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【インタビュー】御菓子所 月花堂 都築政秀さん

2019.07.21 01:08

愛知県弥富市の中心地 平島にあるお菓子屋さん「月花堂」。

1964年(昭和39年)、1度目の東京オリンピックが開催された年に十四山村(現弥富市)にて創業された55年の歴史があるお店です。

月花堂の詳しい話を伺いに、運営されている都築 政秀さん(46歳)を訪ねました。

(取材日:2019/7/19)


あんこの味が自慢の和菓子屋さん

-(コジロウ)今日はお願いします。注文の品を作る工房にお邪魔してのインタビュー取材となりますが、お忙しい中ありがとうございます。

(都築さん)よろしくお願いします。話をしながらも手は止めずに動きますので、大丈夫ですよ。

-さすが職人さんですね。では、まずは月花堂さんのお店のことを教えてください。

はい、月花堂は1964年(昭和39年)に父親が創業し、当時の十四山村(現在は弥富市)に店を構えたのが始まりです。

その後、1968年(昭和43年)に現在の場所、弥富市平島に移りました。

以来、50年以上ずっとここで御菓子所として和菓子店を営んでいます。

去年は病気の関係で店を休んでいましたが、今は基本的に妻と2人で週4日(火水土日)で店を開けながら、法事や保育園行事などの注文も受けたりして、楽しくやってます。

-すごい歴史のある店舗なんですね!

いやいや。京都などでは300〜500年もの歴史をもつお店がありますから、この業界で50年ちょっとの店なんてまだまだ新参者、始めたばかりというような世界なんですよ。

-50年で新参者!奥が深いですね。このお店の主力商品や特徴はどんなところですか?

薄皮まんじゅう(京まんじゅう)と、わらび餅(商品名:笑び餅)ですね。

あんこの味に特徴があって自信があります。


あんこは、作る人の心意気で全く味が変わってしまうものなんです。

同じ材料、同じ道具で作っても、作る人が違うと味が違います。

私の親父の味と変わらないものを出すことはとても苦労しました。教えてもらってできるものではないので、とにかく味を研究して研究して、月花堂の味を出せるようになりましたね。

