ドリームマップ
南山大学は,平成18年度岡崎市教育委員会から「人間力向上のための学校教育の具体的方策」という課題で,3年間の研究委嘱を受けました。研究紀要より
自立力部会 〈1年生実践〉
夢を抱く
∼ドリームマップの制作 夢をふくらませる創造力の伸長をめざして∼
1)単元概要
生徒は,なりたい自分について話をすることはできる。しかし,夢が実現した
時の自分の姿や社会を語ることのできる生徒はほとんどいない。生徒が夢をふく
らませるだけの人生経験が浅く乏しい現実がある。
本単元は「夢を現実的なものにしたい」と真剣に考え,そこに自己の努力を傾け
ていこうとする前向きさといった心情面の高まりをねらいとしている。そこで自
立力部会が提案する「ドリームマップ」に,マップを構成する項目に夢や希望を
思い切り語らせるための4つの要素を盛り込んだ。
マップ制作の前段階として「サクセス未来予想図」を制作する。成功した自分
の姿と自分をとりまく人とのかかわりについて考えさせることで,描いた夢を深
め,広げさせることをねらいとしている。
1年生での実践では,単元内で2つの制作物を作成する。段階を追って夢をふ
くらませ,成功に満ちた将来像をリアルに想像させることで,「なりたい自分」を
明確にさせる。ここに生まれる「希望を持って主体的に生きていこう」とする前
向きさを自立力育成の基盤と位置づけた。
「サクセス未来予想図」・「ドリームマップ」とも,完成後に発表会を行い,自
分の夢を思い切り語り,伝える場を設けた。友達の発表から受ける学びの刺激,
さらに認め合い,励まし合う共有の経験から,相互的な自立力の向上を目指した。
ドリームマップ制作 学習計画〔11時間完了〕
◇「僕・わたしの好きなもの」………1時間
◇「成功記者会見をしよう」…………1時間
◇「未来予想図をつくろう」…………3時間
◇「サクセスストーリー発表会」……1時間
◇「ドリームマップを制作しよう」…4時間
◇「ドリームマップ発表会」…………1時間
2)継続観察生徒 授業での変容
【本時のねらい】
①制作した「サクセス未来予想図」をもとに,夢がかなった将来の自分の姿を語る。
②希望に満ちた未来社会をグループで考え,共有し,自分にふりかえらせることで,主体的な生き方の重要性に気づく。
③グループでの発表や考えを重ね合わせ,わかちあう活動を通し,人とのかかわりや社会が夢を支える大きな要因であることに気づく。
自分の夢を深める
友達の夢や生き方を聞き,自分と比較したり思いをつけ加えたりして夢を具体化することで,抱く夢を膨らませることができた。また,個の考えを持ち寄りグループで理想の社会を考えることで,仕事を通じて社会とつながる価値を感じ,自己の存在価値と社会貢献について意識できるようになった。さらに夢と理想の実現に向けて主体的かつ前向きな考えが生まれ,自立力を高め,育成する効果が確認できた。
3)継続観察生徒 単元での変容
S 男の社会に対する思い「平和」。この思いがグループで認められ,理想社会のキーワードに盛り込まれた。それからはものづくりが苦手な S 男が,一心にドリームマップの制作に取り組み,完成した作品にも大きく「平和」の文字が記されていた。発表会では,発表原稿を何度も繰り返し練習して準備をし,堂々と自分の夢を語ることができた。また,発表を聞く立場では,自分が認められた経験を生かし,友達の夢の実現を願い,友達の意見をしっかり受け入れ,理解しようとする真剣な視線が感じられた。
<S男の単元終了後の感想>
今日のドリームマップの発表はすごくうまくできた。言いたいことはしっかり言えたし,質問にもすぐに答えることができた。こんなにできたのは,自分でもびっくりだ。発表の練習をしてきて本当によかった。これからはだれにも負けないくらい部活で頑張って練習して,うまくなって,夢をかなえたい。