福田(オーケストラホルン)
皆様初めまして、オーケストラホルンの福田(写真右)と申します。
最寄り駅と自宅の道程に遊歩道があり、そこを通ると雨が降っていなければ群れをなしている鳩が散見できるんですが、この程、どの群れにも属さないで行動している鳩がいることに気づいたのです。
そういう鳩はいつも目撃できるわけじゃなく、私の知る限り何の予兆も法則もなくそこにいて、どのグループからも離れていて、ある日は一羽黙々と地面をついばんでいたり、またある日は一羽身をかがめて羽を伸ばし日光浴をしているのです。
いつからか私は遊歩道を通る時に、その孤独な鳩を目撃するのを期待するようになっていました。
“きっと彼らは、疎外されたのではなく、何かを追って自ら孤独を選んだに違いない。
このままここに居たら大切な何かが消えてしまうことに気づいて、だから孤独を選んだんだ”
そんな空想を抱いて、私は彼らを目撃した時は、親しみを持って、
「元気かい?」
「答えは見つかったのかい?」
「後悔はしてないの?」
とこんな具合に心の中で話しかけるようになっていました。
そしてある日のこと。
ふと思いました。
「私と同じように単独行動する鳩を見て、興味を抱いている人がいるのではないか?」
私はスマホで“鳩 単独行動”と検索してみたのです。
しかしスマホは全く予想のしていなかった情報へ私を導きました。
なんでも普段我々がよく目にする集団行動をしている鳩はカワラバトといって、他にキジバトという体全体が茶灰色で習性として単独行動をする鳩がいるとのことなのです。
自分の愚行を呪いました。
もし私が遊歩道で見かけていた孤独な鳩がキジバトだとしたら、私の空想は習性という極めて現実的なものに嘲笑われ、汚され、消滅するはめになるのです。
居ても立っても居られず私は家を飛び出し、遊歩道に向かいました。
遊歩道に踏み入るとキジバトの画像が写るスマホを片手に、辺りを見渡しながらゆっくりと道内を進んでいきました。
するとすぐに群れに属さない鳩を発見しました。
その一羽はベンチ脇で腹を地面につけ羽を伸ばしています。
私は祈るような気持ちで近づいていきました。
・・・それはキジバトでした。
スマホの画像まんまのキジバトでした。
その日から遊歩道を歩くと何度となく孤独な鳩を目撃しましたが、やはり彼らは、生まれつき孤独が当然な現実を生きるキジバトでした。
現実に汚された私の空想は散り散りになり、孤独な鳩に私が話しかけることは二度とありませんでした。
さて物語には続きがあります。先日、夜勤明けに遊歩道を歩いていると、目前のベンチの上に群れから離れた一羽の鳩が、緑風になびいて突っ立ているのに気がつきました。
私は気にもとめず、その横を通り過ぎようとしましたが、何の気なしに再度、一羽の鳩を一瞥したのです。
違和感が瞬間に私の歩みを止めました。
一羽の鳩はキジバトではなくカワラバトなのです。
しかしその鳩はこの遊歩道で見たことないくらいやせ細っていて、羽もボッサボサで、馬鹿っぽくぼーっと緑風に翼をなびかせており、でも確かに現実を嘲笑うように屹立しているのです。
彼は孤独を選んだのでしょうか。
私はじっと彼を眺めた後割と大きな声で、親しみをもって話しかけました。
「いやお前は群れに帰れ!」
最後に伝えたいことがあります、ドラマビーチボーイズに出演していた反町隆史さんは当時24歳なんですよ。
皆様良い夏を。