションブランドとして長期的な顧客満足度を獲得。業界屈指のポジション・ブランドを築いています。
いつでも気軽に立ち寄れるように設計された実店舗、近年はデジタルマーケティングを取り入れてオムニチャネル化(ネットとリアルの融合)することにより、さらに利便性を増しています。
最先端のマーケティング概念であるマーケティング4.0になぞらえると、普段着についての課題を解決したいという「自己実現を提供」している企業といえるでしょう。
ユニクロのサクセスストーリー
1984年
田舎のカジュアル量販店(ナショナルブランド衣料品の小売)からスタート。
1992年
1992年には50店舗展開、創業10年となる1994年には100店舗と大きく飛躍。全国的に認知される。但し当時のイメージは安いけれども若年層からはダサいファッションの代名詞であった。
1997年
1997年頃からプライベートブランド取り扱いを主軸とした製造型小売業への事業転換を図る。低価格はそのままに、高品質でベーシックなアイテムの販売を開始。今日のユニクロの原型はこの時点からスタート。
事業転換と同時にマーケティングモデルも大きく変化。広告代理店との提携やメッセージ性の強いプロモーションを打ち出し、新しいユニクロのイメージの認知促進を図る。
STP分析を主軸とした4Pマーケティングに定評あり。
1998年
1990年後半よりフリースの販売をスタート。2000年秋には51色展開 3万枚売れればヒットと言われるフリースを2600万枚販売。通称「フリース旋風」と揶揄される社会現象を巻き起こし、一気に知名度・ブランド力が向上した。
爆発的ヒットにより、フリース製品はユニクロを代表するアイテム(フリースと言えばユニクロ)となる。
この頃から芸能人の起用・ファッション雑誌とのコラボ等、プロモーションに積極的な変化が見られる。
フリースのヒットを皮切りに、初の都心型店舗を東京に出店(原宿店)。
2000年
先進的なマーケティング手法を取り入れ、グローバル展開を視野に入れた経営方針へと変化。インターネットでの通信販売もスタート。国内直営店舗数は400店舗を超え、イギリスに海外展開の拠点として子会社を設立する。
2001年
直営店舗数500店舗超えを達成。イギリスでユニクロ実店舗を4店舗新規オープン
2006年~2009年
鮮やかな赤とオリジナルフォントでデザインされた新規ロゴ(現在のロゴ)へと刷新。
グローバル旗艦店をニューヨークのソーホーに新規オープン。
アジア最大級旗艦店を上海の正大広場に新規オープン。
2007年フランス初のユニクロを新規オープン。
2008年中国北京にて新規オープン。社内公用語に英語を採用。
2009年シンガポール発の新規オープン。
2010年~
ロシア発の店舗をモスクワにオープン。マレーシア初店舗をオープン。
2012年6か国語接客対応のグローバル旗艦店を銀座にオープン。同年ビッグカメラとコラボした実店舗「ビックロ」を新宿にオープン
2014年池袋にグローバル旗艦店を新規オープン。ドイツ初のグローバル旗艦店をタウェンツィーンに新規オープン
2016年東南アジア初のグローバル旗艦店をシンガポールにオープン。
ユニクロのマーケティングモデルとその変遷
ユニクロは、事業ステージに合わせた適切なマーケティングモデルを適用している点が高く評価されており、よく参考事例として取り上げられています。
マーケティング4.0実現に至るまでの変遷を追ってみましょう。
新生ユニクロ初期(マーケティング2.0)
製造小売業として新規スタートしたユニクロの初期は、マーケティングの基礎ともいえる4P[Product(製品)Price(価格)Place(流通)Promotion(販売促進)]を実践しています。
具体的には、ニーズを満たす独自商品の開発・流通コストカット・拡大を見越した実店舗ルーティンのシステム化・訴求力のある広告戦略等の施策が見て取れます。
特に秀逸だと評価されているのが、ユニクロ独特のセグメンテーション。
年齢・性別・嗜好によるニーズを見極めて絞り込みを行い、経営資源を投入してより高い成果を狙うのが、多くの企業が実施しているトレンドの施策です。
ユニクロが実施したセグメンテーションの大きな特徴は、「顧客の絞り込み」のではなく「商品の絞り込み」に尽力している点。こちらに多大なリソースを注ぎ込んでいます。
