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短所を長所に変えよう

2019.07.28 02:59

ノミ 「すばらしいことが  あるもんだ   ノミが   ノミだったとは   ゾウではなかったとは」  まど・みちお

ワーク 1

(1)詩を読んで感じたことを書きましょう。 

(2)作者のいう「すばらしいこと」とはどのようなことでしょうか。 

(3)(1)、(2)についてグルーブでの意見交換を通して、気づいたことや考えたことを書 きましょう。 

(4)作者が「ノミがノミだった」ことを「すばらしいこと」といっているように、あなた は「自分が自分だった」ことを「すばらしいこと」と思えますか。 (  )はい  (  )どちらともいえない・よく分からない  (  )いいえ

ワーク 2

(1)「自分が自分だった」こと=「自分らしさ」を表す言葉を、長所・短所問わず書き出 してみましょう

(2)(1)で挙げた言葉を参考にして、自分が短所だと思っていることを3つ、次の表の 短所①~③に記入しましょう。 

(3)グループ内で(2)の表を回覧して、他の人の短所を逆転の発想で長所にしましょ う(文章になっても構いません)。また、励ましのメッセージも考えてみましょう。 

(4)他の人に考えてもらった長所を見て感じたことを書きましょう。 

(5)短所を長所にとらえ直すという作業を通して感じたことを書きましょう。 

もう一度詩を読んで、感じたことを書きましょう。 

ねらい

人権教育の基本として大切なことは、自他の人権を認め尊重することである。つまり、 自分自身の人権を尊重するとともに、他者の人権を尊重することである。 他者の人権を尊重するためには、他者を認め受け入れることが必要となる。そして他 者を認め受け入れるためには、自分自身を受け入れ認めることが大切である。人は自己 受容することではじめて他者を受容できるようになれる。 

このワークでは自己受容の方法として、「自分らしさ」とは何かを考え、長所・短所を含めた「自分らしさ」に目を向ける。しかし短所は自分では気づかなかったり、素直に受け入 れられなかったりすることも多い。

そこで他者に自分の短所を長所に捉え直してもらう作業(リフレーミング)を行い、他者に認めてもらったり、ほめてもらったりすることで自己肯定感を高め、改めて「自分らしさ」と向き合い、自己を認める意識を育てたい。 

解説

(1)自己受容 

自分を受け入れること、自分を肯定的に捉えることを自己受容という。

このワークで は、自分を無理に受け入れるということではなく、むしろ現在の自分を見つめて、自分 はこういう人間だということを認識することの大切さについて考えさせたい。

自分とい う人間への認識を高めることによって、他者に対する認識も深め、一方的な思い込みや 偏見をなくし、他者受容への大きな一歩とすることをねらいとしている。 

(2)詩「ノミ」について

 詩人まど・みちおの作品には「生きものがその生きものであることを喜んでる」という 詩が多く、この視点は自己受容に欠かせないものであると考える。「ノミ」という詩につ いて、まど・みちおは次のように語っている。 

【自然がやってくださることはものすごく大きいことだという事実を、非常に短い 言葉で簡単に言っとるだけなんだけれど、その事実が私には限りなく魅力的に見え る。

あの世行きが近くなってからは、なおさらに。 この世の中には生きものがごまんといますが、みんなそれぞれに違っている。もし 同じだったらつまらないし、なんの進歩も発展もないでしょう?違うから、素晴らし いんですよね。人間だってそうで、肌の色や髪の色が違うから、いい。同じ日本人で も十人十色、百人百色で、一人ひとり顔や考え方が違ってるに決まってるし、だから こそ価値がある。

お互いに補い合い、助け合うこともできる。それなのに今はみんな、 人マネごっこばっかりやっとる。人と自分を比べては一喜一憂したりもする。それは 本当に滑稽で悲しい、そして何より、もったいないことだと思います。 (中略)人と自分を比べて自分のほうが偉いように思ったり、逆にダメなように感 じて人をうらやんだり、人のマネをしたりするのは、一生懸命でない証拠なんじゃな いかなぁ。小さな子どもは遊ぶとき、それに没頭して無心で遊びます。あんなふうに、 自分の目の前のことに一生懸命取り組んでおれば、つまらんこと考えとる暇はない と思うんです。一生懸命になるっちゅうことは、自分が自分になること。一生懸命に なれば、一人ひとりの違いが際だつ。いのちの個性が輝き始める……。自分が自分で あること、自分として生かされていることを、もっともっと喜んでほしい。それは、 何にもまして素晴らしいことなんですから。 】

作者のいう「自分が自分であることを喜ぶ」という考え方に気づくためにこの詩を鑑賞さ せる。

詩の内容に共感できない、自分が自分であることを喜べない生徒もいるかもしれな いが、そういう「自分」も含めて、この詩をきっかけに「自分」という人間を振り返ること を目的としている。 

(3)短所を長所に捉え直す(グループワーク) 

「自分らしさ」を表す言葉には短所が含まれることがあり、それらはなかなか自分では 受け入れにくいものもある。このワークでは、短所を他者に紹介することで一度自分を 客観的に見てみる。

そしてグループワークを通して他者も同じように短所だと思っている部分があるということを気づくきっかけとする。

さらに「自分らしさ」を受け入れるために短所を長所に捉え直す作業をする。

自分の短所を自分で捉え直すのではなく、他の人に捉え直してもらい、励ましのメッセージとともに「他者に認められる」ことは、自己肯定感を高める経験となる。

また、他者の短所を長所に捉え直すことは、多角的に「他者を理解する」という経験になる。これらの活動を通して、自分を認めるとともに他者を認 めるという人権の尊重の大切さを感じるように促したい。