ヨーロッパの夏空の下4 「モンセラート修道院」
バルセロナ観光の目玉と言えばガウディ。「サグラダ・ファミリア」、「カサ・ミラ」、「カサ・バトリョ」、「グエル公園」など。「サグラダ・ファミリア」、「グエル公園」は2年前に訪れ、今回はバルセロナに到着した日に「カサ・バトリョ」へ。自然を創造の源泉としたガウディの作品(建築物)は確かに面白いとは思うが、長く自分の中に影響を及ぼし続けるような刺激は感じない。それより、ガウディがインスピレーションを得るために度々訪れたというバルセロナ郊外にあるモンセラート山を是非見たくて現地ツアーで訪れた。「モンセラート」とは「ノコギリ山」という意味で、バルセロナを出発して30分もすると遠目からもミステリアスな表情の岩々が目に飛び込んでくる。この山にはサンディアゴ・デ・コンポステーラと並ぶキリスト教の二大聖地とされてきたベネディクト会修道院(サンタ・マリア・デ・モンセラート)がある。なぜこんな場所に、と思うような峻険な岩山にその修道院はある。由来はこうだ。880年、羊飼いの子供たちがある日モンセラートの岩山に光を見つける。近づいていくと、洞の中に黒い聖母子像があった。知らせを受けた司教はこの聖母子像を運び出そうとしたが、重くて運べない。司教は、聖母子像がこの地に留まることを望んでいらっしゃると悟り、この地に修道院を建てた。細かいいきさつはそれほど単純ではないのだろうが、私が関心があるのはこういう由来の聖母子像を安置するためにこのような場所に修道院が建てられ、人々の信仰を集め、今もバルセロナ市民の守護聖人になっているという事実。人間は、真実も求めるが、それ以上に物語に惹かれる存在であるように感じる。イタリア語では、「歴史」も「物語」も「storia」。創り出された「物語」が人々を突き動かし、その動きによって「歴史」が作られる。世界最大のベストセラーと言えば「聖書」。聖書やそれをテーマにした絵画に強く惹かれるのも、そこには人間のドラマ、物語が豊かに描かれているから。
(モンセラート修道院 黒い聖母子像)
(モンセラート修道院)
(モンセラート修道院)
(モンセラート修道院)