航路
開いて閉まらなくなった蛇口ふたつ。
いや4つ。
久々にこんなに閉まらなかったな。
船を軽くしないと、重いと燃料を多く使ってしまう。
重荷を降ろすのを手伝ってくれて
これから大変だろうから こんなものでよければ って食料だとか生活用品を手渡してくれる
その手の温もりに 人のあたたかさを感じた
人間関係って正直面倒
感じることも人それぞれ
傷つく 喧嘩する そして疲れる
気を使う
それでも人と生きていくしか道はない
思うことを我慢しすぎると
自分のストレスがコップから溢れて
身体の不調がやってくる
そしてやがて
死にたい なんて思いが過ったり
それで死んでしまう人が毎年たくさん
周りも気づかない
自分も気づかないフリ
限界がきているのに
そんな悲劇が意外にも
すくそばで起こっている
隣で笑顔を振り向いている
愛しい人
その人に頼れる人はいますか
自分に愚痴一つ溢さず
徹夜で仕事と向き合う人
最近笑顔を見ていない
最近姿を見ていないあの人
口数が減って 意見を言わなくなった仲間
自分が生きることにいっぱいいっぱい
それでも周りを支えて支えられて
言葉にせずとも分かる
なんてエスパーみたいなこと
どれだけ技術は進歩しても
分かるわけなんてなくて
言えないなりに
警告を出している
言える環境をつくる
組織なら一人一人に話しかけて
はい、いいえで返せる質問をする
そこから話を広げる
それだけでいい
人に必要とされること
どうせ自分なんてって思っている人は
自分なんかこの世界に必要ない
生きているだけ無駄な存在
辛い
そんな思いを抱えている
誰でもそうなる可能性はあると思う
真面目な人ほど
人がいい人ほど
まずは友だちから、身内から
少しでも自殺という行動選択を選んでしまう人を減らす為に。
船もそろそろ出発できそうだ。
航路の計画がまだ甘い。
岩盤に乗り上げてしまう場所
渦潮を避けて
三日後は荒天の可能性
どう乗り越えるのか
遠回りしてでも
無事に目的地にたどり着く為に
どうすべきか。
ぽたりぽたりと鳴らす蛇口をしっかり締めて
麻のハンカチーフで雫を拭い
コンパスを取り出した。
もうすぐ夜が明ける。