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KANGE's log

映画「天気の子」

2019.07.25 13:07

職場が池袋で、この映画を見たのが新宿ピカデリー、そしてずっと雨続きだった2019年の梅雨の最後ということで、若干感想が底上げされているかと思います。

映像の緻密さ美しさ、音楽の強さは言わずもがなというところですので、それ以外で感想を。

どうしても、「君の名は。」と比較してしまいますが、構造がまったく逆なんですよね。「君の名は。」では、好きな人を救うことが、隕石から町民を救うことにつながっていたため、物語がどんどん加速していくわけですが、本作では、好きな人を救うことは、世界を雨の世界に引き戻すことになる。もう、究極の選択です。この構造は、かなり見る側をモヤモヤさせてしまいます。究極の選択を超える解決策を出さない限り、気持ちよく終われないですからね。

冒頭は、帆高が1人フェリーで東京に出てくるシーンから始まります。彼が家出をした理由が詳しくは語られていませんが、手元に「ライ麦畑でつかまえて」を持ってますから、それで十分ということでしょう。 若者が「ここには自分の居場所はない」と感じて、都会に憧れて、無計画に家出する。動機としては十分だと思います。

社会からはみ出てしまうか、受容されるか、境界線上のポジション。「ライ麦畑でつかまえて」の中の表現で言えば「崖から落ちそうになる子ども」と言えるでしょう。身分証のない若者が働けるような場所はなく、ネットカフェで寝泊り(現実世界では、身分証がなければ、それさえ出来ないと思いますが)、3日連続マクドナルドで夕食、お金がなくなって、だんだん生活が厳しくなっていくところは、とてもリアルです。

それは、母親をなくした天野姉弟も同じこと。

さらにいえば、娘に会わせてもらえない須賀さんも、就職先が見つからない夏美も、けっこう危ういロープの上を綱渡りしています。

母親をなくした少女と、地元に嫌気が差して家出してきた少年は、本来は救われるべき子どものはずなのです。でも、今の世の中は「崖から落ちる人は、落ちても仕方がない」という世界に近付いている気がします。

そうなのです。「もともと世界は狂っている」のです。そして、そんな世界のために少年の初恋が犠牲になる必要はないのです。

「生きろ。ちょっとは自分勝手に生きろ」ってことなのでしょう。

その結果、世界は、なかなか大変な状況になっています。でも、それさえも、人類の、そして地球の自然の歴史から見れば、ちょっとした誤差でしかないってことでしょう。

美しい映像と音楽で彩られていますが、現時点の世の中の常識や正しいことに対して反旗を翻す、なかなかのピカレスクロマンです。

気になったのは、陽菜が「100%の晴れ女」になった原因。

彼女が本当に望んだのは「明日、晴れてくれ」ってことではなくて、もう1つの方の願いのはず。 でも、そちらの願いはかなえられず、晴れ女のところだけ願いがかなったってことですよね。

それにしては、代償がデカ過ぎないか? 

ちょっと、意地悪すぎませんか、神様! 

(まあ、日本では神様も分業制だから、仕方がないのかな…)