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スペシャル対談 真山隼人×京山幸太 2019年7月号より

2019.07.21 09:27

 今回の十三浪曲寄席通信は1周年を記念して、真山隼人、京山幸太の二人に同時のインタビューをしました。どんな空気になるのかなとドキドキしていましたが、実際始まってみたら想像以上の盛り上がり!インタビューの録音時間は過去最長。ただし!使える部分は短い…(笑)。それでも、この熱量は伝えたいと思い、一生懸命にまとめました。伝えたいポイントはとても盛り上がったことと、国本はる乃さんとの共演を隼人さんも幸太さんもとても楽しみにしていることです。

―最初は今更ですが、浪曲の魅力についてお聞きしたいと思います。実は私も浪曲を知らない人から浪曲の魅力を聞かれることがあるのですが、それに答えるのが意外と難しいと感じておりまして。お二人は浪曲を知った時、どういうところに魅力を感じたのでしょうか。

幸:これは隼人兄さんとは絶対違うと思うんですけど。自分の場合は初めて浪曲を聴いた時に、三味線と浪曲師の二人で成り立つ芸能であるということに惹かれました。それが一つの完成形ではあるけど、シンプルな形やからこそ、逆にまだ新しいこともできると思ったような気はします。当時はそういう未発掘の魅力を感じました。

―隼人さんはどうですか。

隼:ぼくは生の浪曲を初めて観た時に、名人の声、節、そして何というか・・・不動の泰然自若の構えに感動しましたね。それと余りにも浮世離れし過ぎた、古いを通り越して、初めて観る者には新しささえ感じる浪曲の空気感。それで客席のおじいさん、おばあさんがすすり泣きをしていて、「すごいなぁ」と感じたのが最初ですね。

―ちなみに、それはいつの話ですか。

隼:9歳とか10歳くらいの時ですね。小学校サボって、一人で名古屋の浪曲大会観に行ったんです。

―すすり泣きしている人がいることより、隼人さんの方がよっぽどすごいです(笑)。

隼:いやいや、知識量を誇るおじさんたちに浪曲の話を聞かされたりしながら、素直に周りの人から飴とか貰ってました。

幸:だから、絶対違うと思ったんですよ!(笑)

隼:いや、知った年頃は違うけど、浪曲の魅力が声、節って思ってるところはいっしょやで。

幸:たしかに、そうですね。ただそれがちょっと変わりつつあるのかなっていう心配もあります。

―変わりつつあるというのは。

幸:節の良さよりも、話の筋の面白さを求められるようになってる気がします。

隼:それは実は昭和初期からあって、二代目・吉田奈良丸先生って節が良いっていうイメージなんですけど、昔の速記の台本を見るとめっちゃ笑かしてて、ちゃんと物語として聞かせてるんです。

 ぼくは節から浪曲に入って、名人の音源とかを聴いて、「なんといい節やろ」と思ってたんですけど、よく考えたら、ええ加減な台本もあるんですよ。じゃあ、内容もしっかりさせたらもっとウケるのではないかっていう視点から、しっかりさせた人が、自分の中では初代・京山幸枝若師匠と二代目・春野百合子師匠、このお二人です。

 今の浪曲界でも声のある人は声で押していったら良いと思うんですけどね。そういう人に内容よりも声で圧倒させる浪曲の一番の面白さというのを体現してほしいなあと思う半面、自分はそこまで声が良くないから内容に頼っていかなアカンなっていう寂しさです。

―なるほど。お二人はまだ20代ですが、今の段階で自分の声は良くないと思うことがありますか。

幸:いわゆる美声と作り上げる声は違うものですからね。自分は生まれ持った美声ではないと思ってます。師匠からも、美声でないからこそ、ええ声に聞かせる努力や工夫ができるって言われてます。例えば、こぶしはあった方が良いですけど、こぶしが無くても(冨士)月の栄師匠のような名人もいるし。

―月の栄師匠も唯一無二の魅力がある芸ですよね。

幸:振り絞った節と言いますか。それと啖呵が上手すぎる。

隼:あと、月の栄先生は節の時にテーブルから消えるっていうね。(月の栄先生のモノマネをする)。あの節は難しいですよ。こぶしはないと言われながらも、浪曲でいう泣きのこぶしが入ってるときがあるんですよ。

