聴覚障害者の参政権、政見放送・街頭演説に然るべき配慮が十分にあったか?
2019.07.24 06:08
聴覚障害者にも、参政権を有します。
しかし、それを適切に行使するには、本人が100%理解した状態でなければならない。
例えば、候補者が街頭演説を行っている場合、手話か音声認識アプリなどを使わなければ何を話しているのかも分かりません。
昭和58年まで「立会演説会」と呼ばれる演説会には手話通訳が付いていました。
この「立会演説会」が公職選挙法改正で昭和58年に廃止されたのちに、「政見放送」が出来ました。
「政見放送」では、下の①―④には、政党・候補者の判断により手話通訳を付けることが可能でした。
①衆議院「小選挙区」
②衆議院「比例代表」
③参議院「比例代表」
④都道府県知事選挙
しかし参議院「選挙区」だけが、2016年まで長い間認められませんでした。
2018年にようやく公職選挙法改正がされ、全ての候補者の政見放送などに手話通訳、字幕がつくと思われたが、実際の放送は候補者によって対応が異なり、聴覚障害者への情報保障は十分とはいえなかった。
今回から参院選選挙区の政見放送は、放送局で収録する従来の「スタジオ録画方式」に加え、候補者が独自収録した映像を流す「持ち込みビデオ方式」も選べるようになった。
衆院選の小選挙区では1996年から導入されており、候補者側が制作段階で手話通訳や字幕を付けることができるが、全員ではなかった。
法律では手話通訳者は「選挙運動員」かどうかがよく話題になりますが、手話通訳者は公職選挙法でも分かりにくい立ち位置にあります。
公職選挙法第197条の2(実費弁償及び報酬の額)によると、「報酬を受取ることができる人」を厳格に定めており、候補者の出陣式等で手話通訳をするために手話通訳者が雇われた場合には、報酬を受取ることが認められています。
ただ、その立場は「選挙運動に従事する者」とされ、いわゆる「選挙運動員」の扱いとなる。
つまり政治からは無関係、公正・中立の位置に立つべき手話通訳士が特定の候補者の代弁者とみなされることになり、誤解が生じる。
政見放送【選挙ミニ事典】 時事ドットコムより
2018年の法改正により参院選挙区の候補者の政見放送について、スタジオ収録に加えて自前の動画持ち込みが可能となった。映像に手話通訳や字幕を付けられ、聴覚障害者らが候補者の主張を理解しやすくなる。
参院選挙区以外は、手話通訳か字幕の一方を付与できる。衆院小選挙区は持ち込みが既に認められているものの、衆参の比例では認められていない。持ち込み動画の録音・録画費用は、1人当たり約290万円まで公費負担される。
「放送の品位」を保つとの理由から、持ち込みは政党公認・推薦の候補者に限られる。