美しさのまとい方 睡眠障害
【睡眠障害とは】
睡眠障害は男性より女性に多く、女性の健康を考える上で非常に重要である。
規則的な月経周期を有する女性では、視床下部-下垂体-卵巣系のホルモンの変動が睡眠覚醒リズムに影響を与えている。よって、ホルモンの変動が大きい時期、すなわち、月経前睡眠障害、妊娠・産褥期、更年期に睡眠障害が起きやすくなり、女性のライフステージと深く関わっている。また、成熟期以降の女性で割合が高くなる家庭の主婦は、家族の誰よりも早く起き、就寝は一番遅いというパターンにならざるを得ないという社会的背景も影響していると考えられる。
【不眠のタイプ】
♦生活習慣や病棟の睡眠環境に問題・・・環境因による不眠
♦身体疾患による睡眠妨害(疼痛、瘙痒)・・・身体因による不眠
♦睡眠を障害しうる薬剤を服用・・・薬剤性不眠
♦頻回の中途覚醒、過眠、睡眠中の窒息感・・・睡眠時無呼吸症候群
♦入眠障害、就寝時下肢の異常感覚・・・レストレスレッグス症候群
♦入眠障害さらに中途覚醒、睡眠時の下肢不随意運動の自覚、睡眠中の体動の増加・・・周期性四肢運動障害
♦著しい入眠障害と起床困難・・・概日リズム睡眠障害
♦中途覚醒、早期覚醒、抑うつ感、興味喪失・・・うつ病
♦早期覚醒、夕方からの眠気・・・概日リズム睡眠障害(高齢者の早朝覚醒)
♦中途覚醒・・・中途覚醒型不眠症
♦入眠障害のみ・・・入眠障害型不眠症
【ライフステージ別の特異的な睡眠障害】
月経前睡眠障害(早春期~更年期以前)
月経周期では、プロゲステロンの体温上昇作用により、黄体期に基礎体温が高くなるが、これに伴って昼夜の最低体温と最高体温の差が小さくなり、夜間睡眠が浅くなったり、日中眠くなったりすると考えられる。また、プロゲステロン自体に催眠作用がある。よって、月経前の睡眠障害は月経前症候群の一部と考えられる。不眠よりも過眠が多くみられる。
妊娠中睡眠障害(成熟期)
原因として、妊娠中に大きく変化する身体的要因、内分泌環境の変化があげらえる。妊娠前期における過眠は、月経前睡眠障害と同様にプロゲステロンの睡眠作用、深部体温上昇作用が関連していると考えられる。妊娠後期にみられる夜間の中途覚醒増加は子宮の増大、収縮や胎動による違和感、頻尿、腰背中痛などの要因による。また夜間睡眠不足のために日中の昼寝も多くみられるようになる。
産褥期の睡眠障害
出産後は急激な内分泌環境の変化が起こるだけでなく、心理的には母親としての役割や育児中心の生活という大きなストレスにさらされる。妊娠中に増加したホルモンが出産後急速に低下し、また授乳や夜泣きにより小刻みな睡眠・覚醒リズムを強制される。夜間睡眠が分断され、日中の眠気の増加、疲労感がみられる。
更年期の睡眠障害
女性は通常40歳を過ぎた頃から卵巣機能が低下し始め、50歳前後で閉経に至る。卵巣からのエストロゲン分泌が急激に減少するため、閉経の1~2年前から閉経後数年の間、さまざまな不定愁訴として更年期症候群が出現する。また、更年期には子供の独立、夫の定年、身体の衰えに対する不安など、多くの喪失体験やストレスに直面しやすく、心理社会的要因が更年期症状の増悪に関係していると考えられる。更年期女性の約50%が不眠との報告がある。
次回に続きあります。