ブレーンストーミング、簡易KJ
http://www.ritsumei.ac.jp/~yamai/kj.htm より
ブレーンストーミングは、新たなアイディアを生み出すための方法の一つ。KJ法は、ブレーンストーミングなどによって得られた発想を整序し、問題解決に結びつけていくための方法です。KJ法という呼び名は、これを考案した文化人類学者、川喜田二郎氏のアルファベット頭文字からとられています。以下の説明は、主として氏の著作(『発想法』中公新書、1967年;『続・発想法』中公新書、1970年)によっています。
ブレーンストーミング(BS)
グループのメンバーが、ある問題について自由にアイディアを出し合うのがブレーンストーミングですが、いくつかの基本原則があります。
BSの4原則
「批判をするな」:他人の意見を批判してはいけない。批判があると良いアイディアが出にくくなる。
「自由奔放」:こんなことを言ったら笑われはしないか、などと考えず、思いついた考えをどんどん言う。「上品は」ジョーク歓迎。
「質より量」:できるだけ多くのアイディアを出せ。
「連想と結合」:他人の意見を聞いてそれに触発され、連想を働かせ、あるいは他人の意見に自分のアイディアを加えて新しい意見として述べるというのが一つやり方。
以上が基本ルール。その上で、BSの具体的やり方として<順番BS>と<質疑応答BS>について説明しておきます。
<順番BS>の方法
自由に意見を出し合うといっても、なかなか意見が出にくいことがしばしばです。これを回避するため、自分の順番がまわってきたら否応なく何か発言せざるをえない、というのが<順番BS>です。ルールは以下の通り。
発言の順番がまわってきたら必ず何か言わなければいかない。「とくにありません」、「前の人がいったのと同じなのでありません」は御法度。
発言内容は一度にいくつあってもよい。ただし、他の参加者が言った意見をくりかえすのは×。
自分の前にメモ用紙を置き、他者の発言を聞きながら思いついたことをメモしておくとよい。順番がまわってきたら、このメモを参考にしながら簡潔な発言を心がける。
発言は最低3巡はする。
グループ内で司会と記録係各1名を選ぶ。記録係は、参加者の発言内容をカードに記載する。簡潔かつ内容を正確に表現する「1行見出し」(実際には2・3行になってもよい)を作成するよう心がける。カード右下に、発言者の名前と発言の日付をメモしておく。司会は、記載内容が正しいかどうか発言者に確認するなどして、記録係に協力する。
*「1行見出し」の書き方
あまり長すぎぬよう(20~30字以内)
できるだけソフトで、かつ本質をしっかり捉えた表現にする。
「1行見出し」の例
もとの発言
今の大学生は勉強しないというが、実際のところ生活のためにアルバイトは必要だし、それにサークル活動もある。アルバイトやサークル活動の方が、大学で授業に出ているよりずっと充実感があるし、将来の役にも立つと思う。大学の講義なんて退屈なだけだし、勉強してそれが将来役に立つかどうか分からない。就職活動の面接でも、勉強より人物評価だっていうじゃないか。
<悪い「1行見出し」の例>
大学生の勉強不足と生活スタイルとの関連←抽象的・概念的すぎて発言内容を想像しにくい。
大学生が勉強しないのは、アルバイトやサークルで忙しく、それに大学の講義が役に立ちそうになく就職活動でも重視されないから←異質なものを盛り込みすぎ、その結果長くなりすぎている。
<良い「1行見出し」の例>
アルバイトやサークルで学生は忙しい
大学の講義は退屈だ
大学の講義は役立たない
大学での勉強は就職活動で重視されない
<質疑応答BS>の方法
順番BSで出た意見をもとに、もっと多くのアイディアを出すために行うのが<質疑応答BS>です。順番BSで出た意見ひとつひとつについて「この意見について何か疑問の点はありませんか」と参加者に聞いていきます。より具体的には、以下のようなことをめざします。
すでに出た意見の意味をはっきりさせる。
もとの発言者が、なぜそのようなことを言ったのか、など発言の背景を明らかにする。
こうした質疑応答・対話のなかで新しい意見・アイディアを生み出す。
批判ではなく、討論素材をさらに加えることが目的。反対意見があったら、それも意見としてカード化する。
以上のような「質疑応答」のなかで、アイディアを記載したカードをさらに増やしていきます。
KJ法
BS等でカード化された多くの意見・アイディアをグループ化し、論理的に整序して問題解決の道筋を明らかにしていくための手法がKJ法です。
以下、ゼミでのグループ研究のテーマを確定していくための手続という想定で、その段取りを説明します。
第1ステップ:まず、BS等の手法で作られたたくさんのカードをばらばらに広げてみます。
第2ステップ:カードに記載された「1行見出し」を眺めながら、関連性のあるカードを重ねていきます。最後に、それぞれのグループの内容を簡潔に表す見出し=「表札」をつけて上に載せます。その上で、それぞれのグループのカードを輪ゴムで束ねます。
*第2ステップの作業では、以下の点に注意して下さい。
1グループのカードは最初は数枚程度。はじめから大きくまとめようとしない。
1枚のまま残る「一匹オオカミ」があってもかまわない。無理に他のグループと一緒にしない。
第3ステップ:第2ステップで作った小グループの「表札」を眺めながら、互いに親近性のあるグループを中グループにまとめます。この作業を何度かくりかえし、10近くの大グループにまとまったらグループ化作業は終了です。
大グループにも表札をつけますが、グループ分けがすべて終わってからというのでなく、カード全体の3分の2程度がまとまってきたところで、グループ分け作業と並行して表札作りを進めて下さい。
第4ステップ:ここからいよいよ論理的整序の段階に入ります。グループ間に論理的な関連性ができるよう大グループのカードの束を並べ替えます。「空間配置」と呼びます。配置の意味する内容を、ストーリーのようにつないでしゃべれるようにする、というのがコツです。
第5ステップ:空間配置ができたら、カード束の間隔を広げ、それぞれ1段下の段階までほぐしてみます。その上で、もとのグループの範囲内で、ただし隣接する大グループ(およびその1段下の束)との親近性に注意しながら中グループレベルの空間は一を行います。これでカードの作業は終了です。
第6ステップ:カードで作った空間配置を別の紙に写し取るのが次のステップです。その際、上の図のように、グループ間の関連の内容を示す記号を使って、空間配置の論理連絡が分かるようにします。たとえば次のような記号を使います。
――:関係あり
→:原因・結果
←→:互いに因果的
>――<:互いに反対・対立
第7ステップ:いよいよ最後のステップです。図を見ながら、すべてのグループのうちどれが重要と思うか、各自最高5点から1点の順で点数をつけます(6番目以降は点数をつけない)。総得点が最も高い5つのグループをゼミでのグループ研究のテーマとします。研究にあたっては、KJ法によってえられた中テーマ等が主要な研究項目となるでしょうし、また図解の「因果連関」も重要な指針を与えてくれるでしょう。