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エンジニア以上に苦戦をする「UI/UXデザイナー採用」のブランディング構築を公開してみる

2019.07.28 22:00

おはようございます。ポテンシャライトの土屋です。

デザイナー採用において「グラフィックかWebか」という会話がされていたのはとうの昔。「WebデザイナーとUIデザイナーって、採用要件や採用手法全然違うんだ!」とわかってきた…

と思ったら、さらに「UX・CXまで出てきた・・・デザイナーの志向性、わかっているようでわからない。結局どうしたらいいの?」という方のために書きます。


一時期、日産がUXデザイナー求人をWantedly等で出したところ応募殺到し、デザイナー採用界隈をざわつかせました。2017年のことです。

今現在も求人がありますが、募集要件の一つ目に「スマートフォンアプリ、Web、ゲームなどのUIデザインの経験」とあります。自動車メーカが、デザイナー採用市場においてWebサービス・Web制作会社と採用競争をしている、と言えます。


デザイナーの志向性はここ数年で多様化し進化しています。

・「グラフィックからWebへ」の時代から、「リアル(モノ・紙)への回帰」の時代へ

・CX、UX(デザイナーによる体験創造)

・オンラインだけでなくオフライン(空間・ユーザー接点)のデザインへ


デザイナーがグラフィックからWebへ挑戦したいという動機で職場選びをしていたのはトレンドの2,3世代前だと思った方が良いです。

デザイナーの志向性の変化の一方で、デザイナー採用の成功パターンが見つけられず、求人打ち出しや母集団形成のノウハウが体系化されていないままの企業も多いのではないでしょうか。
また、選考においてもテイストマッチやセンスといった感覚的なもので左右されるがゆえ、採用のPDCAが回しきれずにいる、という課題もあるのではないでしょうか。


さらに、事業会社やWebサービス企業にてデザイナー採用は活況であり、少し以前のnewsですがシリコンバレーでデザイナー採用が過去5年で倍増したという話もありました。

UI/UXデザイナー採用市場は今後も競争環境が激しい状態が続きそうです。


ポテンシャライトはベンチャーを中心に100社以上の採用支援をしてきましたが(※支援先)、振り返ってみたら実にそのうち半数近くの45社ほどでデザイナー採用に携わってきました。

そのノウハウを一部公開します。


目次
(1) デザイナー採用のブランディング項目を整理したら、4分類15項目あった
(2) 採用成功企業の魅力の切り口6パターン

(3) デザイナー採用の時流

(4) まず着手するべきこと


(1) デザイナー採用のブランディング項目を整理したら、4分類15項目あった

ポテンシャライトにて過去採用支援に入った企業を分析してみたところ、デザイナーへのスカウトメールの返信率が40%をこえる企業が何社もある一方、10%をきる企業もありました。
各企業の特徴をひたすら洗い出し、また、実際のUI/UXデザイナーの方々との壁打ちを繰り返したところ浮かび上がったのが、このデザイナー採用のブランディング15項目です。

この15項目を分類すると4分類に分けられました。

「プロダクト・サービスブランド」をブランディングしていく手法
「UX・CXデザイン要素」をブランディングしていく手法
「裁量・制作体制」をブランディングしていく手法
「働き方・人事制度」をブランディングしていく手法

スカウト返信率が平均以上で、かつ複数内定をもらわれるような引き合いのあるデザイナーの方を採用できている企業には、このいずれかの分類で勝ちパターンがありました。
ここからは、デザイナー採用における魅力の切り口を詳細に6パターン取り上げます。この6パターンを一つでも、もちろん複数あるなら複合的に打ち出せる企業は強いです。ただし、どれにも当てはまらない、という場合に何からしたら良いのか?についても後述します。



(2) 採用成功企業の魅力の切り口6パターン

1. ものとしてのプロダクト(ハード)があること

IoTなど実際のハードウェアがあるプロダクトをもっている企業は人気です。家電と連携するIoT製品や、ウェアラブル端末などはイメージがしやすいかと思います。2の体験設計の要素も加わると、非常に魅力のある求人になります。

例えば日産のUXデザイナー募集への応募殺到の背景には、このような「Webだけでなくリアルな体験の設計をしたい」というデザイナーの志向があります。

※当社調べですが、IoTプロダクトを持つ企業では、スカウト返信率30-40%以上で安定しています。


2. Web.プロダクトの体験設計(UX.CX)

Web・ハードでのプロダクトにかかわらず、UX(User Experience)やCX(Customer Experience)の観点で携われるか、です。デザインを突き詰めていくと、どんどんリアルな顧客体験設計、さらには体験創出をしたい、という志向があるそうです。いちデザイン業務ではなく、いかに体験設計観点で携われるかが見られています。


3. リアルの体験設計(イベント・ユーザーコンタクトの場など)

自社イベントや出展の空間設計やれます!といった打ち出しの求人は強いです。Webにとどまらず、空間(導線や場づくり)やアメニティのデザインまで、デザイナーが携わる、といった情報が魅力になり応募が集まるという事例もあります。

また、UXリサーチ的に、リアルなユーザーと定期的に関わる機会があり、リアルな声をもらいプロダクトに反映できる、というのも魅力です。


4. プロダクトやデザインの思想を外部発信されている

デザイナーはnoteを中心に制作物やプロダクトの発信をよく見ています。
(エンジニアが「はてぶ」や「Qiita」、「Github」で情報共有するように、デザイナーの情報共有の主流は「note」らしいです。)