薄皮まんじゅうは、同じ名前のものは他でも買えます。ウチよりも安いところもいくらでもあります。

でも、値段で判断して「安いから買う」のではなくて、ウチのあんこの味、月花堂のまんじゅうの味が好きだ、ということで買って欲しいですね。

-あんこ含め、商品の味が自慢なんですね。笑び餅のことも教えてください。

笑び餅は受注生産で、事前予約をしてもらう必要があるんですけど、近年とても人気の商品です。

1個250円するんですけどね。ちょうど注文が入って作っていた所なので、コジロウさんも1つ食べてみてください。

- (1ついただきました) ..おいしい! とっても柔らかいです。中にあんこが包まれているとは思いませんでした。

本わらびを3種類ブレンドしていて、餅はとてもやわらかく仕上げていて、あんこを中に包んでいます。

このわらび餅の製法は、全国でも限られた職人しかできないです。

やわらかすぎるので、普通の人はあんこが包めない。


私は名古屋のわらび餅で有名な「芳光 (よしみつ)」 というところで修行をして、この技術を身につけました。

芳光は、多くの有名人も絶賛の店です。


芳光での修行では、わらび餅の「やわらかさ」に関する重要さを学びましたね。

少しでも間違えるとダメです。大切なやわらかさにピタッと決めるレシピ、テクニックがあります。

 -本当にしっかりした修行を経験された職人さんなんですね。

和菓子は、材料の決まった分量に対するシビアさが特に高いです。

"適当に配合しながら味を調節して作る"というような曖昧な作り方では上手くいきません。

味を決める分量があって、それをピタッと合わせて作っていかないと、望んだ味にはなりません。そこが難しいところですね。


修行で親方が「金を積むより信用を積め」と言っていたのを覚えています。

金勘定にこだわるのではなく、味で勝負してまずは信用を得る。それが和菓子屋には大事なんです。

-いやー、もうボクと話をしながらも、作業を止めずにサッササッサと動く手、量りを睨む鋭い目に本物の職人仕事をひしひしと感じています。


和菓子職人、短大 助教、がんサバイバー

-次に、政秀さんのことももう少し詳しく教えてください。

私は、生まれも育ちも弥富で、大学を出るまでここにいました。

22歳から6年間は名古屋に出て、先ほどお話しした和菓子修行を積みました。

日中は働いて、夜には菓子作りの勉強という生活でしたね。


その後、この店に戻ってきてずっと父親を手伝いながら働いています。

また、菓子作りに関する国家資格をいくつか取得したこともあって、32歳の時に名古屋文理大学短期大学部から話があり、助教として今も教壇に立っています。

大学では和菓子に関すること以外に、洋菓子やパン作りに関することも教えています。栄養士の資格もあるので、給食に関することも教えていたこともあります。

-大学の先生でもあるんですね!!そして和菓子だけではなくパンもされているというのが興味深いです。

パンも好きなんです。和菓子とは全く別物なんですけど、面白くて、将来的にはパンの事業もやりたいなと思っています。


今までも、近くの学校のPTA主催の親御さん向けパン教室とか和菓子講座みたいなことは何度かやってきました。

お店でパン教室をやりたいなと思ってはいますが、今のままではちょっとスペースが足りないですね。なんとか考えて進めたいです。

-パン教室、パン屋さんいいですね。弥富市内では、"あきらぱん"さんとかスーパー内のパン屋さんなどありますが、ちょっと他に比べてパン屋さんが少ない印象です。パン屋さんの開業、心待ちにしています!
-もう少し、政秀さんの将来の展望とかを教えてください。

そうですね、明るく捉えて欲しいんですけど、実は私はがんを患っていまして、ステージⅣなんです。


去年2018年の8月にがんが発見されました。なんか調子が変だなと思って病院に行った所、がん発見、即入院。

それで昨年はお店を閉めていて、周りの皆さんは驚かれたと思います。

当時、店をそろそろリフォームしていこうと具体的にプランを詰めてまさに工事が動き出そうという矢先のことでした。


幸いなことに、100人に数人しか適合しない薬が適合しまして、今は店を再開し、週4日で様子を見ながら開けていますね。

以前は週1日の休みで働いていたので、このまま順調に行けばまた戻したいなとも思いますが、そこは無理しすぎないように気をつけながら様子を見ています。


将来展望という話でしたが、今はこうして働けているのが嬉しいのです。


待ってたよ!の声に支えられて。おいしいの前に出る笑顔を引き出したい

-すみません、聞いてよかったですか?

ぜんぜん構いません。Webにも載せてください。

苦しむ治療はやめて欲しいと言いましたし、がんと宣告された時、どうせ終えるなら人生楽しんで過ごしたいと思ったんですね。

だからあまり気負わずに、がんのことも周りにオープンに話をして明るく生活していますね。


店を再開する時は「がんを患った人が作る和菓子を食べたいだろうか?」と自問したことはありました。でも、親方もがんを克服して明るくされているという事実があったのも背中を押して、自分も明るく振舞っていこうと決めました。


店を再開した時、「待ってたよ!」と店に来てくれる常連さんがいて本当に嬉しかったのを覚えています。

-がんのこと、お話ししていただきありがとうございます。本当に素晴らしい方に師事されたんですね。弥富の常連さんも暖かいですね。

そうですね。弥富のお客さんもいい人ばかりです。

弥富は都会でも田舎でもなく、病院もあって交通の便も良く住みやすい。

住んでいる人たちはいい人が多くて、まちとしては発展もして欲しいですが、住んでいる人たちはこのままでずっと続いていって欲しいですね。


スイートハートプロジェクトに参加していますし、数年前には愛西の佐屋高校と連携して弥富の文鳥文化を広めるために文鳥の和菓子が作れないかと相談いただき、文鳥大福を企画したり、文鳥練り切りを高校生に作ってもらったりしました。

弥富の文化とコラボする企画も面白いです。

-最後に、都築さんにとって和菓子とは?

和菓子といえば、味です。これに尽きます。


それから、月花堂のわらび餅の商品名は「笑び餅」と言うんですけど、私は美味しいものを食べた人の笑顔が好きなんです。

本当に美味しいものを食べた時は「おいしい」って言葉を出す前に笑顔が先に出ます。その最高の笑顔を引き出すお菓子をこれからも作っていきたいですね。

-今日は本当にありがとうございました。



わらび餅作りなどに指折りの技術を持つ和菓子職人である都築さん。

製菓、製パンなどを専門とした助教でもありつつ、がんと闘病しながら日々を楽しく大切に過ごしていらっしゃいます。


お店は、以前よりは営業日が減ったそうですが、絶品のあんこを求めてぜひぜひアクセスしてみてください。


※ご長男が自転車にハマっているそうで、大の自転車好きのボク(コジロウ)は、このあとご夫婦とともに自転車話に花を咲かせました。



■月花堂

〒498-0031 愛知県弥富市平島町大脇19-2

0567-67-1913

営業:火曜、水曜、土曜、日曜