※節の時にテーブルにかがみこむようにして声を振り絞るのがお馴染みだった。

幸:やっぱり生まれ持ってこぶしが回らないからこそ、編み出した芸やと思うんですよ。それがすごいな。

隼:ぼくもこぶしは無いんですけど。こぶしが回らない人の方が面白い芸ができると思っています。ということで話が脱線してしまいました。

―私も脱線を助長してました。でも、浪曲の魅力は色んな視点から聞けたと思います。

―次は印象に残っている十三浪曲寄席の公演に関してです。それぞれ印象に残っている公演を教えてください。

隼:これはぼくから言った方が良いかもしれない。ちゃんとまとめてるから。ぼくが印象に残っているのは、まず、たま兄さん。ぼくは子どもの頃からたまファンで、憧れの存在やったんですよ。面白い、スマート、落語と戦っている、師弟関係が素晴らしい、それくらい大好きやったんです。これまでほとんど接点がなかったのを、十三浪曲がきっかけで、会に呼んでいただいたり、自分の会にも来てもらうようになりました。集客の仕方や新作の作り方でも、勉強させていただいてますね。あとは、何と言っても立川笑二会ですね。食中毒でお馴染みの。

※2019年1月公演で真山隼人は楽屋まで来ていたが、食中毒のため休演を余儀なくされた。

―あれは忘れられないですね。

隼:東京に行ったら、面識のない噺家さんが親しく話しかけてくるんですよ。何かと思ったら、食中毒の子って知られてるんですよ。笑二さんがマクラにしてたから。あと印象に残っているのは新治師匠の会ですね。

―「あゝヒロシマ」をネタ卸しした会ですね。

隼:あのネタをやりたかった時に、ここぞというゲストを呼んでくださって、本当に嬉しかったです。「あゝヒロシマ」はやりたくても、内容的にやるタイミングが難しいので、新治師匠との共演やからこそネタ卸しできました。はい、スムーズに話をまとめらました!

幸:意外とすぐ終わりましたね(笑)。自分の場合は、もちろん全部印象には残っているんですけど。

隼:それはぼくも言ったことにしといてや!(笑)

幸:はい、隼人兄さんも言ってましたが、全部印象に残っているんですけど(笑)。都師匠ですね。公演後、自分が繁昌亭に行った時に都師匠は出番終えてもういなかったのですが、自分がいることを知って、わざわざ戻ってきて、「幸太さん、十三はありがとう」って言ってくれたんです。それが嬉しかったし、お人柄が印象に残りました。あと、直近の公演ですが、南海先生です。同郷ということで、元々すごく親しく話かけてくださってて、今回初めて共演できたのが、有難いなって印象に残ってます。

―なるほど。南海先生とは楽屋で話も盛り上がりましたか。

幸:楽屋は初月姉さんが南海先生ファンなんですよね、だからずっと初月姉さんが話してました(笑)。そこで盛り上がってました。

―初月さんが盛り上がってたんですね(笑)。

―最後に1周年記念公演に向けた意気込みをお聞かせください。

幸:何の演目をするのか迷ってるですよね。どういう方向でやるべきなのか、迷ってます。出番はトップですよね。

―そうです。幸太さん、はる乃さん、隼人さんの順番を考えています。

幸:任侠をトップでするのもおかしいかなと思ったりして・・・。

隼:いや、ぼくはいきなりブッこんでほしい。おれで終わるんやくらいの気で、最初からバァっとやってほしい。「隼人がなんや」、「はる乃がなんや」という気でドンっと!

幸:そう言ってもらえるなら、そういうつもりで考えようかな。

隼:お客さんもブッ込んでいくのが好きやと思うで。はる乃ちゃんは前会った時に、大阪で自分の節を聴かせたろうっていう自信が伝わってきたな。

幸:NHKの若手紹介でも良かったですしね。あれ、また脱線してますか(笑)。何の話でしたっけ?

―意気込みでした(笑)。3人での共演は初めてですよね。はる乃さんとの共演に関して思うことはありますか。

幸:NHKの若手紹介の時に見て、ずっと共演したいなと思っていた人なので、今回の機会が嬉しいです。

隼:ぼくははる乃ちゃんに大阪の風に当たってもらいたかったんですよ。ぼくは、はる乃ちゃんが初めて大阪に来るときに「大阪は未だに舞台にみかんの皮飛んでくるで」とか言うて脅しちゃった前科があって。その時は舞台終わってから、「飛んでこなかったじゃないですか!」ってはる乃ちゃんに怒られたんですけど(苦笑)。

 そういうこともあったけれども、今東京で彼女も成果を出してきている。このタイミングで、大阪に来ることで、また新たに感じることがあると思うんですよ。(春野)百合子師匠とか聴いてきたお客さんたちの前で、はる乃ちゃんにもあがいてもらいたい。この三日間で何かを掴んで、また東京で進歩する。これがまた他の若手にない強みになるはずです。

この会はほぼ同い年の三人会が初めて実現するという、凄い会ですよ。互いに鼻をへし折られて悔しい部分もありつつ、楽しかったっていう部分もある本当に素晴らしい刺激のある会になると思います。