Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

song of plants

その向こう側にあるもの

2019.08.12 23:58

8月も半ばになり

暦の上ではもう 

早くも立秋を迎えています


激しい通り雨のあと

夕焼けの空に

大きな二重の虹が架かるのを

2日連続で見上げた夏の始まりが

ついこのあいだのように思えます


夏の休暇に入られている方も

多いかと思いますが

厳しい暑さが続く毎日

幼い頃に過ごしたような夏の記憶

待ち遠しかった

あの煌めくような季節とは

いつのまにか

大きく変わってしまったような気がして

少し寂しくやるせない想いになります


日本だけではなく

地球上の各地が異常気象で

過ごしやすいはずの

南太平洋に浮かぶ島々ですら 

湿度の高い日が続いていると聞きました


その南太平洋の島

ハワイ島の聖地マウナケアで

今起こっていることを

日本ではほとんどと言って良いほど

情報は報道されていないので

ご存知ない方も多いかと思います


晴天率も高く高所にある

マウナケア山頂には

世界各国の天体望遠鏡が建設され

日々天文観測が行われています


日本の誇る天体観測望遠鏡・すばるは

口径8.2mという想像もつかないほどの

大型望遠鏡で

日本の高度で緻密な最先端技術を結集し

1999年のファーストライトから

これまでにも多数の惑星や新しい星を発見し 

世界の天文科学に大きく貢献してきました


そのマウナケア山頂に

すばるをはるかに超える口径30mもの

『TMT』と呼ばれる

あらたなる巨大望遠鏡の建設予定を巡って

2014年から抗議行動が起こり

2019年6月20日にハワイ国土天然資源省が

建設着工を許可したため

現在 地元住民の人々との激しい対立抗争が

続いています


TMT建設の現状についてはもちろん

その建設予算 約1,8兆円のうち

約25%を我が国が出資することになっている現実を

知る方はさらに少ないのではないかと思います


TMT建設に関してはあらゆる意見があり 

様々な立場から言及されているので

一概にこの場所で言葉を発することは

差し控えたいと思いますが


天文観測という最先端科学技術の世界と

マウナケアというハワイの人々にとって

古くから聖地と呼ばれてきた

神々の住む土地を守りたいという

頑なな想いがぶつかり合うのは

極めて当然のことかもしれません


TMTの問題だけでなく

テクノロジーと自然の世界の

共存を巡っての対立争いは後を絶たず

人の尊い命まで奪い脅かすような出来事が

起こるたび考えさせられることは

いつも同じであるように感じます


日本においては唯一の被爆国としての立場

そして言うまでもなく

福島の原発事故の大災害


あらたに私たちが得ようとするもの

それが本当に必要なものなのか

純粋に惑星や宇宙

月や星たちを巡る天文科学の研究のためであり

私たちの暮らしに

必要不可欠な技術貢献や投資であるのか


たとえば何かを所持することで

それが国としての何らかの

力を誇示するためのものであったりはしないのか


そういったことを私たち一人一人が

自分自身に問う必要はあるのではないかと

思います



ふと目覚めた朝 

窓の外に薄紫の美しい朝焼けが広がっていたり

夕暮れの風に言葉にならない

懐かしさを覚えたり


何気なく穏やかに過ごした夜が満月だったり

雨上がりの空に

気配を感じて見上げると

大きな七色の虹が架かっていたり


ほんの数年前までは

そんな偶然の幸福が日々の当たり前に

そこにあったように感じます


古来の人々はきっと

そういった目の前にある

自然の風景や現象に

未来への希望の兆しを感じたり

時には生きる道しるべとして

かけがえのないものとして

生きていたのだと思います


時代が変わりテクノロジーが進むにつれ

何かを得ると同時に

そういったものを感じる力は忘れ去られ

私たちから薄れていくように感じます


夏の始まりに

消えてしまうまで見上げた

大きな虹のように

美しい自然が少しでも長く

この星から消え去ることのないように

願うばかりです


大きな台風が日本列島に近づきつつあります

どうか被害のないように


そして遠く離れたハレアカラにも

心から平和への祈りを捧げたいと

思います