SDGs(Sustainable Development Goals)
最近、新聞やテレビの中でよく聞くようになった「SDGs(エスディージーズ)」という言葉。学校の授業や仕事を通じて「SDGs」を知った、という人も多いのではないでしょうか。とはいえ、日本でのSDGs認知度は19%とまだまだ低いのが現状のようです。
本校の教育活動における「ICT教育」と「SDGs」の取組みの方向性などを紹介いたします。
あらためてSDGsとはなにか 、SDGsが掲げている目標と、実際の取り組みを解説していきます。
【 seitokuICT教育で活用するオリエンテーション動画 : SDGs紹介動画 】
1 SDGs(持続可能な開発目標)とは
SDGs(持続可能な開発目標)とは、“2030年までに達成すべき17の目標”SDGs(Sustainable Development Goals)とは、持続可能な世界を実現するためのグローバル目標のことです。
SDGs(エスディージーズ)」とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界のリーダーによって決められた、国際社会共通の目標です。
201年9月の国連サミットでは、2015年から2030年までの長期的な開発の指針として、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。この文書の中核を成す「持続可能な開発目標」をSDGsと呼んでいるのです。
SDGsの前身である「MDGs」に代わって定められたSDGsは、2000年に国連のサミットで採択された「MDGs(エムディージーズ/ミレニアム開発目標)」が2015年に達成期限を迎えたことを受けて、MDGsに代わる新たな世界の目標として定められました。
それまでのMDGsは、以下の8つのゴールを掲げていました。
ゴール1:極度の貧困と飢餓の撲滅
ゴール2:初等教育の完全普及の達成
ゴール3:ジェンダー平等推進と女性の地位向上
ゴール4:乳幼児死亡率の削減
ゴール5:妊産婦の健康の改善
ゴール6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止
ゴール7:環境の持続可能性確保
ゴール8:開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
(外務省ホームページより)
「極度の貧困と飢餓の撲滅」「HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止」などが織り込まれていることからも分かるように、MDGsは先進国による途上国の支援を中心とする内容でした。
しかし、MDGsについては、途上国からこんな意見も出ていました。
「乳幼児死亡率の削減など、発展途上国が抱える問題を挙げ、解決策を探った。だが、その内容は先進国が決めており、途上国からは反発もあった。進展には地域の偏りなどの「見落とし」があったとも指摘された。」
(朝日新聞デジタル「SDGsって何?」より)
それを受け、2015年に新たに策定されたSDGsは、誰ひとり取り残さないことを目指し、先進国と途上国が一丸となって達成すべき目標で構成されているのが特徴です。
2 SDGsの「17の目標」とは何か?アイコンとともに紹介!
持続可能な世界を実現するためのグローバル目標であるSDGs(持続可能な開発目標)に掲げられた“2030年までに達成すべき17の目標”について紹介します。
肝心のSDGsの中身、「持続可能な開発目標」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。SDGsは「17の目標」と「169のターゲット(具体目標)」で構成されています。アイコンとともに、それぞれを見てみましょう。
貧困や飢餓といった問題から、働きがいや経済成長、気候変動に至るまで、21世紀の世界が抱える課題を包括的に挙げていることが分かると思います。
3「169のターゲット」は目標をより具体的にしたもの!
この17の目標を、より具体的にしたものが「169のターゲット」です。少し長いですが、目標1を例に、実際のターゲットを見てみましょう。
「目標1:貧困をなくそう」に付随するターゲット
1.1: 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1.2: 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。
1.3: 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
1.4 2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
1.5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
1.a あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
1.b 貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。”
(外務省仮訳「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」より)
このように、17の各目標に対し、それらを達成するために必要な具体目標(ターゲット)が、それぞれ5から10程度、計169設定されています。
(参照)169のターゲットの詳細はこちら(ユニセフ 持続可能な目標とターゲットより)
(リンク)
4 いまSDGsが経済界で話題になっている理由
日本でSDGsが注目される前から、世界ではそれに先駆けた動きがありました。きっかけは2006年、当時の国連事務総長であるアナン氏が金融業界に向け、責任投資原則(PRI)を提唱したことです。
1. 私たちは投資分析と意志決定のプロセスにESGの課題を組み込みます。
2. 私たちは活動的な(株式)所有者になり、(株式の)所有方針と(株式の)所有慣習にESG問題を組み入れます。
3. 私たちは、投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求めます。
4. 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います。
5. 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します。
6. 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。”
(「責任投資原則」より)
……難しい言葉が並んでいますが、ここで提唱されたのは、機関投資家(大規模な投資を行う企業・金融機関などの投資家)が投資をする際に、ESG[環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)]課題を反映させること。
つまり、投資家は企業への投資をする際に、その会社の財務情報だけを見るのではなく、環境や社会への責任を果たしているかどうかを重視すべきだという提言が国連によってされたのです。
日本では、2010年に世界最大級の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRIに署名。日本企業は機関投資家から、汚染物質の排出状況や商品の安全性、供給先の選定基準や従業員の労働環境……といった、ESGにもとづく非財務情報の開示を求められるようになりました。
これをきっかけに、投資を受ける日本企業の間にも、もっとESGを考慮しようという動きが広まりました。SDGsはいま日本企業にとって、ESGを考える上での大きな指標になっているのです。
5 いま中学校高等学校の学びの中でのSDGsの取組みが必要な理由
本校でのICT教育推進では、「Society 5.0」の新たな社会で共通して求められる力は何なのか、社会を牽引していくためにどのような人材が必要なのか、将来の社会像を具体的に描きながらの学びが進んでいます。
では持続可能な社会には何が必要なのでしょうか?