「トレンドに左右されないベーシックなアイテム」、さらにはライフサイクルの長い商品を少品種で開発することで低価格販売を実現しており、こんにちまで一貫しているのが大きな特徴です。他のファストファッションブランドと対照的に、ユニクロは商品開発には非常に時間と労力をかけています。
但し顧客層へのセグメントを放棄している訳ではなく、無難なアイテム・流行に左右されないアイテムが欲しい層へと上手く訴求しています。
このセグメンテーションは、インターネット通販にも反映されています。
また、ユニクロが優れている点は、セグメント分析からニーズを発見するだけでなく、
「分析を基に新たなニーズを作り出している」
「明確で馴染みやすい広告戦略・販売手法の実践」
「絞って⇒拡げるのが得意(フリースの大ヒット⇒51色にカラーバリエーションを展開して更なるヒット)」
等、精度の高い巧みなセグメント分析から効果的なマーケティング戦略にまで発展させています。
CSRによるマーケティング3.0へ
フリースの爆発的ヒットもあり、製造小売業として認知されてきたユニクロ。先進的なマーケティング手法を実践して、デジタルマーケティングを駆使したインターネット通販、グローバル展開にも繰り出し、業界屈指のブランドとポジションを確立しました。
ユニクロはそこから更に新たな戦略を実施。同社は海外工場にて商品の製造を行っていますが、そこで働く途上国の人々の生活を、収益の一部でサポートする「Factory worker Empowement Project」をはじめとしたCSR強化をスタートしました。
世界をより良くするマーケティング(消費者価値主導のマーケティング3.0)でユニクロは更にイメージアップ・ブランディングに成功。
インターネット通販においても、セールスを控えたクロスメディアによるデジタルマーケティングの実践、オムニチャネル化によるユーザビリティの向上等の施策を行い、事業拡大へと繋げています。
そしてマーケティング4.0へ
「ベーシックな普段着といえばユニクロ」というイメージは定着して、ユニクロはブランディング・ポジショニングに成功したと言えます。
トレンドに左右されないオシャレで上質な普段着がリーズナブルにいつでもどこでも手に入るという、老若男女の普段着についての課題を解決するサービスを提供することにより、それを望む層の自己実現に寄与。
顧客満足度を獲得して店舗にはいつも人が溢れ、長期的なLTV・顧客が顧客を呼ぶという、マーケティング4.0の理想形ともいえる状況を実現しました。
直近ではコラボレーションマーケティングにも積極的で、更に注目を集めています。
ユニクロの成功事例から学ぶマーケティング4.0への道
ユニクロの成功事例は基本的に大企業の戦略が多く盛り込まれています。確かに参考するのは難しい部分もありますが、マーケティング技法は基礎から応用まで事業規模に依らずに参考にできる点はたくさんあります。
事業ステージに合わせた打ち手が大切なことも学べました。これまでの学びをベースに、例えば以下のような戦略はいかがでしょうか?
・多角的で精度の高いセグメンテーション
・「新たなニーズ・ウォンツの発見」
・ネガティブな反応を抑えるナチュラルな販売・広告戦略・デジタルマーケティングの実践
・顧客満足度の追求からの高LTV・バイラル・ブランド化・一般化・CSRによるマーケティング3.0の実現
・更に発展させてのマーケティング4.0の実現
事業の成長ステージに合わせて、低予算で実践できる部分から始めて、段階的にマーケティング4.0を目指してゆく戦略です。
ユニクロのような優れたマーケティング技法を活用してきた企業でさえ、最初からマーケティング4.0を実施することは無理です。
現状と照らし合わせて、できることから1つずつ着実に達成していけば、マーケティング4.0の実現へと近づくことが期待できます。
是非参考にしてみて下さい。
まとめ
製造小売業への事業転換という、こんにちのユニクロの原型ともいえる時点から、一貫したプロダクトと事業ステージに合わせた巧みなマーケティング手法で成長してきた「ユニクロ」。
「ベーシックなカジュアルウェアといえばユニクロ」。いまやブランドイメージは浸透して、いつの間にか、当たり前のように私たちの生活に溶け込んでいます。
顧客のニーズに応え続け、「間違いのない普段着をいつでも着用したい」という顧客の願望・自己実現を満たすまでに至りました。
マーケティング4.0の概念を実現して、グローバル展開・コラボレーション等更なる飛躍を見せるユニクロ。今後のマーケティングプラン作成の参考にしてみませんか?