企業のデザイナーや経営者が、プロダクトへの想いやデザインへの想いを発信できているととても良いです。プロダクトやデザインだけでなく、企業の設立からの歴史をインフォグラフィックで示す、といった発信もバズりますし、親近感がわきます。逆に、経営者やプロダクトマネージャー、デザイナーが全く情報を発信していない場合はイメージがわきにくく応募に至りにくいようです。

例えば、こちらはプレイド社が作成したCXプラットフォーム「KARTE(カルテ)」の4周年を記念した「データで見るKARTEの軌跡」というインフォグラフィックです。

https://karte.io/infographic/2019/

さすがCXの会社という感じですよね。デザインへの力の入れ方やプロダクトへの想いを感じます。


5. デザイナーのキャリアパス・人事制度

こちらは一定規模以上の人数のいる企業で可能になるかと思いますが、デザイナーのキャリアパスをこんな風に考えていますよ、と打ち出せるといいです。

例えばプロダクト寄り(プロダクトデザイナー)や、組織寄り(デザインディレクター)といったキャリアパスです。この打ち出しをスカウトメールに記載し、「こんな風にデザイナーのキャリアを考えているんだ」と安心感につながっている事例があります。

デザイナーはエンジニアほどキャリアパスが体系化されておらず、これというロールモデルをみつけられずキャリアを積んでいる方も多いため、「こんな風にデザイナーのキャリアを考えているんだ」という魅力になります。

また、企業によってはデザイナーのプレゼンスが高くなく、デザイナー軽視の風土がある場合もあります。そういった懸念払拭にもなるでしょう。


6.  デザインやプロダクトが著名であること

※こちらは(4)’のようなイメージですが…。

やはりメルカリやクックパッド、freeeといった、著名で認知がある企業は人気です。UXに携わる場合、認知やユーザー数が大きいほどデザイナーとしてのインパクトややりがいが感じやすいことも、理由の一つではないでしょうか。



(3) デザイナー採用の時流

上記の背景には、デザイナーのトレンドというか時流があります。

「なぜ車やIoTなどハードでプロダクトをもつ企業に惹かれるのか?」
「なぜ空間の体験設計に惹かれるのか」


など、デザイナーの志向性の時代的な流れを考えてみると…
おそらく数年単位で、デザイナーの志向はこのような時流を辿っているのではないかと思います。

第1ステージ:グラフィックの時代。(DTP・ポスターなどのグラフィック)
第2ステージ:webやれないと価値が低い。webやらないといけない!Webへの転身。
第3ステージ:webやれて当たり前。

第4ステージ:webやTechから、レガシーへの回帰。リアルの体験設計への進化。


例えばWantedlyのご登録者のプロフィールをみると、「グラフィックデザインがやりたい」、「リアルな体験を作りたい」、「UXリサーチでユーザーと関わりたい」というご希望を記載している方をよく見るようになりました。



(4) まず着手するべきこと

当社の感覚では(3)で述べた6つのパターンのいずれかを打ち出せる企業にデザイナーが集中している印象があります。しかし、おそらく6つのパターンのどれも当てはまらない、または打ち出せない、という企業も多いのではないでしょうか。

その際何をしたらいいのか?を考えてみます。

※正直、ここからはプロダクトや企業によって打ち出せるところをみつけていく、または作っていく段階になりますので、「ベストプラクティスはこれ!」と断言できません。


1. デザイナー採用に苦戦している場合、またはこれから採用活動をしようとしている場合、まず確認してほしいことがあります。

フルコミットを求めていませんか?

インターネット業界、とりわけベンチャー界隈では、ビジネスサイドやコーポレートはまだそうでもないものの、エンジニアやデザイナーでは副業やリモートで関わりたいという志向の方が増えています。

また、UIデザイナーも、ライターなどのクリエイター寄りの志向の方も多く、どこかにフルコミットで所属するよりも色んな案件を自分の裁量で携わりたいという志向の方が一定多いです。副業やリモートを可とした場合のスカウト返信率が倍ほど違う、というケースもあります。6つの魅力パターンいずれも持ち合わせておらず、かつフルコミットを求める、という場合、採用活動が長期化するケースが多いことを心置きいただければと思います。


2. 次にやっていただきたいのは、現状の整理をし魅力を見つける作業です。

これは一部分ですがポテンシャライトがデザイナー採用のブランディングに入る際に使用している、デザイナー採用ブランディングシートです。

デザイナーの方の意見を聞きながら作成した特製シートです。

いくつチェックがつくでしょうか?

現時点で結構チェックがつく!という企業様は求人に反映するだけでも効果があるかもしれません!

(ぜひ成果をこっそり教えていただけると幸いです!)


3. プロダクトやデザインの思想を発信すること

こちらは先に述べた、noteなどでの発信のことです。

・事業への想い
・ブロダクトへの想い
・デザインへの想い

・今いるデザイナーの方の経歴、実績、想い

など。


事業運営やプロダクトにかける時間を惜しんで記事を作るのは、大変ですよね。

ただ、採用競合の企業はこういった発信を努力していたりします。さらには、長期的に考えれば採用広報観点で他職種にも活かされるコンテンツになりますので、頑張りましょう!



ポテンシャライトでは、デザイナーの採用ブランディングのための魅力の引き出しはもちろん、会社全体の採用ブランディングや採用広報も入らせていただいています。

お気軽にお問い合わせください!