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ディベート

2019.07.27 11:05

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/edu/kyouzai/handbook/html/h20103_3.html より

1.ねらい

日本社会では、討論や議論をする場合、自分の考えを論理的に述べたり、相手の考えを冷静に受けとめ、しかるべき理由でもって同意をしたり反論したりすることに慣れていないようです。しかし、21世紀の国際社会にあっては、多様な考えや価値観をもった人々とコミュニケーションをはかっていかねばなりません。

その意味ではディベートは、教室の中の身近な問題や、社会や世界の現代的課題について、ゲーム性をもった討論を体験することで、論理的・分析的な考え方を身につけ、コミュニケーションの力を高めていくことに役立ちます。

2.準備

討論のテーマにかかわる資料については、生徒の調べ活動(インターネット検索・新聞・書物・インタビュー・アンケートなど)によりますが、あらかじめ「資料パック」として用意しておくこともできます。

3.進め方

3.1. はじめに

ディベートの様子

肯定側・否定側・審判の三つのグループに分かれる。3人1組でミニ・ディベートも可能。役割は順番に交代してもよいでしょう。

3.2. ディベートの構成

立論(定義、プラン、メリット、デメリット)

質疑(立論の構造、証拠資料)

反駁(攻め、守り、総括)

判定・審判(優劣判断、インパクト、比較)

3.3. 進行フォーマット

進行フォーマットの流れ。肯定側立論(2分)→否定側質疑(2分)→否定側立論(2分)→肯定側質疑(2分)→準備時間(3~5分)→否定側反駁(2分)→肯定側反駁(2分)→検討時間(2分)→講評・判定(2分)

テーマによって立論や検討に時間をかけたり、反駁を2回行う場合もあります。

3.4. 立論の例

「少子化時代の労働力不足を解消するために、日本は期間と人数を限定して外国人労働者を受け入れるべきです」

この立論における外国人労働者の定義:日本社会において未熟練労働およびIT関連労働に従事するアジア系および日系の外国人。

●肯定側立論の例

主張

少子化のために労働力が不足し、21世紀の日本社会に不可欠なIT関連労働および日本人が就労したがらない未熟練労働の分野に外国人が必要である。

メリット

外国人労働者は現在一定の労働分野において日本社会に貢献している。「不法」就労を覚悟で働いている外国人も多い。提案は、このような現実を法的に解消するものである。

日本がアジアをはじめ世界との貿易や企業の海外進出で得た利益の還元になり、アジアの人材育成にもなる。

日本人労働力を社会の高度化、国際化に集中することができ、かつ日本社会の国際化を推進することができる。

プラン

入管難民認定法を改正し、受け入れ期間を5年間とし、資格外活動や超過残留などの違法就労については、受け入れ企業・事業者の責任を明確にする。

●否定側立論の例

主張

労働力の不足を、外国人労働者によって補うという考えは、女性および高齢者の社会進出の可能性を奪うものである。

デメリット

期間を限定して受け入れても、超過滞在が増えてしまうことは、ドイツなどヨーロッパの例を見ても明らかであり、治安の悪化も懸念される。教育、医療、保険などの社会的コストも増大する。

出稼ぎの外国人の人たちの仕送りは、現地の経済開発に結びつかず、ほとんどが電化製品や自宅新改築など消費に回ってしまう。貴重な農業労働力や看護婦など、本来その国や地域が必要とする人材が流出してしまう。

外国人が日本社会の未熟練労働に集中しすぎると、それにより生じる社会的偏見が正しい国際理解を阻害する要因となりうる。日本の国際貢献は、技術協力や青年海外協力隊などの支援、NGOなどボランティア活動によって実現していくべきである。

4.ふりかえり

ディベートが終わったあとでの感想、反省、本音、多様な考えを出し合いましょう。

例えば、

21世紀の地球規模の大きな人口移動の枠組みの中で、日本社会も外国人労働者や移民を受け入れざるを得ないという立場、さらにはすでに定住ないしは在住している外国人の権利保護の立場などから、社会的コストの負担に関する本格的な議論を進めることが重要であるという考え方。

労働力人口の減少と経済成長の視点だけではなく、永住権や国籍、文化的多様性、女性の社会進出など日本社会のあり方を考えていく姿勢が重要である。

5.時間

ディベート活動自体は、ふりかえりも含めて50分(1コマ)で可能ですが、テーマについて調べたり、グループで協力して立論を組み立てたり、反論を予想したりするためには、4、5時間をかけてもよいでしょう。

6.身につく力

競争と協力を通して、相手のいうことを注意深く聞く力、資料を収集し分析する力、問題に対する判断力、論理的な構成力、表現力などが身につきます。

開発教育で取り上げる立論のテーマには、「開発途上国の累積債務は帳消しにすべきである」「外国からの食料品の輸入を制限すべきである」「ODAの援助内容を人道的、基本的人間ニーズ(BHN)中心にすべきである」などが考えられます。