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ダンス評.com

北尾亘(Baobab)「芸劇danceワークショップ発表会 東京ディグ/ライズ TOKYO DIG/RISE」東京芸術劇場 シアターイースト

2019.07.23 16:23

Baobab主宰のダンサー・振付家の北尾亘氏が、約10日間のワークショップを経て参加者たちと創り上げた舞台。参加者は小学生から大人まで、ダンス初心者、ダンサー、俳優など。

ワークショップではレクチャー講師として木ノ下歌舞伎主催の木ノ下裕一氏や浄土宗の住職、阿波おどりをしている人などを招き、日本に古くからある踊りやリズムなどについて吸収したそうだ。そこで体験した踊りや、レクチャー後に講師に宛てて書いた手紙の音読などが、公演に取り入れられていた。

「悪い芝居」所属の岡田太郎氏による楽曲や演奏の音楽も素晴らしい。

開演前にマイクを装着した北尾亘氏が登場し、観客に語りかけ、体を動かすよう促して、舞台に巻き込んでいく。開演すると、冒頭で北尾氏がラップを披露。ラップまでできるのか!と驚いた。北尾氏もところどころ登場して踊るのだが、踊り出すと空間が引き締まったようになって、見ている方はスッと目が引き寄せられて踊りに集中する。この緊張感、集中度がたまらなくよい。

参加者たちはいわゆる「踊れる」人もいるし、逆にややぎこちない動きをする人もいるが、みんなが楽しそうで、それぞれみんなに持ち味を発揮させる見せ場があった。参加者の光る個性に気付いてそれを生かせる場面を創るというのは、北尾氏のすごい才能。ダンスの経験があまりない一般の人に対してもこのようなことができる振付家はとても貴重だし、今後ますます活躍の場が増えると思う。

コンテンポラリーダンスのワークショップでウォームアップとしてよく行われる、みんなで歩き回ったり、走ったりするワークを使っていたり、北尾氏がワークショップで行う、日常の動作からの動きをする場面があったり、これもコンテンポラリーダンスでよく行われる、ビニール袋やティッシュのように軽いものに息を吹きかけて人に受け渡していくワークを使う演出があったりと、ワークショップから無理なく舞台作品に落とし込んでいく様子を少し想像できた。

踊りが上手な人は見て分かるし、目立つけれど、そうではない人が一生懸命動いている様子にも引き付けられる。この作品に限らず、演技があまり上手ではない演劇作品を見るのは正直つらいときもあるが、ダンスの場合は、技術的に優れていない、いわゆる「素人」でも、なぜか結構「見られた」りする。むしろ、「何だろう、これは?」と気になって、ずっと見てしまう。上手下手を超えた、何らかの魅力を発散しているのだと思う。ダンスが「好き」という気持ちがあふれるエネルギーや、予測のつかない動きに不思議な引力があるのかもしれない。

ラストのかっこいい音楽と踊りは、Baobabの公演のために作ったダンスだったのだそうだ。道理ですごくかっこよかったはずだ!大地を踏みしめるような、血が煮えたぎってくるような、熱い興奮を覚えた。一目でプロのダンサーが踊るような振付だと分かるが、出演者みんながそれにくらいつくようにして踊っている姿が本当にかっこよくて、本当にうらやましかった。舞台で輝くとはこういうことか、と思った。

北尾氏のかけ声で満席の観客たちもダンスの世界に連れていかれて、一体感を味わった。楽しい公演だった。


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2019年7月20日 (土) ・21日 (日)

一般2000円、25歳以下1000円


出演:青木彩乃 石川詩乃 伊藤ナツキ イトーヨーコ 大上久美子 大津歩未 加藤朱莉 加藤知夏 椛島一 菊地もなみ 髙下七海 斎木穂乃香 佐々木隼人 角井仁美 中田精 中田環 中田禮 生田目麗 廣瀬拓哉 水口結 森田望友 ミツルヤスマサ 山森大輔 山田麻子 北尾亘(Baobab) 米田沙織(Baobab) 中屋敷南 植田崇幸 岡田太郎(悪い芝居)

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