キーワードは「SDGs」です。
「SDGs(持続可能な世界を実現するためのグローバル目標)」では幅広い視点から持続可能な社会開発に向けて必要なことを掲げてくれています。
SDGsとは「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALs」の略ですから、SDGsに関連した学びを深めていけば「SDGsとは”全世界全ての人たち”が”持続的”に”人らしく生きる"ための開発目標」を意識した「見方・考え方」が12歳から18歳の学びの中で育まれることとなっていきます。
(下の図は、本校のICT教育における「Society5.0を見据えたseitokuICT教育」)
6 SDGsの考え方と構成からみた教育テーマとは?
SDGsを目指す対象として中心になっているのは5つのPで表されています。
Planet
・責任あるのあるモノの消費と生産をすること。
・天然の資源の持続可能にしていくこと
・気候変動への緊急な対応から地球を守ること。
People
・すべての人の人権が大事にされること
・すべての人の人権が気高くあること
・すべての人の人権が平等で潜在能力を発揮できるようにすること
・貧困と飢餓を終わらせること
・ジェンダー(性の)平等を達成すること
・すべての人に教育、水と衛生、健康的な生活を保障すること
Prosperity
・すべての人が豊かで充実した生活を送れるようすること
・自然と調和する経済、社会、技術の進展を確保すること
Peace
・平和で、
・かたよりがなく正しく、
・恐怖と暴力のない、
・全ての人が受け入れられて参加できる世界をめざすこと
Partnership
・政府や民間セクター、市民や社会、国連機関を含むさまざまな関係者が参加する、グローバルなパートナーシップにより実現をめざす
持続可能な社会をつくるためには人の権利だけでなく、環境や経済も大事にすることを目標にしていきましょうということです。
これを達成するために17個の開発目標と169個の具体的なターゲットが決められています。
7 SDGsの達成に向けた日本の教育の課題
実際にSDGsの達成に向けて、日本政府や日本企業はこれから、日本の教育ではどのような取り組みを行ってゆくのでしょうか。
2018年7月にBertelsmann Stiftung(ベルテルスマン財団)と(SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)から発表されたSDGs達成ランキングにおいて日本は156カ国中15位。トップ5は、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ドイツ、フランスです。
日本は、17の目標のうち、達成されていると評価されたのは、「目標4:質の高い教育をみんなに」のひとつのみ。そのほかの目標は未達成となっています。
(「SDG Index and Dashboards Report 2018. New York: Bertelsmann Stiftung and Sustainable Development Solutions Network (SDSN)」より。
上の図は2018年7月に発表された日本のSDGs達成度を評価したものです。達成度の高い順から緑(達成している)→黄色→橙色→赤色(深刻な課題がある)と評価されています。
特に「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」「目標12: つくる責任つかう責任」「目標13: 気候変動に具体的な対策を」「目標14: 海の豊かさを守ろう」「目標17: パートナーシップで目標を達成しよう」の5つに関しては、4段階の評価でもっとも低い達成度という評価です。
2018年7月にニューヨークの国連本部で開かれたSDGsに関する政治フォーラム(持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム)では、SDGsの採択から3年経った現時点における各国の取り組みの現状が共有されました。
日本は同フォーラムで、2030年に向けて民間企業および市民団体へのSDGsの取り組みを普及・拡大を促進しながら、“オール・ジャパン”でSDGsに取り組むことを表明。政府は地方創生と中長期的な持続可能なまちづくりを推進すべく、積極的にSDGsに取り組んでいる29の自治体を「SDGs未来都市」として2018年6月15日に選定。
その中でも循環型の森林経営に取り組む北海道下川町をはじめ、特に優れた取り組みと認定された10事業に対して上限4000万円の補助金制度も設けられました。政府が地方のSDGsの取り組みを支援しながら成功事例を増やすことで、全国的に持続可能なまちづくりの普及を加速させることが狙いです。
その政府の取り組みを後押しするように、同年6月には、企業がSDGsに取り組む際に留意すべきポイントを整理し、明文化したSDGs Communication Guideを株式会社電通が発表しました。
8 本校の従来からの教育活動である「6年間全員で毎日の一斉会食教育」をSDGsの視点から見た取組み(今後の取組み案)
現在の「6年間の毎日の全員の毎日の一斉会食」は「食育活動」として本校のセカンドカリキュラムとしています。
これをSDGsのカテゴリーで見ていくと、扱いは「12sdgs」となってきます。
会食と暮らしと学びを総合的に実践する食育活動です。
本校での中学校高校の一貫教育では、聖徳大学の栄養士の先生方の監修による成長期の食事のあり方や食に関わる生産過程なども学んでいます。
(リンク 私学通信 「全校が集まる会食でマナーと感謝を育む」)
いわゆる給食で振る舞われる食事の食材の中で、いくつかの食材は学園の北蓼科高原体験学習を実習農地にある田畑で自分たちで栽培したものが使われ、体験学習での飯盒炊爨でのご飯はこちらも敷地周辺に育つ木の枝打ちしたものや倒れた木を使って薪窯で炊いています。
(ジャガイモの収穫)
今後、この循環型学習では、ICT教育を加えることにより、食事にかかった費用や栄養、生産地など料理の情報のほか、つくる過程での課題などを考えたり伝えあったり、生活に欠かせない食事からさまざまなことを学び、持続可能な社会づくりを考える力を育むプログラムを作っていくことが可能です。本校の普段の学校での毎日のSDGsの学びとして捉えていく視点を備えれば、これからの社会課題に主体的で対話的に向かい、多くの課題解決が難しい問題にも力を合わせて取り組める力が育っていくものと考えています。
今後の学校での取組みでは、SDGsに関連した生徒の取組みを紹介していく予定です。